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クリスマスイブの夜は更けていく。

大人たちはアルコールもまわり、いい具合に陽気に酔っている。

「ふぁ~。」

鷹野は大きなあくびをした。

それを見た細胞バカの山田が言った。

「鷹野、そろそろ終宴にしようや。」

ん~と言いながら、鷹野はテーブル席から立ち上がると、足元がフラフラとしていた。

顔には出ないけど、結構酔っているかもしれない。

「タクシーをお呼びしましょうか?」

マスターが声を掛けた。

「いや、いいよ。バス通りまで出たらすぐにつかまるし。それより、岡崎君と小林君は電車だったよね。方面は北行きだっけ?」

「それでしたら、今、店を出て、歩いて駅まで行かれると、北行は丁度いい時刻がありますね。」

マスターが、壁に貼ってある時刻表を見ながら言う。

「んじゃぁ、僕らはそれで帰ります。」

「御馳走様でした!ありがとうございました!」

「佐渡さん!また、メガトロンを語りましょう!」

小林は、マッチョ佐渡と握手を交わしていた。

「うん!また機会があったら会おうな!」

「では、皆さん、失礼します。」

はいはいとか、おうおうとか言われながら、二人は皆に手を振られバーを後にした。

「じゃぁ、僕もこれで。」

「えぇ?鷹野も帰るの?」

竪山は、まだ飲み足りないようだ。

「うん。雪宮君と同じ方向なんで。」

「あぁ、途中まで送っていくのね。」

フラフラ歩く鷹野の方が、若干危なっかしい。

「そういうこと。帰るぞ。雪宮君。」

「あ。はい。」

海斗は呼ばれ、席を立つ。

「海斗、また会おうな。」

川口が言う。

「楽しかったわ。」

竪山も名残惜しそうだ。

「お二人とも、また、会いましょう。」

海斗は、にっこりと微笑んだ。

「では、皆さん、ありがとうございました。」

お辞儀をすると店を出た。


店を出るとぼんやりと鷹野が空を見上げていた。

「ちょっと、寒いなぁ。・・・今夜。ほんとに、降るかもねぇ。」

「そうですね。」

ちょっとどころじゃなく、かなり寒い。

二人は並んで歩いていた。

「大丈夫ですか?」

「何が?」

「足。ふらついてます。」

「あ~~~。」

大きなため息を吐きながら、鷹野は前方を指差した。

「じゃ、あそこで、少しだけ・・・酔い覚ます」

「あそこって。もう、誰もいないし、中に入れないんじゃないです?」

鷹野が指したのは、博物館だ。

「ダイジョブ。守衛さん・・・いる。」

ふぁ~とあくびをしながら言う。

“夜の博物館かぁ。”

ちょっと行ってみたい気もする。

ダメでもともとと行ってみると、入口には守衛がいた。彼と鷹野は面識があるので、

「ごめん。大事なレポート忘れ物てた~~。」

と言い館内に通して貰った。

館内は、まだ温もりが冷めておらず外より暖かい。

シーンと静まり返り昼間の喧騒が嘘のようだ。

音もなく光るクリスマスツリーは、世界を幻想的なものに変えていた。

下からのライトで照らされた恐竜たちの骨の標本の影が、壁や天井に映し出され今にも歩きだしそうだ。

 海斗は、こっちこっちと手招きされ2階の憩いスペースに連れてこられた。

全面ガラス張りでここからは博物館の庭が見える。

庭が見えるソファへと招かれ座った。

「わぁ・・・!!!」

思わず、感嘆のため息が出る。

昼間は芝とソテツとサンタや天使の飾りしか見えない。

だが今は、芝に埋め込まれた無数の灯りが星のように煌き、サンタや天使はネオンが付いてかわいく輝いている。

「いいでしょ~・・・」

ふぁぁとまたもあくびをしながら言う鷹野は、優しげな顔でソファに身を委ねている。

「・・・。これ、見せる為に、ここに連れてきたんですか?」

「ふぅぅ・・・。どう・・かなぁ~。君が、元気ないから・・・。」

「元気なら、ありますよ。」

「ふぅ~ん」

「・・・。さっきの。」

「うん?」

「さっきの、一度や二度失恋したくらいでってやつ。」

「うん?」

「酷くないです?」

「なんで?」

「一度でも本気の恋なら、それがすべてなんじゃないでしょうか?

・・・代替えの恋なんて、効かないし・・・いらない。」

「ふぅ~ん。」

そう言いながら、鷹野は海斗をぼんやりと見つめている。伝わっているのだろうか?

“ふぅ~んって、この酔っ払いめ!”

「じゃぁさ。その代替えも効かない恋って、どんなの?」

「えっ?」

「ふぁぁ。夜語りに、何があったか、聞かせてよ。ーーー・・・。」

トロンとした顔で言う。

どうせ、酔ってるし、きっとこんな話、聞いても覚えてないよな・・・。

鷹野を見ると目を閉じていた。寝たのかな?

鷹野の整った顔は、今は光の加減で美しくさえ見える。

海斗は横顔をじっと見ながら言った。

「“人が人の事を愛するっていうのは”、鷹野さん、男同士・・・も含まれるんですかね?」

鷹野の目は閉じられたままだ。

ふぅと溜息をつくと、海斗は庭へ視線を戻した。

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