表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろうラジオ大賞6

ベランダでタバコを吸ってたら、女子高生を拾った

作者: 夜狩仁志

なろうラジオ大賞6 参加作品。

テーマは「ベランダ」

 ブラック会社のせいで今日も残業。

 夜遅くにアパートに帰宅、そしてベランダに出てタバコを吹かす。


 この季節は夜風が寒い。

 喫煙者の立場は辛くなる一方。


 早く金を貯めて、喫煙可の物件に引っ越さなくてはな。


 そして今夜もベランダに出ると、


 グルゥ〜


 ……腹の音がなる?


 でも俺のではない?


 耳をすませば隣から、


 グールゥ〜


 失礼だが身を乗り出し、隣を覗き込むと、

 制服姿の女子高生がうずくまっていた。


「そんなところで何してんだ?」


 ふさぎ込んだ顔を一度上げると、そのままうつむいた。


 なんだか訳ありな様子だったが、深く聞くことはせず、朝飯用のパンを放り投げてやった。


「ほれ」

「ありがとう」


 これがきっかけだった。

 それから俺たちはベランダで会話するように。


 隣に住むのは母親とこの子の二人。

 夜になると母親が節操なく男を連れ込んでは、行為に及ぶのだと。

 その近くにいるのが耐えられず、ベランダに逃げてくるのだという。


 俺は部屋に入れるか悩んだ。

 ベランダの薄い壁を破れば、一緒にいられる。

 しかし深く関わらないほうが良いだろうと、あえてなにもしなかった。


 ……のだが、


 ある夜、俺が帰宅して一服しようとベランダに出ようとした時、


「おかえり」


 向こうから壁をぶち抜いてやって来ていた!


「お前、不法侵入だぞ」

「え? ここもベランダでしょ?」


 こうして彼女は俺の部屋に入り浸る。


 ……とは言っても俺が帰宅して寝るまでの間だけだ。


 ある日のこと。

 帰宅してみると、隣の部屋から激しく暴れる音と怒号が?


 何事だ? と思った瞬間、ベランダを叩く音。


 あいつだ!

 しかも、服も破け痛々しい姿の!


 取りあえず急いで部屋へと入れる。


「大丈夫か!?」


 腫れ上がった顔を涙で濡らすだけで、言葉も出せないほど震えていた。


 想像はついた。

 母親の愛人に暴行されたのだろう。


 その夜初めて、彼女は俺の部屋で夜を明かした。


「ごめんなさい」

「なんでお前が謝るんだ?」


「私、体で返すしか……」

「バカか! 

 母親みたいになりたいのか?」


 俺はこの時、決意した。

 この子を守ろうと。


 後日、俺は母親を説得しにいった。


 母親はすんなりと承諾した。

 彼氏が自分より実の娘に色目を使うのが、憎く邪魔だったのだろう。


 俺は必死で貯めた貯金で新居を探し、広めのアパートへと引っ越すことに。


「ねぇ、ここで良かったの?」

「あ?」


「この部屋って禁煙でしょ?」

「まあ、またベランダで吸えば……」


 いや、これを機に辞めるか。

 もう一人だけの問題じゃないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