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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

肉と聖女のジグザグ紀行

作者: 二重名々

「うぐ、うんんんんんんんんっ!?」


ダンダンダン、と食卓を叩く。

息が出来ない。

意識も次第に薄れてきた。

視界は白くなっていき、苦しさすらあまり感じなくなってきた。

二十八歳独身、自宅でひっそりと窒息死。


(はは、これは、、、ひどい)


最後の晩餐は豚の生姜焼き。

と言うか最後の晩餐に殺された。




(あれ?)


確かに死んだはずだ。

意識が残っているのはどうしてだろうか。


(そうか、ここは天国。へぇ、本当にあったんだな)


身体は動かない。

しかし、視界の方に変化があった。

巨大な少女だ。

自分の何百倍の大きさだ。


「えっへへー、好きな物は最後に!」


嫌な予感が動かない全身を駆け巡る。

巨大な少女の手にはフォーク。


(や、やめろ!やめろやめろやめてくれぇっ!?)


人を喰う巨人が目の前にいる。

もしかして身体が動かないのは手足をもがれているからなのか。


(ぐああああああああああああああっ!?がっ、あっ、あぁぁぁぁぁぁっ!?)


フォークで突き刺され、持ち上げられる。

次は噛み砕かれる。

これ以上は精神が耐えられない。


「あ〜〜〜〜んっ!」




(あれ?)


この世の物とは思えない痛みが急に無くなった。

意識も視界もはっきりしている。


「あれ?」


自分とは違う声。

近い所から聞こえる。


「何だかいつもより元気な気がする!」


さっきも聞いた声。

そう、巨人の少女だ。


(ひっ)


相変わらず身体は動かないが、心だけは恐怖で縮み上がった。

感覚が生きているまま喰われた。

この恐怖はそう簡単に払拭出来ない。


(逃げ、ないと!)


「わっ!?誰!?」


少女は驚く。


(もしかして俺の声が聞こえるのか?)


発声器官はまだ生きているのかもしれない。

さっきまではどれだけ叫んでも聞こえなかった、もしくは無視されていたのに。

しかし、さっきの少女はどこにいるのか。


「うん、聞こえるよ!あの、あなたはどこにいるの?」


答える事を一瞬ためらう。

しかし、状況の把握のためには恐怖に打ち勝って動かなければならない。


(、、、分からない。身体の感覚が無い)


「、、、何だか頭の中に直接話しかけられている感じ。もしかして私の中に迷い込んだ精霊さんなのでは?」


綺麗な手が顔に近付く。

感覚は無いが触られているようだ。


(まさか、、、)


一応有名私大出身だ。

頭の回転はそんなに遅くない。


(俺はこの子の中にいるのか!?)


「ええええーっ!本当に精霊さんだったの!?」


自分の状況すら分からないので精霊なのかも分からない。

しかし、これはただ事ではない。

人が人の中に生きる事などあり得るのか。

そもそも、自分は豚肉を喉に詰まらせて死んでしまったではないか。

という事はここは死後の世界?


(死後の世界っぽくは無いな、、、)


山の中にいるのか、木々が生い茂り川のせせらぎも聞こえる。

他に人はいないのだろうか。


(君は何者なんだ?悪いが先に教えてほしい)


自分の事を先に語らないのは失礼だとは思いつつ、状況整理を優先する。


「良いでしょう!私はハミュリカ!聖女だよ!」


(聖女?)


「えへへ〜、この国に三十五人しかいない貴重な存在なんだよ〜」


聖女。

そういうファンタジーな世界なのか。

つまりここは元いた世界とは違う世界。

異世界なのか。


(三十五人って、、、割といるな)


人口にもよるが、聖女という響きの割にはぞろぞろいるようだ。


「まぁ、聖女の中でも一番の落ちこぼれなんだけどね。それはさておき!」


都合の悪い事はさておくのか。


「あなたの名前を聞いてないよね!ささ、名乗っちゃってよ!」


この世界でこれまでの名前を名乗って良いのだろうか。

ハミュリカという名前が偽名でないなら、日本風の名前は違和感を持たれるような世界なのかもしれない。

何と名乗ろうか。

いや、、、しばらくはこの子の身体から出られないだろう。

それなら。


(今、俺には名前が無い。君が名付けてくれないか?)


