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17  回想  夏の記憶 8

 蓮は胸のポケットに入れてあったライヴのチケットを取り出した。

“これで、海斗ともっと楽しくなる予定だったのにな。”

はぁっと大きな溜息をついた。

「おっ!蓮!何してんだぁ?」

渡り廊下の向こうからやってきたのは、バスケ部キャプテンの北山だ。

北山は、今日は部活の部長会があったので、さっきまでその会に出席していた。

「あぁ。」 

「どうした?蓮?元気がないぞ?」

「なんでもねぇよ。」

「お前の“なんでもねぇ”は、なんかある“なんでもねぇ”なんだよ。この前みたいに暴れられてたまるか。」

ケケッと笑いながら北山が言った。

「うぅ。」

思えば、北山に暴走を止めてもらったのは、一度や二度ではない。

蓮は、目の前の部長を改めてまじまじと見た。

北山は、ごくごく普通の容姿で、一見、モテそうな感じでは無い。

だが、懐がデカイのだ。それだけで“漢”に映る。

“俺も、こんな器のデカイ男になりたい・・・”

もちろん、北山だけではなく今の2年生全員には、いつも面倒をかけているのだが、やっぱり北山と海斗は精神面で頼っているのかも知れない。

“真田と海斗が仲良く話してるだけで嫉妬するなんて、みっともねぇなぁ”

はぁ~とまたも大きな溜息をつくと、

「おぃおぃ、今度は溜息かぁ?七面相だなぁ。」

「お前は、いいヤツだよ、きたやん。」

「なんだ、気持ち悪っ」

そう言った北山は、蓮の手にあるチケットに気がついた。

「あれ、このバンド・・・」

「あぁ。」

「これ、入手困難って俺の友達が言ってたぞ、スゲェな!!レアチケ手に入れたんだな!!いやー、俺もその手の苦労は分かるわ~。ユイちゃんのライヴもそれこそ必死にならねえと取れないからなぁ!!」

北山はハッハと笑って、よかったよかったと蓮の腕をバシバシ叩いた。

一緒に喜んでくれている北山に、蓮は泣きそうになる。

分かってくれるか、北山。

お前ほどの苦労じゃないにしても、それなりに頑張った。

でもさ、海斗。まず、最初にお前と喜びたいと思ってたんだけどな。

「で、いつあるんだ?」

「7月7日。」

「七夕かぁ~。会場は?」

「マリンライヴハウス・・・」

「あぁ、あそこいいって話だぜ。」

「うん・・・」

「チケット、無くさねえ様、気をつけろよ。」

北山はニカッと笑って言った。

蓮は、ちょっとだけ気持ちが浮上してきた。

「さぁ、部活、がんばるぞぉ!」

そういや部長会でよ等と、始終話をしながら二人は部室へ向かった。


 その頃、海斗はといえば、蓮が出て行ったのを見て慌てた。

“素っ気無さ過ぎたかな・・・”

だけど、この部室に居る時は、海斗は落ち着かないのだ。

なぜなら、ここは二人が告白しあった場所で・・・キスした場所で・・・

なぜ、蓮は平気なんだ?

“あ~~~!!!考えるな!!!あの日の記憶が蘇る!!!”

平常心、平常心・・・

真田との会話を継続させることで、意識を逸したのだが、

「あれ?海斗、どうした?なんか顔が赤いよ?」

「いやぁ~、暑くて暑くて!!!」

ゲゲッ、そんなに赤くなってるのか?海斗はさらに慌てた。

「あ~~、あつぅ~」

手で扇いでも、大して風は来ないのに、扇がずにはいられない。

「ちょっと、顔洗ってくるわ!」

そう言って、タオルを持つと、蓮を追いかけた。

だが渡り廊下で蓮を見付けると、彼は北山と話をしていた。

北山は何やら、興奮して喜んでいる。

「・・・」

“なんだ。慌てているのは俺だけかぁ・・・”

蓮の行動、一つ一つが気になるのに、自分はどうしたらいいのか分からない時がある。

だが、今は北山が蓮と一緒だ。

海斗も、北山には一目置いている。

「先に行っとくか。」

海斗は、顔を洗うと、体育館へと向かった。


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