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最初こそ、バイトメンバーは緊張していたがすぐに打ち解け、色んな話で盛り上がっている。
海斗と川口と竪山は、化石のでき方について話をしている。
「普通に死んだんじゃ、化石にはならないの。風化して骨も残んないんじゃない?だからね、自然災害とか、流れてきた累積物とか、沼地にハマってズブズブとかで埋められて、さらにプレスがかかって、そして長い年月をかけて化石になんのよ。」
「うんうん、まぁ、生きてる個体からしたら、自然災害とかに巻き込まれちゃった悲劇なんだけどね。」
「そうねぇ、卵から孵ったばかりの化石とか、卵を温めてる化石とか出てくると、なんか切ないわよねぇ。あ。ちなみに卵を温めるのは、恐竜が鳥に進化したって事らしいわよ。」
「へぇ・・・。」
海斗は、話についていくのに精一杯だ。
周りを見ると、マッチョ佐渡と小林は新生代の巨大なサメ“メガトロン”の話で盛り上がっていた。
“あっちも面白そうだな”
海斗はフッと笑った。思ったより楽しいクリスマスイブだ。
鷹野は、カウンター席を離れ、細胞バカと言われた山田と何やら話をしていた。
お団子頭の主婦の嶋田と岡崎は、どうやら恋の話のようだ。
「今、好きな人がいるんですけど」
「うんうん」
嶋田は身を乗り出して聞いている。
「告白しようかどうか迷ってまして。」
「しちゃったら?」
「いや、でも、相手には彼氏がいてですね。」
「ほー。」
「それでも、しちゃった方がいいですかねぇ。」
「んー・・・。」
主婦の嶋田は悩んでいるようだ。悩んだ末に、
「ここは、恋愛経験豊富な景に聞いてみよう!景、あんたに相談。」
そう言って、鷹野の方を向いた。
“恋愛経験豊富?”
海斗の耳に届いて、思わず振り返ってしまった。
「誤解、誤解。そんなに豊富じゃないって。」
鷹野は、今度はウィスキーを飲みながら手を振った。意外とお酒に強いのか、酔った様子はない。
「分かったわ。豊富じゃないって事にして、その何度かした恋愛経験で答えてあげなよ。」
鷹野は、えーっという顔をしたが、岡崎の顔を見ると真剣に考え始めた。
海斗は、なんだかその顔に惹かれてじっと彼の方を見つめた。
「相手の事を、慮る。」
「ほう。成程。」
竪山は納得し、佐渡は肩をすくめた。
「え?おもんばかる?」
岡崎が聞き返す。
「そう。慮る。まぁ、これは、僕の婆ちゃんの口癖なんだけども。」
そう言って鷹野はフフと笑った。
「相手の事を好きなら、相手にとってどうする事が一番いいのか、考えることかな。
付き合ってる彼氏がいいやつなら、お前さんの恋は諦めな。
女にどーしょうもないヤツで、いつも怒らせたり泣かせたりしてるのなら、告白もありかもな。
まぁ、でも若いうちはどうしたって、自分の気持ちを一方的に押し付けがちだ。
溢れる恋心に勢いを付けて、突っ走って・・・。
それが、いいのか・・・悪いのか。
傷ついて、初めてその辛さを知る・・・。みたいな?
う~ん。結局は岡崎君がよく考えて行動して欲しいと思ってるんだが。」
「そう・・・ですよね。」
岡崎は、少し考えてから言った。
「俺は、自分の気持ちばかりを考えてました。好きだ、好きだ、好きだって。胸が苦しくなって、少しでも振り向いて欲しくて。告白して振られてもいいから、スッキリしたいと思ってました。
でも・・・スッキリなんて、嘘かな。本当はあいつから彼女を奪いたかったのかもしれないです。」
「あぁ!少年!これから先も、恋するチャンスはあるって!」
嶋田が、岡崎の背中を撫でて慰めていた。
鷹野は、天井を見上げ、遠い目をして言った。
「そうそう。失恋を一度や二度したくらいで、“恋愛”を分かった気でいちゃ困る。
・・・。人が人の事を愛するっていうのは、その度に色んな意味がある。そう思うんだ。」
そう言って、鷹野はゆっくりと海斗の方へ顔を向けた。




