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女の子の唇ってスゴい! 柔らかく吸いついて熱くとろける初めての快感

 GWが一週間後に迫った金曜日、僕たちのクラスは遠足に出かけた。

 出かける先は、誰もがもう10回は行ったことがある地元の滋賀養鶏センターで新味はなかったけど、今日はみな体操着姿で、クラスでそろって出かけることに高揚感があるようで、楽しい盛り上がりのムードが漂っていた。

 教室で怖がられていた乱暴者の実親は、僕を殴り倒した事件でどうやら地元に居づらくなったらしく、他の学校に転校したらしい。それも手伝ってクラスの雰囲気は和やかになっており、みな仲がいい。

 地味で目立たずどのグループにも入れない僕を除いては…。

 まあいい。

 目的地についたのは午前11時過ぎ。お昼までは僕が係をつとめているレクリエーションの時間だ。僕はみんなにルールを説明して、ゲームはスタートした。

「手つなぎ渡り鬼」は中央で手をつないでいる鬼役を「ワニ」に見立てて、端から向こう側の川岸にタッチされないように渡るゲームだ。

 僕がとても心配だったのが小泉さんが鬼役になったときだ。相方の男子生徒と手をつなぐのがすごくイヤだ。涙がにじんできそうなほど。僕はどんよりした気持ちで、ゲームそっちのけで小泉さんの手を凝視した。小泉さんは男子生徒の手を握って…はいなかった。握っている風に、男子生徒の体操服の袖をつかんでいただけだった。僕は安心して、元気を取り戻した。

 一方、僕が鬼になったとき、相方は長野留美さんになった。

 長野さんは

「実親くんとのこともすごかったけど、レク係もしっかりやれるんだね」

 と微笑みかけて僕の手を握った。その握り方は普通に手をつなぐのではなく、恋人つなぎ…指と指をからめあっての握り方だった。長野さんの指はしっとりとして柔らかくて、僕はドキリとした。

 長野さんからは、誘いかけくるような大人っぽくてセクシーな香りがした。香水なのか、シャンプーなのかわからないけど。彼女は僕と目が合うたび、満面の笑顔を返してくれた。僕もつられて笑顔になっていく。でも浮かれている場合じゃないかも。

 僕は小泉さんが気になっていた。彼女は僕たちの方を見ていた。いつもの小泉スマイルが消えていて真顔だ。これはまずいかも。

 とはいえ、長野さんの手を振りほどくわけにもいかない。焦りつつ鬼役を続けた。終わっても長野さんはしばらく僕の手を握ったまま、

「ああ、楽しかった」

 と言って、

「昼休み、私達のグループと一緒に遊ばない?」

 と誘ってくれた。だけど僕は

「ごめん、係の打ち合わせがあるから」

 と断った。長野さんは、

「そっか、残念。でも今度、どこかに行こうね」

 ってようやく僕の手を離してくれた。

 そして2つ目のゲーム、班別対抗の「ピンポン玉リレー」は当たり前のように盛り上がった。僕もやっと何も考えず盛り上がりの輪に入ることができた。

 レクが終わると、みんなが楽しんでくれたことにホッとした。と同時に、どっと疲れが出た。盛り上がらなかったらどうしようと、ずっと緊張していたし、昨日は遅くまでレクの進行のための台本を書いていて寝不足だ。

 さて、その後のお弁当タイムは点呼を兼ねて班別に食べることになっている。食べ終わったら自由時間で、午後2時ごろから帰途につくことになる。

 さっき長野さんの誘いを断ったのは、小泉さんとの約束があったからだった。

 レクリエーションで使うピンポン玉を体育倉庫に取りにいった日の帰りに、小泉さんと、遠足の自由時間は一緒に遊ぼうと約束していたのだ。午後1時過ぎにキャンプ場近くの芝生で待ち合わせしようと。

 僕が待ち合わせ場所に行くと、もう小泉さんが待ってくれていた。

 エクボがかわいい、いつもの笑顔だ。緑の芝生の中で見ると、ますます輝いて魅力的だ。

 僕と小泉さんは、大きな木の陰になっているところを選び、そこに並んで芝生の上に体育座りをした。よく晴れた日差しで芝生もほどよく温かくなっている。

「遠藤くん、レク係、頑張ったね。えらいと思う」

 小泉さんが言う。僕は

「小泉さんのおかげだよ。僕だけだと、何をやっていいかわからなかった。相談してよかった。ありがとう」

 と、まずお礼を言う。

「ケンキョだねぇ〜、フフッ」

 と小泉さんが笑う。つややかなくちびるからのぞく、白い歯がマブしい。

「でも、疲れてるんでしょ?」

 と小泉さんが続ける。

「えっ、なんで?」

 と僕が返すと、彼女はぼくの顔をのぞきこんで、

「目が少し眠そうになってるよ」

 のぞきこまれた瞬間、彼女の顔が少し接近してきて、ぼくはドキリとした。シャンプーの香りは優しい花の香りで僕はうっとりして思わず吸い込んでしまう。そして目の前の淡いピンク色に輝く柔らかそうな唇に胸がたかなる。

