22 回想 夏の記憶 13
1学期の期末テストが返ってきた。
恐ろしい位に出来が悪かった。海斗は、そこそこ自覚はあったのだが、ここまでひどいとは思わなくて返ってきた答案を見て正直へこんでしまった。特に数学と歴史。欠点を取ったのは入学以来初めてだ。
「くそ~。帰りに補習かよ。」
放課後、補習のクラスに入ると蓮がいた。
「蓮、お前も?」
蓮は肩をすくめて、笑っている。
すれ違っている間は、蓮も似たような状況だったのだろう。
「横の席、空いてるよ。」
「あぁ。」
「今回、お前のおかげで、ぜんっぜん勉強が手につかなかった・・・。」
それを聞いて蓮は顔をポッと赤くさせた。
「海斗が・・・俺のせいで?」
“あっ、失言”
これではまるで、お前の事ばかり考えてたって言ってるようなものじゃないか。
実際、そうなんだけど・・・。
そういった辺りまで、知られると恥ずかしいというか・・・なんというか。
せっかく隣に座ったのに蓮の顔がまともに見えれなくてずっとそっぽを向いていた。
教室では、数学の先生が補習授業を始めた。
蓮は、ノートの端を切って何やら書いていたが、それを折って海斗に飛ばしてきた。
「!」
なんだよっ!と睨むと、見てみてと蓮は嬉しげに合図を送る。
紙を開くと、
『今度の花火大会、一緒に行こう?』
と書いてあった。
“あぁ、花火大会かぁ・・・もう、そんな季節なんだな”
海斗は返事を書いて、投げて返した。
蓮は、それを見るとニッコリとし、コクリと頷いた。
待合せは駅の改札を出てすぐにあるロータリー前で、蓮は建物の柱に寄りかかって立っていた。
花火大会は海岸沿いで行われるのだが、毎年混雑が激しく携帯の電波が圏外になる程の人出だ。
でも、どんなに人が多くても花火大会の待合せは今回で5回目なので、すれ違うはずは無い。
蓮は行き交う人たちを眺めながら、一人違う時空にいるような妙な感覚になった。
ここに海斗が来たら、今度はきっと二人だけの空間を完成する事が出来るだろう。
目を閉じてその時を待つ。
「蓮。お待たせ。」
“ほら、来た”
蓮は目を開けてトキめいた。
“!!!!”
海斗はグレーの雨縞の浴衣を着ていた。帯は献上黒でぐっと全体的を引締めている。
「浴衣なんて、ズルイな・・・」
「お前のソレは、ズルクナイのか?」
そう言って海斗は笑った。
蓮は、墨色地に滝縞の甚平を着ていて、普段よりぐっと大人びて見えた。
「花火大会にはぴったりだろ?」
ふふと笑い合って二人は人の流れに沿って歩き出した。




