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「た、鷹野さんは、憧れだ。」
咄嗟に上手くごまかした。
でも、ピクシーは海斗が“男を好きか”と聞いたのだ。そこが問題だ。
“何故、そう思われた?
鷹野さんと一緒にいる時に見られて、俺はその時、そんなに顔に出てたのだろうか?”
色んな不安が一気に押し寄せる。
「そっか。じゃぁさ、蓮は?」
「えっ」
「蓮のことは、好きだった?」
そう言ったピクシーは、いつもと違う顔をしていた。
高圧的な態度ではなく、優しく、悪意が感じられない。
心をそっと撫でるような、そんな声だった。
無意識だった。
封じ込めていた気持ちの鍵を開けられたような、そんな感覚が起こった。
「ー・・・・蓮は・・蓮は・愛してた・・・。」
ホロリと涙が流れたとこに気づくのに、しばらくかかった。
“あ。言ってしまった。”
後悔が押し寄せてくる。
“きっと、こいつも気持ち悪いものを見るような目で見るんだろうな。”
居たたまれずに、横を向いているとピクシーは、海斗の首に腕を巻きつけ優しく抱きしめた。
「なっ、何?ピクシー、腕、外せよ。」
海斗は、今の状況に混乱してオタオタしている。
「辛かった?・・・私達、もっと、前に友達になってたら、良かったわね。」
そう言って、海斗を見上げた。
「どういう、意味?」
ピクシーは腕をのけると、少し哀愁を帯びた顔で言った。
「私もね、女の子しか愛せないの。同性愛者なんだ。」
二人のことを物陰から見ている人物がいた。真田だ。
ピクシーと海斗がどこかへ行くのを、帰る途中で見かけ、その跡を付けて来たのだ。
“我ながら、何をやってるんだ。”
特別教室の校舎裏へ行った二人を確認すると、真田は心の中がモヤモヤした。
真田は、ピクシーの事が好きだった。
入学式の日、彼女を見かけその頃からずっと片思いをしてきたのだ。
“何を話てるんだろう”
聞き耳を立てようとしたが遠くて二人の会話は聞き取れない。
突然、ピクシーが海斗に抱きついたのを見ると、心臓が張り裂けそうだった。
「海斗のやつ・・・」
「森野せんぱぁいっ」
真田は、声に驚いて辺りを見回すと、木陰に隠れて二人を見ている女子がいる。
お互いの声に、視線がぶつかる。
「こんなところで、何してんの。」
真田は、ふてぶてしい声で女の子を咎めていた。
「森野先輩は、私の憧れだったんです!先輩は、泉にも優しく接してくれるんですよ。」
相樂泉と名乗った女の子は女子バドミントン部の1年生だった。
「泉、素振りの時は、こうよって、手とり足取り!」
相樂はうっとりしながら話を続ける。
「へー」
「なのに!なのに!先輩っ、あんな男とー!くやしぃぃ~」
「海斗は、俺のダチなんだけど。」
「あ、すみません。」
「いいよ。俺も海斗に好きな子取られちゃったから、君の気持ちも分かるしね。ま、それが森野の本心なら、俺らがどうこう言う立場じゃないしな。」
「ー・・・先輩、それでいいんですか?」
相楽の目は据わっていた。
「えっ!?」
「私達の、森野先輩をあの男が本当に幸せに出来るか、見届けましょうよ!もし、先輩を少しでも泣かす様な事があれば、私は絶対に許しません!!!こうなったら、徹底的に見張ってやるぅ~」
「まじで?」
“海斗の跡を付けるんじゃなかった。
失恋はするわ、変な女子から絡まれるわ、ろくな事がないクリスマスイブだな。”
真田は溜息を付きながら、そう思わずにはいられなかった。