ハミュリカは俺を痛めつけた恐ろしい存在。

生きたまま咀嚼され、身体に吸収された、、、と思われる。

しかし、ここでハミュリカを拒絶してもどうしようも無い。

可能な限り歩み寄り、状況を詳しく知る。

そのための第一歩として、名前を付けてもらおう。


「うーん、そうだなぁー」


近くの川が鏡となって考え込むハミュリカを映し出す。

金色のロングヘアーと同じ色の瞳。

年齢は十代後半くらいだろう。

思いついたのか、はっと顔を上げる。


「ポーキンス!あなたの名前はポーキンスにしようっ!」


ポーキンス。

この世界ではこれが普通なのだろうか。

現代日本に住んでいた者の感性からするとあまり馴染まないが。


(分かった。今日から俺はポーキンスだ。しばらく君の中でお世話になっても良いか?)


「もちろん!お話の相手が欲しかったんだー!」


楽観的な聖女ハミュリカ。

死後、聖女がいる世界にいる理由。

巨人、、、と言うより自分が小さかったのだろうが、ハミュリカに食べられた理由。

そしてハミュリカと一心同体となった理由。

まだ何も分からない。


(これからゆっくり調べていくしかないか)




(なぁハミュリカ)


「なぁに?」


川沿いをゆっくりと歩き、下山する。

大きなリュックを背負っているのに足取りは軽やかだ。


(聖女って具体的に何がすごいんだ?他の人とどう違うんだ?)


聖女はのんびり答える。


「生まれつき魔力がいっぱいある人の事だよ!普通の人の何百倍も!」


ぽわぽわした雰囲気のハミュリカだが、かなりすごい才能を持っているらしい。

魔力があるという事は魔法や魔術の類があるような世界なのだろう。


「でも私は魔法上手くないんだー。魔力の量はあるんだけど、コントロール出来ないから」


(なるほど、だから落ちこぼれって言われているのか)


「聖女は担当の地域で国民を助けるのが仕事なんだけど、私はどこも担当させてもらってないの!だから旅をしながら国民を助ける事にしたんだよ!」


実力が伴っているかはともかく、志や意欲は素晴らしい。


(そう言えば)


現在の状況についてはある程度分かってきた。

次はハミュリカが巨人のように見えていた時の事。


(最後に食べた物って何か覚えているか?)


「何でそんな事知りたいの?えーっと、肉の盛り合わせだったかなー?」


確か好きな物は最後に食べると言っていた。


(最後の最後に食べたのは?好きな物は最後に食べる派なんだろ?)


ハミュリカは楽しげに答える。


「最後は焼き豚!鳥とかトカゲよりも豚肉が好きなの!」


、、、豚肉。

偶然なのだろうか。

死因は豚肉を喉に詰まらせた事による窒息死。

生まれ変わって、豚肉になって、食べられた。


(はは、やっぱりひどいな)


もはや乾いた笑いしか出ない。

勇者とか、魔王とか、ドラゴンとか、そんな格好良い存在ではなく、肉。

しかもすぐに食べられた。


「ポーキンス、どうかした?」


心の声もある程度勝手に聞こえてしまうらしく、ハミュリカが不思議そうに尋ねる。

最後に食べた物を聞いたと思ったら、急に落ち込む。

この子じゃなくても訳が分からないだろう。


(、、、いや、何でもないんだ。それよりも、ハミュリカは今どこに向かってるんだ?)


