まさかのゲームキャラ!?
潮の香りで目が覚めた。
変な体勢で眠ったせいか身体が痛い。
今日の予定を確認するためにテーブルにあるスマホに手を伸ばそうとして違和感に気が付く。
潮の香り?
そういえばここは何処だろう?
少なくとも僕の家ではない。
おまけに手を伸ばそうとしたのに見えたのは白い毛に包まれた獣の脚。
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どういう事だ?
自分の身体が人ではないという事に驚きつつも、近くにあった潮だまりの水面に映る自分の身体を見て驚く。
「これ、僕のゲームの自機キャラだ……」
無意識に声を出したが、その声すらもそのゲームキャラに設定した声だ。
そのゲーム自体はよくあるMMOなのだが種族や職業が幅広く選択でき、オマケに作中のイベントや育成次第で様々な種族へと進化出来るのが特徴だったのだ。
それで僕の種族は狐の獣人。そこから妖狐を経て、神獣に進化したのだ。
僕の種族は神獣の中の最高位神獣。神格としては最高位である創造神に次ぐ神格を有するらしい。
これはあくまでもゲームでの設定なのでこの身体がその神獣である保証はないが。
「えーっと、それなら僕が持ってるアイテムとかはどうなってるんだろう?」
僕がそんなことを考えていると脳内にゲームのUIのようなものが浮かんできた。どうやら思い浮かべるだけでインベントリにアクセスできるらしい。
アイテム欄は僕のゲームデータからそのままだった。レイドボスからのレアドロップや、ランキング一位での報酬品も、イベントでの獲得品も全てそろっている。それらのアイテムに交じって、見慣れないアイテムがあった……
「これ、スマホ?」
取り出してみると確かにスマホだった。しかもご丁寧に僕が普段使いしていたものと同じデザインである。
スマホのメールアプリを見てみると今までの連絡先ややり取りが全て削除されていて、代わりに新しいメッセージが一件あった。
☆
差出:創造神
件名:転生に関して
【本文】
このような形での挨拶になってしまったことを申し訳なく思います。
貴方のゲームデータを拝見した時、非常に理想に近い形でしたので素体として利用させていただきました。
その際に、この素体には貴方の魂が最も適合率が高いという事もあったため、この身体に入れた次第です。
突然の転生で混乱しているでしょうが、貴方に対して特に使命のようなものはありません。
この世界を安定させるために出来る限りで高位の神獣が必要だったために、こちらの都合で貴方を巻き込むことになってしまったので。
お詫びという訳ではありませんが貴方のゲームデータをほぼ完璧に近い形で引き継いでいます。
ほぼ、というのはあまりにも複雑すぎるデータは私でも再現できなかった為、素体に戻してインベントリに入れています。
貴方がギルドホームに使用していた艦は勿論、貴方が育てていた4体の眷属達もそれぞれの記憶はそのままにタマゴにしてインベントリに入れています。
このタマゴは神力を流し込むことで孵化が可能です。きっとあなたのこれからの生活の助けになるでしょう。
それと今後何かしらのお願いが出来る可能性もあります。その時は都度連絡を入れますのでよろしくお願いしますね?
以上です。
☆
この感じだと僕の作ったキャラが丁度良かったからそのデータを素体に神獣造ったと。それで器に合う魂が僕だったからそのまま僕の魂も引っ張ってきたと。
まぁ、気楽に行こう。
僕はそう思いつつ、インベントリから【神獣のタマゴ:虫】と書かれたタマゴを取り出し、神力を込めることにした。