【スカッと系】女を舐めるな! 女二人が逃走男を捕まえた夜
※本作はフィクションです。
実際の出来事に着想を得た部分はありますが、登場人物、設定、展開などは創作です。実在の人物・事件とは異なります。
二人の女性の勇気が交差する、スカッと系の物語をお楽しみください。
夜の街は、昼の喧騒を忘れたように静まっていた。
居酒屋のアルバイトを終えた綾香は、いつものように肩を落として歩いていた。身長150センチ。運動経験などほとんどない。ただ、今日も無事に仕事を終えたことだけが、ささやかな安堵だった。
そのとき、前方から慌ただしい足音が聞こえた。
「おい、待て! 金払えーっ!」
タクシー運転手が必死に叫んでいる。その前を、黒いシャツを着た男が走っていた。
身長175センチ、30代前半の大男だった。
綾香は足を止めた。
「……無賃乗車?」
頭より先に体が動いた。
男の正面に回り込み、両手を伸ばす。胸元と右袖を、思い切り掴んだ。爪が生地に食い込む。
「ちょっと、待ってください!」
男は一瞬、目を見開いた。相手が小柄な若い女だとわかった瞬間、唇が歪む。
「はあ? 何だお前は。邪魔すんな。離せ!」
「逃げないでください。お金、払ってください!」
「うるせえ! 女のくせに!」
男は腕を振り上げた。綾香の体がふわりと浮き、アスファルトに尻から叩きつけられる。痛みが背骨まで走る。それでも彼女は離さなかった。指が白くなるほど力を込めて。
「離せーっ! てめえら、後で後悔するぞ!」
今度は本気で振りほどかれた。綾香はバランスを崩して後ずさりする。男はすぐに向きを変え、闇の中へ駆け出した。
「待って……!」
綾香は追いかけた。自分でも信じられない速度で。
90メートルほど先。
交差点の手前で、赤いニットを着た若い女性が立ち尽くしていた。市役所勤務の咲。仕事を終えて帰宅途中だった。
彼女は、逃げる大男と、それを追う小柄な少女の姿を見た。
「……あの子、一人じゃ危ない」
咲は一瞬だけ息を吸った。中学・高校で学んだ柔道が、今、生きるのかもしれない。
全力で男の方へ向かう。
男が通り過ぎようとした瞬間、彼女は低く身を沈めた。
「えいっ!」
右足を男の足首に思い切り絡め、同時に肩で体当たりする。骨に響く衝撃。
「ぐあっ……!」
男の体が大きく前にのめった。膝がアスファルトに叩きつけられる音が、乾いた夜気に響く。右膝から鋭い痛みが炸裂した。
「何しやがる……! クソが!」
男が起き上がろうとする前に、咲はさらに体重を乗せた。膝を男の背中に押しつけ、腕をねじり上げる。
「動くな!」
「うるせえ! 女のくせに何を……離せ、離せよ!」
そのとき、息を切らしながら綾香が追いついた。
「あの人、タクシーのお金を払わずに逃げたんです!」
咲は男の腕をさらに強くねじりながら、綾香を見た。
「あなたが最初に止めたの?」
「はい……振り払われて、でも追いかけて……」
男が再び激しく暴れようとする。体をよじり、足をばたつかせる。
「てぇぇぇい!」
二人は同時に声を上げ、馬乗りになった。綾香が男の腕を押さえ込み、咲が背中に全体重を乗せる。もがく男の体が、アスファルトの上で跳ねる。
「くっくるしぃ……! 助けてくれぇぇ!」
膝の痛みで顔が歪む。シャツが破れ、肌が露出する。
「離せ! 金はあるんだよ! ただ、今払いたくなかっただけだ! こんなところで捕まるかよ……!」
咲は冷たく言った。
「あるなら、最初から払えばよかったじゃないですか」
綾香は震える手で男の身体をさらに強く押さえた。
「動かないでください。警察、すぐ来ますから」
男は二人の顔を交互に見た。若い女性二人ががっちりと押さえ、その目は本気だった。
「……お前ら、マジかよ」
声が少し小さくなった。だが、すぐにまた怒鳴る。
「こんな女どもに……! 俺が、こんなところで……!」
「女を舐めるな!」
二人の声が、夜の通りに同時に響いた。
そしてさらに体重をかける。赤いニットと、小さな体が、黒い男を完全に覆い隠すように。
「ひぎゃぁぁぁ……! 助けてくれぇぇぇ!」
膝から伝わる痛みと、背中に乗る二つの体重。逃げられないという事実が、徐々に男の胸に染み込んでいく。
「クソ……クソが……なんで……」
この男にとっては、女に完全に制圧される、地獄のような時間だった。
でも、二人は緩めることなく、全力で押さえ続けた。
遠方から、サイレンの音が近づいてくる。
咲が綾香に囁いた。
「大丈夫? 怪我してない?」
「大丈夫です。……体が、勝手に動いちゃって」
咲は小さく笑った。
「私も。考えたら危ないことしたかもね」
「でも……止めてよかったですよね?」
「うん。止めてよかった」
男はもう暴れていなかった。ただ、アスファルトに突っ伏したまま、歯を食いしばっていた。
膝が熱い。腕が痺れる。だが、それ以上に、胸の奥が苦しかった。
「……この俺が、女に負けるなんて」
誰にともなく、小さく呟いた。声が震えていた。
「女二人に……俺が……」
警察が到着したとき、二人の女性はまだ男を押さえ続けていた。
小さな体と、赤いニットの体が、逃げようとした男を、確かに地面に留めていた。
男は顔を上げようともせず、ただ唇を噛みしめていた。
「しっかり罪を受け入れなさい」
警察に身柄を引き渡したあと、二人は顔を見合わせた。
「やったね」
「やりましたね」
ハイタッチした。
重なった手の温もりに、綾香は小さく笑った。
——女であることを、少しだけ誇らしく思えた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、二人の女性が力を合わせて困難に立ち向かう、スカッと系のお話を書いてみました。
小柄でも、運動経験がなくても、勇気を出して一歩を踏み出すことはできる。
そして、一人では難しいことも、誰かと力を合わせれば乗り越えられるかもしれません。
2人の女性の勇気が伝わっていたら嬉しいです。
よろしければ、感想などを聞かせていただけると嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




