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18  回想  夏の記憶 9

 海斗と蓮の微妙なすれ違いは、お互いの気持ちへの期待なのだろう。

でも本人達は、その意味すら分かっていない。


 明日から期末テストという時だった。

蓮は未だにライヴの件を言い出せずにいた。

正直なところ、海斗は自分よりクラスの打ち上げを選択するんじゃないかと不安だった。

海斗の性格上、そう言う所は律儀なのだ。

何より“想い”のベクトルが違いすぎる。

“俺が100とすると海斗は40くらいだろうか?”

愛のバロメーター等、誰も分かりはしないのに考えてしまうのは、相手からも同じ様に愛して欲しいからだ。

いや、今は同じじゃなくてもいい、でも毎日少しずつでも愛が増えていって欲しい。

そして、そのうち四六時中、俺の事だけ考えて欲しい。

だって今の俺は、まさにその通りなんだから・・・。

“・・・”

やばいレベルかも知れない。

“俺はそのうち海斗のストーカーになるんじゃないだろうか”

ライヴに誘うのに、こんなに苦労するとは。

あぁ、ダメだ。ここはあっさり誘おう!

そう意を決めて、今、帰り道で隣にいる。

海斗は明日の試験範囲の英単語帳を見ながら歩いている。

「なぁ、海斗。」

「ん。」

「7月7日なんだけど・・・」

「悪い、その日クラスで打ち上げ。」

こちらも見ずに、即答だった。

「・・・」

海斗は英単語帳を見ていたので、蓮の変化が分からなかった。

1メートル程歩いたところで、蓮が横にいないことに気がついて後ろを振り返ってハッとした。

「なんだよ。俺の話を最後まで聞かないで!!!」

蓮は怒っていた。

「はぁ?」

「もういいよ!!!明日っから一緒に帰らねぇ!!!」

「ちょっと、オイ!!蓮!!!」

そう言うと、蓮は走って行ってしまった。

海斗は、何が気に障ったのか分からない。

「なっ、なんなんだよ!いきなり怒り出して!?」

最近の蓮は、怒ってばかりだ。

前は、もっと、笑ってることが多かった様な気がするのに・・・

でも、俺も悪かったかも知れない。

海斗が蓮の跡を追いかけようとした時だった。

「ゆ~き~み~や~」

クラスの女子から声をかけられた。

なんだよ、こんな時に!!

「あんた、今日、図書室掃除の当番でしょ?もうすぐ始まるわよ?」

「あ~!!!いっけね、忘れてた!!!サンキュー!!」

海斗は急いで学校へ引き返した。

図書室掃除か・・・30分かかってしまうな。


蓮は走って、バスケットコートのある公園まで来ていた。

「追っかけても来ないんだな。」

怒りが切なさに変わる。

試験明けまで、部活もない。

事実上、毎日会わないのと一緒だ。

蓮は、膝を抱え込んだ。

「あぁ。もう、両想いがこんなに辛いとは思わなかった。」

片思いの時は、一緒にいるだけで良かったのに。

携帯が鳴った。海斗からだ。

どうしよう、どうしようと思っていると留守電に切り替わった。

「・・・」

通話が切れて、急いで再生ボタンを押す。

『蓮、なんか気に障ったのなら、ごめん。・・・・ちゃんと聞くよ。・・・あ・・・んと・・・だから、・・・・連絡待ってる。』

“答え”はもう、もらったんだ。

「悩んだ末の一言だぞ・・・。何度も・・・・言えるか。」

ぐっと堪えて拳を握る。

蓮は携帯の電源を落とした

俺はいつも、こういう所で“逃げ”ちまうんだ。


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