破滅ヶ丘
君が代と サクラ舞い散り 鳴く鹿の 声よ響いて 戦争敗れり
鳴く鹿の 声高々に 待つ我は 満月の夜に いとど寂しや
億劫な 星の流れの 美しや 君のにほひの 透き通ることよ
須臾の時間 君の片鱗 撒き散らす 遠く劈く スクリューの音
思ひ出の ラブレター破り 恋の跡 共に飲みほす ハルシオンの粒
垂乳根の 母を殺して 罪の涯て 専属殺人 てんでばらばら
飴玉の 溶ける刹那の 虚しさよ 口に拡がる 残酷なる味
草莽に 横たわるだけの 廃墟には 悪霊の如し ヤスデの大群
マリファナを ひたすら貪る 盲人が 遠くに眺むる 廃兵院よ
さざなみに 飲まれる刹那 ほくそ笑む 幽霊蟹の つゆと消えゆる
一枚の ルーズリーフに 漠とした 恋文の下書き 鉛筆のあと
牛頭馬頭よ 地獄の暮らしは 楽しいか サクリファイスと 濁った味噌汁
あっけなく 善人殺され ガソリンの 引火に似ていて いのちみじかし
方舟は 救いの道を 与えずに オルゴン・ボックス 中身は空っぽ
真夜中の 月光孕んで 御柱 朽ちうる鳥居の 首吊り死体
狼の 血筋途絶えし 日本国 保健所の中 毒ガスの処刑
男のためと 快楽貪り 胃袋へ たたきこまれた 経口避妊薬
星もなし 人もなければ 都市もなし 前衛美術 咒いの如く
八重葎 立て札に彳む 一輪の百合 踏みつぶすだけの タンクローリー
現代の 愚神礼賛 腐汁の如く 世界の畢り 破滅ヶ丘