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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

婚約破棄された公爵令嬢は、隣国王子に溺愛されながら元婚約者を地獄に落とす

作者: 結城斎太郎
掲載日:2026/03/13

王都の春の夜会。

煌びやかなシャンデリアの下、貴族たちが優雅に踊っていた。

その中央で――

「リリアーナ・アルヴェルト公爵令嬢!」

王太子の声が、会場中に響いた。

名を呼ばれた瞬間、私は静かに顔を上げる。

「はい。何でしょうか、レオンハルト殿下」

王太子レオンハルト。

私の婚約者であり、未来の王。

……のはずだった。

だが彼は、私を見下ろすように笑いながら言った。

「私は今ここで、貴様との婚約を破棄する!」

会場がざわめいた。

予想通りの展開だ。

私は表情を変えない。

「理由をお聞きしても?」

すると、王太子の隣に立っていた少女が、勝ち誇ったように私を睨んだ。

伯爵令嬢、エミリア・ローレンツ。

王都で最近やたらと噂になっている女性だ。

「あなたは性格が冷酷で、私をいじめていました!」

エミリアは涙を流しながら叫んだ。

「私は何度も耐えました……でも、もう限界です!」

貴族たちの視線が私に集まる。

レオンハルトは腕を組み、得意げに言った。

「証人もいる。貴様はエミリアを何度も侮辱し、ドレスを破り、階段から突き落とそうとした!」

……まあ、予想通りのテンプレートだ。

私は小さく息を吐いた。

「証拠は?」

「なに?」

「証拠です。殿下」

私は静かに微笑む。

「証人ではなく、証拠をお出しください」

王太子の顔がわずかに歪む。

その時だった。

「証拠ならあります!」

エミリアが叫ぶ。

「侍女たちが見ています!」

すると数人の侍女が前に出た。

だが――

私は知っている。

彼女たちは全員、エミリアの家が雇った者だ。

つまり、買収済み。

王太子は勝ち誇った。

「これで十分だろう」

「なるほど」

私は頷いた。

そして。

「では、こちらも証拠を出しましょう」

「……は?」

私は指を鳴らす。

その瞬間。

会場の扉が開いた。

入ってきたのは、王城の近衛騎士団。

そして――

王国宰相。

「なっ!?」

王太子の顔色が変わる。

宰相は静かに言った。

「リリアーナ嬢から提出された資料を確認した」

「資料……?」

私は扇を開きながら言う。

「殿下。ここ半年間のあなたの行動記録です」

「なっ!?」

貴族たちがざわめく。

「王太子が伯爵令嬢と密会を繰り返していた証拠」

「金銭の授受」

「侍女買収」

「そして――」

私は最後の紙を見せる。

「王家の資金横領」

会場が凍りついた。

「ば、馬鹿な!」

レオンハルトが叫ぶ。

「捏造だ!」

「残念ながら」

宰相が言う。

「すべて事実だ」

エミリアの顔が青ざめた。

「そ、そんな……」

私は静かに微笑む。

「婚約破棄は構いません」

そして言った。

「ただし――」

「王太子殿下」

「あなたの方が、先に破滅します」

その時だった。

会場の扉が再び開く。

現れたのは――

見慣れない男。

だが、その姿を見た瞬間、貴族たちがざわめく。

「隣国の……!」

「皇太子……!」

男はゆっくり歩いてくる。

そして。

私の前で止まった。

「久しぶりだな、リリアーナ」

私は苦笑する。

「お久しぶりです、カイル殿下」

隣国アルディア帝国。

その皇太子。

カイル・アルディア。

彼は私の手を取った。

そして。

「この女性は」

会場に響く声で言った。

「私の婚約者になる予定だ」

「なっ!?」

王太子が絶叫する。

カイルは冷たく笑った。

「愚かな王太子よ」

「宝石を捨てて石ころを拾った気分はどうだ?」

会場が爆笑に包まれる。

王太子の顔は真っ赤だった。

私は扇で口元を隠しながら思う。


――まだ序章ですわ。




❈ ❈ ❈ ❈



「この女性は――私の婚約者になる予定だ」

隣国アルディア帝国の皇太子、カイルの言葉が夜会の会場に響いた。

静まり返る会場。

その沈黙を破ったのは、怒鳴り声だった。

「ふざけるな!!」

レオンハルト王太子が叫んだ。

「そんな話、聞いていないぞ!」

カイルは肩をすくめる。

「当然だ。今決めた」

貴族たちがざわつく。

私は小さく溜息をついた。

「殿下、勝手に話を進めないでください」

「嫌か?」

カイルが覗き込む。

「嫌ではありませんが」

正直に言うと――

この人は昔からこうだ。

