03『ドードーの復活と世界変質』
遺伝子改造したリョコウバトに産ませたドードーの卵は、期待と希望の視線を浴びながら孵化をしました。残念ながら、母体として使用したカスタムリョコウバトは、その日を待たずに死んでしまいましたが。
「我々が初めて聞くはずのドードーの産声は、とても、懐かしい響きであった」
愛らしいドードーの赤ちゃん。誰もが生誕を祝福し、誰もが過去の人類の過ちを赦したような気になりました。世界中の人々がニュードードーを誕生の瞬間から愛したのです。
その結果、世界は球体から平面になってしまいました。
ええ。
そうです。
丸かった地球が、平らになってしまったのです。
ここで、一連の流れを軽く振り返ってみましょう。
まず、ルイス・キャロルを模した人工知能にアリスシリーズの新作、つまりは『鏡の国のアリス』の後に続く作品を書かせた際、世界の理に小さな穴があいてしまいました。電子的に製造された人間の創作物の新作が強い影響力を持ったことに、世界が対応しようとしたのです。
続けてアリスシリーズの第一作目である『不思議の国のアリス』にも登場する絶滅動物ドードーを復活させてしまったことで、世界の変質が加速しました。結果、球体である地球は高速回転し、軸化した穴を中心に平らになってしまったというわけです。
地球の根幹が、平面の中で世界を立体的に構築する『お話しづくり』という行為の影響を過剰に受けたわけですから、当然の結果であるとは思います…………でも、当時の人たちはとってもびっくりしたでしょうね。
地球の変形の様子はくるくると回転させてピザ生地を広げる職人を想像してもらえれば、わかりやすいかと思います。まあ、そのあたりの話を厳密に語ろうとすると紅茶が冷めてしまうのでこのくらいで。
ともかく、まあ、ともかく。
これが後に『世界の不思議化』と記される出来事のあらましというわけです。