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~現在 冬~


 バスが桜通り3丁目のバス停に止まった。バスから降りた海斗は、寒さにブルリと震えた。

天気予報では、今夜は雪になるらしい。

「早く行って、昼飯食おうっと。」

学校の近くのコンビニで買ったおにぎり2個と惣菜パンが入った袋をぶら下げながら博物館へと歩いていく。

道沿いにサンタや、トナカイ、妖精たちが出迎えてくれる。夜は光がつく。

クリスマスの2日間は、博物館の建物もひと工夫されていて、昼間の太陽光を使った電気で装飾されると聞いている。

夜はさぞかし綺麗なイルミネーションになるだろうなぁと思った。 

 

オフィスへ行くと事務の人から紙袋を手渡された。

「今日と明日は、これでお願いね。」

中を覗くと、赤に白の服・・・

「サンタ・・・ですか?」

「そうよ。クリスマス気分になるでしょ。」

そう言って事務の女性は笑った。

「私も着たかったんだけどねぇ。内勤には無いって言われちゃって。」

「は・は・ははは・・・」

“内勤には無い?”

「じゃぁ、フロアの人はみんな、サンタなんですか?」

「あら、気になるのなら、その服に着替える前に館内見てきたら?」

事務の女性は、にっこり笑っていってらっしゃ~いと手を振った。

ロッカールームに荷物を置くと、海斗はこっそり館内へ入った。

ここは、メイン展示室の恐竜ゾーン。

見ると、ミニスカサンタのバイトの女の子が子供達のガイドをしていた。

“あ。三国さんだ。”

三国は海斗に気がついて軽く手を振った。

ここの制服は普段はボーイスカウト風なのだが、それよりずっとノリノリだ。

海斗も軽く手を振り返した。

海斗はさらに他の場所へ移動した。ここは鉱石の展示室だ。

難しい顔をした学生サンタの小林が子供の質問に唸っていた。

“分かる、分かる、その気持ち。勉強不足を問われるよなぁ”

普段の勉強では習わない範囲だとしても、である。

そこも通り過ぎてエントランス近くに来た時だった。

「Merry・Christmas!!!」

流暢な英語で白ひげを蓄えたサンタがニコニコ笑いながら、何か差し出している。

「あ。メリー・クリスマス・・・」

ちっちっちと人差を振られ、

「雪宮君、英語、ゼンゼンダメだねぇ。」

ハゥっと言いながら、サンタはデコに手を載せて首まで振っている。

「鷹野さん、そんなに否定しなくても・・・」

ふっふと鷹野は笑うと、もう一度

「はい、これ。良い子へのプレゼント。」

小さな袋を差し出した。どうやら、来館者に配っているらしい。

「・・・・・・。どうも。」

「じゃ、後でな~」

鷹野はそう言うと、新たな来館者へ近づき

「Merry・Christmas!!!」

と言いながら、プレゼントを渡している。

「わぁ~サンタさんだぁ!」

子供たちが喜んでいるのが、たまらなく嬉しそうだった。


そんな様子を遠目に見てたら、

「お!海斗じゃん!」

入館者の一人が海斗に声をかけてきた。

「川口先輩?」

「久しぶりだな!元気にしてたか?」

「あぁ、はい!先輩も変わりないですね。」

川口は2年上のバスケ部の先輩で、今は高校を卒業し他県の大学に進学したと聞いている。

「いやぁ。こんな所で会うなんてなぁ。他のやつらは元気にしてるか?」

「はい!今は北山がキャプテンしてます。東も真田も元気です。」

「そっかそっかぁ、きたやんがキャプテンな。あいつにぴったりだわ。あぁ、蓮は?蓮はどうしてる?あいつも相変わらず生意気なんだろうなぁ、ははは」

先輩は、懐かしそうにその名を呼んでいた。

“蓮”

「あいつは・・・蓮は、留学しちゃいました。・・・」

「おぉ?留学?」

「はい。アメリカ・・・」

顔は笑っているけど、海斗は辛そうだ。

川口はフッと短く息をつくと、

「そうか。じゃぁ、お前も寂しいなぁ。」

優しく言って先輩は海斗の頭を撫でてくれた。

「せん・・ぱい?」

「まっ、今日はクリスマスだし、同じ行事をあっちでもしてるんだから、お前も楽しまないと損だぞ?」

「は・・・。はぁ。」

「一緒に館内、回るか?」

「いえ、俺、今日はここでバイトなんです。」

「えっ?海斗ここでバイトしてんの?偶然!おれも、1年の時、ここで冬休みの期間だけバイトしてたんだよ!」

「え!!そうなんですか?」

「あぁ。今日はクリスマスイブだし、景さん訪ねて来たんだ。」

「景さん?」

「うん。鷹野景さん。」

「あーーーー・・・景さん」

下の名前で呼んでいる先輩にちょっとモヤモヤしてしまう。

「鷹野さんなら、サンタであそこに・・」

「はっははは、あのオッサンなかなか似合ってるじゃん?こっそり行って脅かしてやろっ。」

「おっさん?」

そう言えば、俺は鷹野さんの歳は知らない。

よく知らない人に憧れを抱いていたんだなぁと思うと、なんだか心が重たかった。

 

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