心優しいこの子ならきっと、境遇を話せば同情し、慰めてくれるだろう。

食べた事を謝るかもしれない。

だが、そんな心配はかけたくない。

知らない方が幸せに過ごせる。


「近くの町だよ。大体は町を巡って魔力を込めたお水を配ってるんだー。魔力を込めるだけなら私でも出来るし、飲んだら元気になるから!」


ハミュリカなりに出来る事を探して実行しているらしい。

この子を落ちこぼれだという人達は見る目が無いのだろう。


(俺は何も出来ないかもしれないけど、応援してるぞ)


「ありがとう!やっぱり精霊さんは頼りになるなぁー」


騙すみたいになってしまって申し訳ないが聖女の身体に偶然迷い込んだ精霊という事にしておこう。




「魔力を込めたお水だよー!飲むと元気になっちゃうよー!」


ハミュリカは小さな町の中心の広場で呼びかける。

道は舗装されているし、住民の服装も凝っている。

予想以上に近代的な世界だ。


「何だ、ハミュリカ様じゃないか」


「えー、ルルハ様が良かったなー」


「こら、贅沢言わないの。来てくれるだけでもありがたいんだから」


あまり歓迎ムードではないようだ。

落ちこぼれと言われているから仕方ないのかもしれないが、それでも聞こえる場所で言うのはどうかと思う。


「はい、どうぞー!はい!まだあるよー!はい、どうぞ!」


ハミュリカはあまり気にしていないのか、にこやかに魔力を込めた水を渡していく。

リュックに入っていたのは大量の瓶だった。

もしかして、川の近くにいたのは水を汲むためだったのだろうか?

そうなると、大きなリュックに水が入った瓶を何十本も入れて歩いてきた事になる。

聖女は身体能力が一般人より高いのだろうが、それにしたって大変だったに違いない。


「ありがとうねー」


「はいこれ、空の」


「ありがとう!えーっと、あと五十七本だね」


空になった瓶を手渡される。

前にハミュリカが来た時に渡した物だろう。

各地を旅しながら水を配り歩く。

それも、瓶の数を管理しながら。


(紙に書かなくても覚えてるのか?)


「うん!あんまり仕事が無いんだから、このくらい覚えなくちゃ!」


ハミュリカはあまり誇らずに言った。


「はい!回収確認完了!みんなありがとーう!」


「はっ、水配ってるだけだろ、苦労もしちゃいないくせに」


心無い声が聞こえる。

近くの中年男性が言った。

周りにいる者も失礼な発言を注意しようとはしない。


(あいつら、、、ハミュリカはちゃんと頑張ってるのに!)


もし自分の身体があれば掴みかかっていたかもしれない。


「良いんだよ、ポーキンス。聖女なのにこれしか出来ない私が悪いんだから」


ハミュリカは気にしていない訳ではなかった。

言葉の意味を分かった上で、自分に責任があると考えているから何も言い返さず、笑って流していたのだ。


(君は優しいな)


「そうなのかな?でも、そうなら良いなって思う!」


決して汚れない綺麗な心。

ハミュリカはそれを持っている。




「それじゃあ、しゅっぱーつ!」


全ての空瓶を巨大なリュックに詰め終わると、元気な聖女は町を出て山に戻る。

お見送りのような物は無い。

人柄よりも魔法の実力が評価において重要であるようだ。

間違いなくハミュリカの人格は善良で、好かれるタイプだと思うが、この世界ではそうも行かないのか。

悲しい事に、この子もそれに慣れてしまっている。


「ポーキンス、次行く町では食べ物を買うよ!この辺りでは一番安いから!」


一人旅をするハミュリカ。

安さを気にしなければならないくらいお金に困っているのだろうか。

貴重な聖女に補助金くらいあげても良いではないか。


(お金って支給され)


「ちょっと待って」


ハミュリカに遮られる。

急いで木の陰に隠れた。


(、、、どうした?)


「あれだよ」


視線の先、少し遠くには大きな、、、モンスター。

魔法があるような世界、モンスターのような存在もいるのは納得出来る。

モンスターは高さ二、五メートルくらいで、非常に長いツメを持っている。

全体的に茶色っぽいが頭や背中に赤い毛が生えている。


「フォンクっていう、凶暴なモンスターなの。あのおっきなツメで獲物を切り裂いてから食べちゃうんだよ」


(恐ろしい、、、。見つからないようにしないとな)


フォンクは長いツメを使って山の木々を切り倒しながら進んでいく。

シルエットはクマに近いかもしれないが、顔の形はネコ科の猛獣に似ている。


「このまま進んだらさっきの町に行っちゃうね」


ハミュリカはゆっくり立ち上がると遠ざかるフォンクの背中を見つめる。


(おいおい、ハミュリカ。何するつもりだ?)


