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誰でもいいって訳じゃない。いいって訳じゃないんだ。
ただ、いつもバスで乗り合わせた時に見ていた顔が、孤高のイメージがあったから。
もしかしたら、分かる人じゃないかと思ったんだけど、
話すとどうも違ってきてて・・・。
「三国さんは帰るんだったな。」
「はぁい。今日はこれから彼氏とデートです!」
照れ笑いをしながら彼女はそう言うと、お先にぃ~と言って帰っていった。
「で、残るは小林君、岡崎君、雪宮君・・・あぁ、あと飛び入り参加で川口も来るって言ってたな。」
“あ。先輩だけ呼び捨てだ・・・。”
クリスマスイブの夕飯に誘われたと思っていたのだが、どうやら海斗だけではなかったようだ。
仲間内でするパーティが近くであるので、鷹野がバイトのメンバーを誘ったのだ。
「近所だから、歩いてくれるかい。」
“まぁ、なんというか・・・うん。そんなもんかな。”
期待していた自分を立て直す言い訳すら浮かばない。
冷気を帯びた北風がヒューと吹いた。
ーーー・・・人肌が恋しい・・・ーーー
蓮と別れて、抱き合うとかキスとかそんな事が無くなって心も体もスカスカする。
“誰かに埋めて欲しい・・・”
海斗は自分で自分の腕を抱いた。
「雪宮君?寒いのか?」
「えっ?あ。いえ・・・」
鷹野は自分がしていたマフラーを海斗の首に巻きつけた。
「今夜は雪が降るほど寒いから、それでもしてなさい。」
「ありがとう・・ござい・・ます」
「うん。」
鷹野は、にっこり笑って頷いた。
マフラーには、ほんのり暖かさが残っており、ふわっと鷹野の匂いがした。
“こんな優しさは、期待してしまうんですけど”
赤い顔を隠す様にみんなの後に付いて行った。
“Bar Hadean eon”と書かれた石が店の壁に埋め込まれていた。
「バーと言っても今日はここは貸切だから。とはいえ、お酒は飲まないでね。それから君たちは遅くとも22時には帰れるようにするから。」
鷹野は、それだけ言うと、アンティークのような木の扉を開いた。
「あとは、思う存分クリスマスを楽しんでくれ。」
そう言ってにっこり笑いながら、扉を持って皆を中に通した。
「あの、会費は?」
「はっはは!雪宮君。そんな事は気にしなくていいんだよ。普段がんばっている良い子へのご褒美だ。」
「良い子って・・・」
もう子供じゃないんだけどな。
「気分を害すな。クリスマスくらい童心へ戻れってことさ。」
そう言うと鷹野は、海斗の頭をポンポンとし、
「さぁ、寒いから中に入りな。」
と背中を押して 招き入れた。




