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ここは○○博物館。
海斗は、小さな女の子のガイド役として、館内を案内している。
だが、女の子は一つの恐竜の骨の標本の前で立ち止まったきり動かなくなった。
そして、いきなり泣き出した。
「うっうっうわぁぁぁん」
慌てたのは海斗である。
「どうしたの?」
海斗がしゃがみ込んで顔を覗くと、しゃくり上げながら女の子は言った。
「この恐竜さん、かわいそう。パパも、ママも居なくなっちゃんたんだね。」
海斗は優しく女の子の頭を撫でながら言った。
「そんなことは無いよ。みんな仲良く暮らしていたよ?」
「だって、捨て子って。」
海斗は、なるほど、と頷くと笑って言った。
「違うよ、ステゴはね、よその国の言葉で屋根を持つっていう意味なんだ。」
「うっ、うっ、そうなの?」
女の子は海斗の方を向いた。
「そうだよ。屋根といえば、何を思いつく?」
「おうち」
「そうだね、おうちの様な名前なんて素敵だね。みんな一緒、だからもう、寂しくないね。」
「うん!寂しくないね!・・赤いおうちだったらいいなぁ。」
「赤が好きなの?」
「そう!赤が好き!」
女の子は元気になって、ようやく歩き始めた。
その様子を見ていた鷹野が事務所で声を掛けてきた。
「子供のあやしが上手いじゃないか。今日の対応、なかなか良かったぞ。」
「子供は、好きな方なので。それに少し予習をしてきたのが役に立ちました。」
「そうかそうか、いいぞいいぞ!」
鷹野は嬉しそうに、海斗の頭を撫でた。
海斗は少し恥ずかしくなって俯いた。
「ステゴサウルスの背びれは、ちょっと前までは防御用だと思われていたんだが、今では体温調節の役割をしてたんじゃないかという説が有力なんだ。」
「そうなんですか。」
「そう!色んな説を唱えて、あーじゃないか?こうじゃないか?と考える。未知の部分は想像でしかないからな。」
そう言いながら、まだ手は海斗の頭に乗っかったままだ。
「本当のところは、本人にしか分からないんだ。」
その目がいつもと違って真剣で、低い声に圧倒されて海斗は何も言葉が出なかった。
“鷹野さんには、見透かされている様な気がする。”
「さて、もうすぐクリスマスだな。雪宮君は、イブとクリスマス、予定あるのか?」
なんだろう・・・。何かあるのだろうか?
海斗はハッとした。
“もしかして・・・・誘われた?”
「いえ、特には・・・」
しどろもどろに答えた。
「じゃぁ、バイト、来られるな?いやー。その日は無理ですっていうバイトの子が続出でさ。」
「・・・」
“誘われる訳ねーよな。”
海斗は自分で自分がおかしくて笑い出した。
「でな、その2日間だけ昼の部からお願いしたいんだけど・・・ってあれ?俺、おかしな事言ったか?」
「いえ、大丈夫です。昼からですね。」
「あぁ、頼む。それから、イブは晩飯はいいって言っとけよ。」
鷹野は、そう言ってニッとした。




