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番外編:私の気持ち

(番外編)

 (ねぇ、里見・・・好きなんだよ。いつもあなたは、なんで私ではなく違うほうばかり見ているの・・・)

 彼が、私の中でこんなにも大きな存在になってしまったのはいつからなのだろう。

彼を考えるたびに、胸が痛くて、悲しくもないのに涙があふれるの。彼の全てを知りたい。見ているもの、好きな食べ物、好きな歌手、好きな歌、好きな人・・・。

 里見とは、幼稚園からの付き合いだった。

喧嘩が強くて、いつもあっちでこっちで喧嘩していて、その度に止めに入ったのを微かに覚えてる。でも、そんな彼は本当は優しいところの方が多くて、喧嘩の理由はからかわれてる子を助けてのことだったのもちゃんと頭の中に残ってる。毎年、バレンタインデーになると私からのチョコをすごく喜んでくれて、でもお返しは和菓子の詰め合わせだったことも、彼ってほんとおかしい人・・・。

 小学校で別れてしまって、私は泣きながら里見が家族と列車に乗るのを見送った。

そのあと、お父さんにおぶられていつまでも泣いていた。その時から、もう里見はなくてはならない人だったのかもしれない。でも別れてからも、お盆やお正月になると里見一家も自宅に帰ってきて、その度に遊んでいた。本当にそれが楽しみで、お母さんに「ね〜、次は里見来るのいつ?」って耳にたこができるほど聞いていたらしい。

 そうだ・・・ある。きっかけはある。中学の頃の話。

 私とひっちゃんで、里見がすごく落ち込んでたから、励ますために遠くの海まで遊びに行った、その帰り。

ひっちゃんは、一つ前の駅で降りて、里見と二人で夕方の路地を歩いてたとき、前から不良の高校生が二人歩いてきて、私たちを冷やかしたの。

里見は、相手にしないで私の手を引っ張って、避けようとしたけど、背の高い方の人が私の肩を掴んで、放さなくて。私は、その手を思いっきりはたいたら、高校生もびっくりしちゃって手を離してくれたんだけど、私たちが背を向けると、「男みたいな女だな」ってこう言ってきて。

そしたら、里見がすごい顔して怒って、怒鳴って。

 「おい、お前ら!今、何つったんだ!謝れっ!」

 って、殴りあいの喧嘩になっちゃって・・・。

口と鼻から、まぶたの上からも血を流して、それでも里見は向かっていって。通りがかったおばさんが警察を呼んでくれて、その場は治まった。

 まぶたの傷は深く切っていたから、すぐに病院につれていってもらって、私は泣きながら廊下のソファーに座っていた。隣には里見のおばあちゃんがいて、私に泣くなって言ってくれるんだけど、どうしても涙が止まらなくて・・・。

 でも、里見が治療が終わって、泣いてる私の頭をなでて、こう言ってくれた。

 「四音、お前はすんげえいい女だ」って・・・。

こんな時じゃなかったら、笑っちゃう台詞なのにね。

私の心には、ほんとほんとに温かいものを与えてくれた一言だったの。そしたら、涙も止まっちゃって、なんか自然に微笑むことができた。

 このことは、里見のその傷跡を見るたびに思い出してる。ほんとにありがとう。


 高校に入っても、彼は変わらなくて、

でも私がすごく意識するようになっちゃって、ほんとは一緒に帰るだけで、私の胸はありえないほど高鳴ってた。彼と話せた日は、一日がすごく楽しく感じられて、もうそれだけで幸せだった。

隣を歩いているとき、背が急に高くなった彼の手が私の肩に置かれるたびに、心臓が止まりそうになった。

 里見、私がこんなに想ってても届かないの。

それとも、届いてないふりをしてるだけ?ねえ、教えて・・・私、それを考えるだけで息が詰まるほど苦しくて。

 言葉にして伝えようと何度も考えた。

でも、もし彼に振られた時の自分が想像できない。どうなってしまうかが恐くて、恐くて、泣いたよるもあったっけ。

 里見、どこを見てるの。何を見てるの。

 彼は、中学の頃は何でも話してくれた。母親を亡くした悲しみも全部。

 高校に入ってからの彼は、私には分からないことだらけ。

 なんで、私に話してくれないの?

里見、もっともっと頼っていいんだよ。弱いところも全部見せてほしい。

 本当は、彼が私に話してくれないことの内容はほとんど知ってるのに。だって、家が隣同士なんだから・・・。

だけど、私は里見の口から改めて知りたい。

 ねえ、教えて・・・里見。私に話して・・・。

 あの女の子は誰?あの綺麗な子は?ただの友達だよね・・・里見は優しいから、いろんな友達がいるんだもんね。そうだよね・・・。

里見、私を置いていかないで。里見だけなの。私が欲しいものは、あなたの気持ちだけなの。


 もう五月・・・。月日の流れは、水の流れのように過ぎ去っていくもの。

 私は、伝える。今だからこそ、伝える。もう抑えきれない。

それで駄目なら、ほんとに仕方ないことなのだから。気持ちは思い通りにならないものなのは、よく知ってる。

 だけど、頭では分かっているけど、心がまだ納得できなくて・・・。

 届いて・・・。私の想い・・・。

そして受け取ってくれるよね、ね、里見。


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