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今日はクリスマス・イブである。
部活は、もちろんある。だが、朝の練習が終われば、それぞれ予定がある様だ。
北山と東は部活が終わると直行で例のアイドルのクリスマス・ライブへ行くらしい。
二人共、朝から浮かれて上機嫌だ。
真田は彼女がおらずバイトだと言っていた。
「真田こそ、バスケ部で一番もてそうなのになぁ。」
北山が最後のストレッチをしながら言った。
「誰か好きな人でもいるんじゃないの?」
東が探りを入れる。
「ばーか、いねぇよ。」
少し照れながら言うあたり、ちょっと怪しい。
「海斗は?この後どうすんの?」
「バイト。」
海斗がボソリと言うと、北山、東、真田の動きが止まった。
「海斗がバイトォ!?」
「まじで!?お前、社会で通用してんの?」
「大丈夫か?働くって意味、わかってるか?」
散々な言われようだ。
「なんだよ!まるで俺が世間知らずみたいじゃねぇか。」
「や、みたいじゃなくて、世間知らずだろ。」
「ちゃんと、仕事やれてるよ。」
多分・・・やれているはず。
やれている・・・のかな?
“あーっもう!”
海斗はへそを曲げてしまった。
「どこで働いてんの?」
「ふんっ」
「あー、海斗が不貞腐れてる!」
“誰が教えてやるもんか”
第一、博物館に来られたら堪らない。
絶対に来て欲しくない。
ねぇねぇとしつこく聞かれたが、黙秘権を行使した。
部活が終わり、さっさと帰ろうと正門を通った時だった。
門にもたれかかって立っている人物がいる。
女子バドミントン部のキャプテン森野可憐、通称ピクシーだ。
今日は確か女子バドミントン部は午後3時から体育館を使用するはずなので、昼前にいるという事は誰かと待ち合わせだろうか。
海斗は気にする様子もなく通り過ぎようとした。
「雪宮君。」
一瞬、自分に声を掛けられたと思わなくて立ち止まるのに数歩かかった。
「ん?」
振り向くと、ピクシーはコクリと頷いた。
「なに?呼んだ?」
海斗は呼び止められるような事は、心当たりがない。
「ちょっといいかしら?」
「俺、今日、バイトで急いでるんだけど。」
「時間は取らせないわ。特別教室の校舎の裏まで来て。」
“えぇっ!”
こんな事、前にもあったよな。確かあの時は、知らない女子に告白されたっけ。
あの後に知ったのだが、あそこは有名な告白スポットらしい。
まさか、ピクシー・・・。
ピクシーは、もう歩き出している。
海斗が戸惑っていると、
「いいから。早く来て。」
そう言うと、スタスタ歩いて行った。
仕方なく、ピクシーの後に従う。
“学校のアイドルの告白を断ったら、どうなるんだろう、俺・・・”
ピクシーの高飛車な性格を考えるとちょっと重い。
でも、好きでもない相手と付き合うのは出来無い。
ましてや異性ではピンとこないのだ。
“このセクシャリティが通じないって、辛いよなぁ。”
そんな事を考えていたら、校舎の裏側まで着いてしまった。
こうなったら、言わせる前に言ってしまおう。
「雪宮君。ちょっと、あな・・・」
「俺、好きな人がいるんで、君とは付き合えない!!」
少し大きな声だった。
ピクシーは驚いた顔をしていた。
「はっ?」
「だから・・・無理。」
ピクシーは、目を丸くしてこちらを見ていたが、急に呆れた顔になった。
「はぁーーー!?誰が、あなたと付き合いたいと言いましたぁ!?」
「えっ、ちが・・うの?」
「違うわよ。」
ピクシーは、ありえないという顔をして首を振った。
そして、周りに誰もいないことを確認すると、声のトーンを落として聞いてきた。
「でも、質問の手間が省けたわ。ぶっちゃけ、あなたの好きな人って、あのサラリーマンの人?」
「っ!!!」
人には知られたくないセクシャリティ。
海斗は、体中から血の気が引くのがわかった。




