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23  回想  夏の記憶 14

 駅から、海岸まで街の中を通り、ぞろぞろ花火見物人の群れが歩いていく。

人が川のように道を埋めている。今日は車は通行止めだ。

ここら辺は繁華街で、色んなショップが道沿いに並んでいた。

多くはレディースの店が多いが、所々にメンズもある。

一軒の店の前を通ると、蓮が言った。

「もう、バーゲンやってるぜ?」

海斗も目を向けた。ショウウィンドウに“SALE”と大きく貼ってある。

「ほんとだ。早ぇな。まだ夏休みも来てねのに。」

蓮は気になるようだ。

「蓮、ちょっと入ってみるか?」

蓮は嬉しそうに、おぉと言って店の扉を開けて中に入った。

店の中は、それなりに人はいたが、外とは別の空間だった。

 二人は人に酔いそうだったので少し落ち着いた。クーラーが効いて、すごく涼しい。

蓮は、店内を見渡すと物色し始めた。

「なぁなぁ、これ、どう思う?」

甚平姿の彼がジーンズを合わせていく。

「いいんじゃない?」

「・・・。海斗に聞いても、いつもそれだよな。」

「お前の方がセンスあるんだから、しょうがねぇだろ。」

海斗は、少し困ったような顔で言った。

蓮は、そんな海斗を見ながら思った。

“あ。海斗・・・かわいいかも”

ぐるりっと店内を見渡す。そしてゆっくりと、何かを探し始めた。

蓮は、白地にボタンホールと胸ポケットの縁に黒の刺繍が入ったシャツを手に取った。

「こんな服、お前に似合いそう!」

そう言うと、浴衣の海斗に合わせるように見ながら、うんうん頷いている。

「それ、秋物だよ。」

海斗は笑って言った。どんだけ時間を先取りさせるつもりなんだよ。

「でも、似合う。海斗はキッチリしてるから、着ると清々しい感じだよ。きっとね。」

「わかった。覚えてたら、今度買いに来るよ。」

「絶対似合うって。ははっ。ーーま、一通り見たし、そろそろ行こっか?」

「あぁ。」

二人は店を出てまた元の人の波の中へ戻っていった。


花火大会の会場近くでは屋台が無数に並んでおりお祭り気分を引き立てた。

「やっぱり屋台でしょう!」

蓮が少し興奮気味に言った。二人共これが楽しみで来ているのだ。

「何から行く?」

「ん~そうだな。あ!はし巻き、うまそう!」

蓮は言い終わる前に、店へと向かう。

「手当たり次第だな。」

海斗は苦笑しながら、蓮の後について行った。

焼きもろこしをほおばり、焼きそばを食べ、かき氷で頭をキンキンとさせた。

蓮はポテトを、海斗は唐揚げのパックを買い、花火を見る為の場所を探しながら歩いた。

蓮は、ひょいと海斗の唐揚げを摘むとパクリと食べた。

「あっ、食いやがったなぁ~!」

「あっはは!口うつしで、返そうか?」

「いらねーし!」

ふふと幸せそうな顔で食べているので、海斗はお返しに蓮の最後に残っていたポテトを2本つまんで食べた。

「海斗も食ってんじゃん!」

近くにあった臨時のゴミ箱に空の紙袋を捨てながら言う。

「あいこだろっ」

ぶらぶら歩きながら、お互い見合って笑い合う。

「まったく、毎年同じ事繰り返してばっかだな。」

その時ー。


ーーー ドーーーーン ーーー


腹の底から震えるような音と共に夜空に大きな大きな花火が上がる。

海斗も蓮もその場で見上げ、暗闇から鮮やかに咲いた花に見とれた。

それを機に、次々と夜の空に大輪の花を咲かせていく。

儚くも短く、でも優雅に、今夜のこの一瞬は我が物であるかのように咲き乱れ、散っていった。

蓮は、海斗の耳元で言った。

「海斗。去年までと、違うこと・・・しようか。」

蓮はそう言うと海斗の手に手を絡めてきた。

大衆の面前で繋がった手に戸惑っている海斗に、蓮はいたずらをした子供の様な顔で言った。

「大丈夫。みんな上ばかり見て、下は見てないから・・・」

「っ・・・」

海斗は真っ赤になってそっぽを向いた。

二人の後ろには家族連れがいて、小さい妹たちは親に抱っこされている。

一番上のお姉ちゃんは、4歳くらいだろうか。二人の繋がった手をじっと見ていた。

蓮は、端から気づいていて、顔だけ後ろに向けてその女の子に、ウィンクしながら笑うとしーっと口元で人差し指を立てた。

女の子は“わかった”と言うようにコクリと頷いた。


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