強引で、傲慢で、だが誰よりも誠実。

レオンハルトとは真逆の人間だった。

「と、とにかく!」

王太子が怒鳴る。

「この女は性悪令嬢だ!隣国の皇太子ともあろう方が騙されている!」

その言葉に、カイルは冷たい目を向けた。

「性悪?」

そしてゆっくり言う。

「王家の金を横領し、侍女を買収し、女に溺れて国政を放置した男が言う台詞か?」

会場がざわめく。

レオンハルトの顔が真っ青になる。

「なっ……!」

宰相が前に出た。

「王太子殿下」

その声は重かった。

「先ほどの資料について、陛下に報告しました」

「…………」

「結果――」

宰相は告げる。

「王太子殿下は、本日をもって王位継承権を剥奪されます」

会場が騒然となった。

「嘘だ!!」

レオンハルトが叫ぶ。

「私は王太子だぞ!!」

「いいえ」

宰相は冷たく言う。

「もう違います」

その瞬間、近衛騎士がレオンハルトを取り囲んだ。

「は、離せ!」

「不正資金の件で拘束します」

「やめろ!!」

王太子は必死に叫ぶ。

「エミリア!!助けろ!!」

突然名前を呼ばれた伯爵令嬢エミリアは、青ざめた。

「え……?」

「お前も共犯だろう!!」

その言葉に、会場の視線が彼女へ向く。

宰相が静かに言う。

「伯爵令嬢エミリア」

「王太子への贈賄、虚偽証言、侍女買収」

「すべて確認されています」

「そ、そんな……!」

彼女は泣き崩れた。

「私はただ……愛されただけで……!」

「それを共犯と言う」

冷たい声だった。

カイルだ。

「自分が何をしたか理解しているのか?」

エミリアは震える。

「あなたのせいで、この女性は侮辱された」

彼は私の肩を抱く。

「……俺の大切な人がな」

その言葉に、会場がざわめいた。

私は少しだけ顔が熱くなる。

レオンハルトは絶叫した。

「リリアーナ!!」

私はゆっくり彼を見る。

「お前がこんなことを……!」

「ええ」

私は微笑んだ。

「半年かけて準備しました」

「なっ……」

「殿下が浮気を始めた日から、すべて記録しています」

王太子の顔が歪む。

「お前……最初から……!」

「ええ」

私は静かに言った。

「婚約破棄されるつもりでしたから」

会場が驚きに包まれる。

「あなたのような方が国王になれば、この国は滅びます」

「だから」

「その前に潰しました」

完全な沈黙。

カイルが小さく笑う。

「さすがだな」

「褒め言葉として受け取ります」

その時、騎士が王太子を連れていこうとした。

「待て!!」

レオンハルトが叫ぶ。

「リリアーナ!!」

私は振り返る。

彼は叫んだ。

「お前は後悔するぞ!!」

「私は王太子だったんだ!!」

私は静かに答える。

「でした、でしょう?」

その言葉で、すべて終わった。

騎士たちは彼を連行していった。

エミリアも泣きながら引きずられていく。

夜会は騒然としていた。

そして――

静かになった会場で。

カイルが私の手を取った。

「さて」

「正式に聞こう」

私は目を瞬く。

「何をです?」

「結婚だ」

会場がざわめく。

「俺の妃になれ」

直球だった。

昔からこの人は遠回しをしない。

私は苦笑する。

「外交問題になりますよ」

「問題ない」

「両国に利益がある」

「それに」

彼は優しく笑った。

「俺は昔からお前が好きだ」

私は少し驚いた。

「十年前、覚えているか?」

「庭園で泣いていた俺を、お前が叱った」

思い出した。

「泣く暇があるなら努力しなさい」

そう言った。

子供の頃の話だ。

「その日から決めていた」

カイルは言う。

「いつかお前を妻にするって」

私は小さく笑った。

「随分長い片思いですね」

「やっと報われる」

彼は真剣だった。

私は少し考えてから言った。

「条件があります」

「言え」

「私を、絶対に裏切らないこと」

カイルは笑った。

「それは俺の台詞だ」

そして。

彼は私の手に口づけた。

「リリアーナ」

「俺の皇妃になれ」

私は答える。

「はい」

その瞬間、会場が拍手に包まれた。

こうして――

婚約破棄された公爵令嬢は、

隣国の皇太子に愛でられながら

元婚約者を完全に屈服させたのだった。

そして数年後。

アルディア帝国にはこう噂される皇妃がいた。

「絶対に怒らせてはいけない皇妃」

だが同時に。

「皇帝の愛を世界一………そして、誰よりも寵愛されてている女性」

としても有名だった。

――そして元王太子?


彼の名はもう、誰も口にしなかった。

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