 それと同時に小泉さんといる心地よさと安心感で、眠気も確かにぼくを包み始めている。僕は彼女に答えた。

「うん、昨日の夜が遅かったからちょっと眠くなってる」

 小泉さんは

「じゃあ、ごほうびをあげましょう」

 と言って、座り方を、ぺたん座りに変えた。お尻を芝生につけて、太ももは前だが、ひざより下をWの形に外側に折りたたむ。女の子の柔らかい脚だからこそできる姿勢だ。そしてなによりも、このポーズは男心を誘っているようで悩ましい。

「ひざまくらしてあげるから、お昼寝していいよ」

 彼女のハーフパンツから白い太ももが半分ほど出ている。そして膝から折り返されるスラリとした脚。その肌は健康的な透明感を放ちつつも、生々しくあやしい色香を漂わせている。

 小泉さんは僕の手を握って、僕に仰向けの姿勢を取らせた。小泉さんの手はちっちゃくて、指はとても細くて、あたたかくてキレイだ。

 そういえば小泉さん、ゲームではかたくなに、男子生徒の手を握らなかった。僕にだけ握ってくれたんだろうか。

 頭を彼女の太ももに載せる。ハーフパンツの布地からは洗濯のさわやかな香りがする。

そして顔の右半分は彼女の太ももにじかに触れている。彼女のつやつや、すべすべの肌からは、高級なお菓子のような甘い匂いがする。その肌は、触れているうちに、僕の中にすべりこんできたがっているようになじんでくる。

 ああ、気持ちいい。リラックスして僕は、1分もしないうちに眠りに入ってしまった。


 ――春の陽気が穏やかで心地いい。

 僕はすごく気持ちよかった。

 でも、それは気候の心地よさだけじゃない。

 僕は唇に温かい感触を感じていた。柔らかいものが僕の唇にやさしく触れている。

 それは小泉さんの唇だった。触れるか触れないかスレスレの繊細なタッチなのに、すごく気持ちがいい。そして小泉さんのつやつやした淡いピンクの唇からは、フルーティで甘いリップクリームの香りがする。僕はその香りを思い切り鼻から吸い込んで味わう。小泉さんはしばらく、優しいスレスレなタッチを繰り返す。

 小泉さんは声にならない甘い吐息を漏らしながら、少し熱くなった柔らかな唇を僕に重ねてきた。甘い香りで僕を包みながら、小泉さんの唇はトーストにのせられたバターのように僕の唇の上でとけていき、ぼくの中に吸い付いてくる。しかも一度ではなく、何度も小泉さん唇は僕に唇を重ねて、そのたびにやわらかな快感が僕の唇の上でトロけていく。人生の中で味わった最大の気持ちよさだ。

 僕はファーストキスなのに…。

 初めてのキスって、小鳥同士が餌を取り合う感じで「チュッ」と触れ合う感じを、僕は想像していた。でもこのキスって全然違う。

 しかも小泉さんは舌を差し込んでくるわけではなく、彼女のつややかな唇で僕の唇にやさしく触れたり、とろけるように重ねてきたり、トロけるように吸い付いてきたりを繰り返しているだけだ。それなのにこんなに気持ちいいなんて!

 小泉さんはいつのまにか体も半分ほど僕の上に重ねている。小泉さんの柔らかなすべすべの太ももに、僕の下半身が熱くしっかりと当たってしまっている。

 彼女はきっとそれに気づいているのだろう。でもお構いなしに、また目をとじて淡いピンクのつややかな唇を重ねてきて、その感触は僕の中に熱く溶けていく。すごく色っぽい。

 しかも彼女の太ももが僕の下半身に密着し続けている。僕は死にそうな気持ちよさに包まれながら気を失ってしまった――。

 

「遠藤くん、起きて」

 小泉さんの声がする。

 僕ははっとしてとび起るように上体を起こした。

 えっ、あのキスは?

 小泉さんを見つめると、その顔はいつものスマイルだ。

 僕はさっきの出来事と現実の境が見つからない。

 僕は、ただ恥ずかしい夢を見ただけなのか?

 小泉さんが、真顔に戻って言う。

「もう出発10分前だよ。準備しなきゃ」

「うん、わかった。膝まくら、ありがとう」

 僕はそれぐらいしか言えなかった。もちろん、キスのことなんて、聞けやしない。

 集合場所に戻りつつ、寝ぼけた頭で考える。

 あれは夢…? それにしては生々しくリアルだったが…。

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