「戻るよ」


この子の性格ならこうする事はもう分かっていた。

それでも。


(やめろハミュリカ!君は魔法を使えないんだろ!?何か戦う方法があるのか?俺は君を見殺しになんてしたくないぞ!)


魔法無しで勝てるような相手では無いだろう。

もしくは魔法以外の攻撃手段でもあるのか?


「魔法が使えるかどうかなんて関係ないよ!助けたい時は助けなくちゃ!」


走り出したハミュリカを止める手段は無い。

ハミュリカと一心同体たる肉なのだから。

止められないのならば舵を取るしかない。


(魔法以外に戦いに使えそうな技術はあるか?)


「食べるのは得意だよ!」


走りながら聖女は自信を持って答える。

残念ながら今回はその特技を活かせそうに無い。


「でも勝てそう!ポーキンスと会ってからすっごく調子良いから!水に魔力を込める時も、いつもより早く終わったし!」


そう言えば、何だかいつもより元気な気がする、とも言っていた。

一つの可能性が浮かび上がってきた。


(もし俺がただの豚肉じゃなかったとしたら、、、)


「豚肉?何の事?」


そろそろ山が終わり、町が始まる。


(いや、気にするな。それよりも試してほしい事がある)




「うわぁっ!?フォンクが何で町に!?」


「発情期だ!発情期のフォンクは興奮して山と町の境が分からなくなる時があるんだ!」


「おーい!フォンクが出たぞぉぉぉぉっ!逃げろぉぉぉぉっ!」


町の住民達は速やかに避難を始める。

町の入口でツメを振り回すフォンク。

何人かの若い男がモンスターの前に立ち塞がる。


「サンダーショット!」


「ファイアニードル!」


電気の弾が発射されるが、大きなツメで容易く防がれる。

赤く燃える針が何本も大きな体躯に刺さるがあまり効いているようには見えない。


「ゴォォォォォッ!」


「つ!?」


大音量の咆哮に町民達は怯む。

長く鋭いツメが手前にいた男に振り下ろされる。


「う、うわぁぁぁぁっ!?」




男は恐る恐る目を開ける。

来ると思っていた痛みが来なかったからだ。


「大丈夫?」


「な、アンタ、、、」


ハミュリカが細い腕で凶悪なツメを受け止めていたのだ。


(無茶するな!そのまま腕が切られてたかもしれないんだぞ!)


「その時はその時だよ!」


自らを盾にして住民を守った。

よく見ると助けたのはさっきハミュリカに心無い言葉を投げかけていた男だった。

しかしハミュリカはそんな事は気にしない。


「私がこの子を山に帰すから、みんなは逃げて!」


男は一瞬躊躇したが、すぐに逃げていった。

ハミュリカは無傷。

自分より強いという事を悟って、下手に手出しせず任せた方が良いと考えたのだろう。


(ハミュリカ、魔力を発射出来るか?)


「魔力を発射?出来るけど、どうして?」


試してみたい事、それは魔法以外で膨大な魔力を活かす方法だ。

ハミュリカは魔力を水に込める事は出来ても、炎や電気、水に変える事は出来ない。

ならば、変えずにそのまま発射すれば良い。


(魔力そのものでフォンクを攻撃するんだ。もしかしたらダメージを与えられるかもしれない)


炎や水に形が変わろうと、結局は魔力をぶつけている。

魔力をぶつけるという行為は攻撃になりうるのか。

それを試しておきたい。


(今だ!)


「やーっ!」


両手を前に突き出し、掌から半透明の白いエネルギー弾を発射した。

かなり速度があるのでフォンクも簡単には避けられない。


「ゴォウ!?」


右肘の辺りに当たった。

僅かだが、ダメージを受けているような素振りを見せた。


(よし!これなら使える!ハミュリカ!同じように発射していくんだ!)


