20 回想 夏の記憶 11
蓮は、海の見える公園の木陰にあるベンチに一人佇んでいた。
先ほどようやく3日ぶりに携帯の電源を入れると、そこには4通のメールと6件の海斗からの留守電が入っていた。
メールはいずれも、『電話くれ。』で3日前に送信されていた。
留守録を聞いてみた。
《蓮、電話ができるようになったら、かけてくれ。何時でも待ってるから。》
戸惑ったような海斗の声だ。
「うん・・・。」
《海斗だけど、連、今、何してんだ?まだ怒ってるのか?俺は、なんでお前が怒ってるのかわからないんだ。だから、お前と会ってちゃんと話がしたい。・・・電話、下さい。》
「うん・・・・」
素直にそう言いたい。
《連、頼むよ。俺は、お前に会いたい。・・・・》
「うん・・・」
俺も・・・俺も会いたい・・・
《蓮、もう、いい加減にしないか?それとも、本気で嫌なの?お前の気持ち聞かせろよ。》
「本気で嫌なわけ・・・ないじゃん・・・・」
泣きたい気持ちが溢れてくる。
《・・・・。》
何か言ってくれよ・・・
《・・・・。》
海斗・・・
最後の2本の留守電は無言だった。
日付は昨日で終わっていて今日はもう留守電は入ってなかった。
「海斗から、捨てられちまうも。・・・そうなっても、しゃーないんだけど・・」
蓮は、項垂れた。久しぶりに聞く海斗の声を何度も再生しながら、なんですぐに仲直り出来なかったんだろうと後悔した。
“お前に、会いたい”って言った海斗の声が胸にこだまする。
「はぁ~~~・・・馬鹿な俺・・・」
大きな溜息をつきながら、朱くなりだした空をずっと眺めていた。
横に置いた携帯がブルリと振動しながら鳴り出した。
「海斗!?」
慌てて携帯を見ると、『きたやん』と出ていた。
はぁと小さく溜息を出すと、電話に出た。
「よう!蓮!」
「あぁ、きたやん・・・」
「お。やっぱお前、海斗と喧嘩したのか。」
いつも明るいだけの声に優しさが添えられる。
「うっ。うん・・・・まぁ。」
「なぁに、喧嘩するほど、仲がいいって言うんじゃん!」
そうであれば、どんなにいいか・・・
「・・・。」
「蓮。チケット、余ってるんだろう?今からそっち行って一緒にライヴ行ってやるよ。今どこにいるんだ?」
蓮は、一人でライヴに行く気がしなかったが、そう言われて現在地を北山に教えた。
「おう、じゃぁ今から行くから、動かずに待っとけよ?」
「うん、わかった。」
「おうぅ!素直じゃん。じゃまた後での~~」
そう言って北山は電話を切った。
蓮は膝を抱えて、海を眺めていた。
明日からは、嫌でも部活で海斗と会う事になる。
どうしていいか分からずに丸めた膝に頭を伏せた。
「・・・・」
長い時間そうしていたのだが、目の前に人の気配がした。
“あぁ、きたやん来たのか”
顔を上げて、びくりとした。
ーえっ!ー
「ようやく捕まえたぞ。連。」
なんで、いるんだ・・・・海斗
海斗はベンチの背もたれに片手を付き、もう反対の足をベンチに載せて蓮の逃げ場を無くした。
「っ!!!」
まともに正視できなくて、真っ赤になって横を向く。
「蓮・・・悪かった・・・」
そう言って海斗は蓮を力一杯抱き締めた。
久し振りの互いの温もりに安堵感が広がる。
「海斗・・・俺も・・・ごめん。」
顎を掴まれて、顔を上に向けさせられると唇が重なった。
甘く、だけど、深くすべてが奪われそうだ。唇を甘噛みされ少しだけ口を開くと舌が入ってきた。
蓮は背中にぞくぞくした感覚を覚え背を仰け反らせた。
「はぅっ・・・はぁ」
力が抜けそうで海斗の首に手を絡めた。
すべての思考が止まりそうだ。
“あぁ、海斗!!・・・海斗っ・・・”
さっきまで堪えていた涙が流れた。
まだ執拗に口づけを繰り返しながら、海斗は言った。
「もう、逃がさないから。」
蓮は、小さく頷いた。もう、その言葉だけで充分だ。
きたやん、グッジョーブ♪