「分かった!」


魔力が吸収されて逆効果、なんて事にならなくて良かった。

聖女なので魔力量は膨大。

効率は悪いのだろうが、物量で押し切る!


「やっ!ほっ!えいっ!」


いまいち締まらないかけ声と共に魔力弾を発射していく聖女様。

長いツメを防御に使っても、防ぎ切れない。


「いつもよりいっぱい魔力が使えてるかも!」


もう一つの仮説。

自分が転生したのはただの豚肉ではなく。


(食べた者をパワーアップさせる豚肉!)


そう、ハミュリカは何度も言っていた。

いつもより元気、調子が良い、いっぱい魔力が使える。

フォンクのツメにも無傷。

それは豚肉ポーキンスを食べた時から。


「最後は特大をあげちゃうよ!」


これまでの十倍近くの魔力を弾にしていく。

食らえばフォンクの身体にトンネルが開通するかもしれない。


「グォッ」


(撃て!)


放たれた魔力弾は。


(おい、どうした?)


フォンクの手前、道路にぶつかった。

舗装された道路の破片が散らばるが、フォンクはその程度では傷つかない。


「えへへ、やりすぎる所だったよ」


フォンクは怯えているようだ。

無理も無い、間違って人里に下りてきてしまったら、立て続けに攻撃を受けたのだ。

ハミュリカはそんなフォンクをこれ以上傷つける事をやめた。


(そうか、、、確かに君はこの子を山に帰すって言っていたな)


ハミュリカはフォンクの方へ歩いていく。


「びっくりさせてごめんね?ここはあなたの来る場所じゃないからお家に帰ってほしいの」


傷つける意思は無いと両手を上げて近付く。


「おい、危ないぞ!」


後ろの方から微かに声が聞こえる。

だがハミュリカはお構い無しだ。


「ガオルル!」


「ケガ、治してあげる。大丈夫、今度は絶対に傷つけないから」


ハミュリカはフォンクを優しく撫でる。

フォンクの方も攻撃せず、じっとしたままだ。

撫でると同時に魔力を流し込み、傷を癒していく。

さっきまでの攻撃のための魔力とは違う。

優しく相手を癒す魔力だ。


「ゴゥゥル!」


嬉しそうに吠えたフォンクは山に帰っていった。


(やっぱり、君は優しいな)




「全く、道路をこんなにして!きちんと直してもらいますからね!」


「はぅい、、、」


反省モードのハミュリカ。

どの世界でも奥様は強いらしい。


(咄嗟の事だったんだ、仕方ないさ)


「でも、これじゃあ食べ物を買いに行けないね、、、」


「聖女様。直るまではこの町にいてもらいますからね。だから是非ウチに泊まって下さいな」


「え!?良いの!?」


あまり歓迎されていないハミュリカにとってはかなり驚きの出来事だ。


「旦那の命を助けてもらいましたからね、そのくらいは当然ですよ」


(お言葉に甘えたらどうだ?)


「うん!泊めてもらう事にする!ありがとう!」


「ほら、アンタも!」


そう言えば、旦那、、、という事は。


「あの、聖女様」


ハミュリカに心無い言葉を投げかけていた、そして先程フォンクに襲われかけていた中年男性だ。


「その、悪かったな。失礼な事を言っちまって。それに、命まで助けてもらって」


その言葉にハミュリカは笑顔で返す。

それが当然と言うかのように。


「良いの!聖女は人を助けるためにいるんだから!」




力ある豚肉となり、聖女に食べられた男。

その名はポーキンス。


(聖女ハミュリカ。必ず君の力になってみせるよ。だから、これからもよろしく)


「私こそよろしくね、ポーキンス!」


誰よりも優しい心を持つ聖女ハミュリカを内から支え、共に世界をジグザクと巡る者だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  冒頭から速攻で主人公が命を落としたため、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を受けました。  豚肉に転生した後も、聖女に食べられてしまう衝撃展開。  あまりにもハイスピードで物語が進んでいっ…
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