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6.護衛騎士、ジェラルド

 そんな感じのことがあって、その後もまあ色々あって。


 そんなわけで、魔力を見事開花させた殿下は誰にも文句を言わせぬ立派な王位継承権第一位になりました。めでたしめでたし。




 ……なんだけど、そんなお祝いムードにも水が差されちまったのが今、ってワケ。


 ゴツい顎髭の先輩は仁王立ちでオレを睨んでいた。


「……ジェラルド。実はだな、お前に実務経験を積ませないまま、アルバート様……いや、王太子殿下の護衛に就かせてしまったことについて、王立騎士団で物議がされていてだな」

「はあ?」

「やはり王太子殿下の護衛は経験豊富なベテラン騎士のほうが良いだろうと。お前は転移魔法の使い手でもあるから護衛役としては適任ではあるのだがなあ。しかし、やはり、こういう護衛というのは経験がものをいうのだ」


 何言ってんだ、コイツ。

 魔術学園成績トップ、王立騎士団首席合格のこのオレを嫌がらせで『落ちこぼれの王子さま』の護衛役にさせたのはアンタらじゃん。


 それを? 殿下が? 見事に才能開花させたから??


 王太子殿下の護衛にはもっとふさわしい人物がいるって?


 ……ナメすぎじゃない?


「言いたいことはわかりましたよ。オレじゃ実力不足っていうんでしょ」

「そうだ」

「じゃー、話は早い。オレ以外の護衛候補の人連れてきてくださいよ、タイマンしましょう。タイマン」


「なっ」


 ゴツいわりには情けなく先輩は目を見開く。


「最後にモノを言うのは拳でしょ?」


 にいっとオレは白い歯を見せて爽やかに笑ってみせる。


「あーあ。でもぉ、オレ以外にいんのかなあ? 何回転移魔法使っても魔力切れ起こさなくなって、戦闘も得意で、機転も効いて、気も利いて、イケメンで殿下にもめちゃくちゃ懐かれるような完璧な護衛騎士さんなんて」


「お、お前! くそっ、ジェラルド! 貴様、まだ入団したてだろう、なんて生意気な口を……やはり貴様では殿下の護衛はふさわしくない! 代われ!」

「はいはい。殿下の護衛の最終決定権は国王陛下にありますからねー、オレや王立騎士さんの偉い人が一生懸命言ったって、最終的に決めるのは〜! 国・王・陛・下、ですからねー」


 オレはべーっと舌を出してやる。中年オッサンの先輩はわかりやすくぐぬぬ、と歯を噛み締めていた。


「……いいだろうっ。殿下の護衛の件以外にも、ジェラルド! 貴様のその騎士としてふさわしくない浮ついた態度は気に掛かっていたんだ! その根性、叩き直してやる!」


 オレさあ、あんまり他人にイライラとかしないんだよね。


 だって、オレ、自分がすごい奴だからさ。大抵のことはどうでもいいんだ、オレ、自分の身の回りのことは大体全部なんでもできるし。生まれた時からずっと嫉妬とか慣れてるし、一方的な悪意をぶつけられることなんかいくらでもあったから「あ、そういうもんなのね」って、なんでこの人達がこういうことをするのか、オレのことをどう思うのかとか、理解(わか)るからさ、別にどうとも思わない。


 でも、久しぶりになんか今オレ、イライラしてた。


(……殿下は、自分が生まれ持った素質のことを受け入れて、最大限努力していた)


 それをさ、何? 偉そうで傲慢? そりゃ殿下は果てが見えないほど偉そうだけど。でも、そうしないと今よりももっと舐められるからじゃん。国王陛下の一人息子っていう自分の価値をこれ以上落とさないように頑張ってああだったんだよ。


 殿下はすっげー運がよくて、なんか急に魔力覚醒したけど、それってただの偶然なんだよ、殿下は自分がしょぼい魔力しか持ってないって認めて、受け入れて、その上でこれしかない魔力でもなんとかできるようにって努力してたんだよ。

 魔力がぶわーって沸いてきたのは殿下も想定外のラッキーなんだよ、最初っから殿下はンなもん頼りにしてなかったんだっつーの。


 それを、なに? 殿下を『ハズレの王子』ってバカにしてた奴らがワラワラと。は? そんな奴らが殿下の護衛務まる? ちゃんと殿下についていけんの? この大天才のオレですらあの人についていくのは大変だってのにさ!


「……オレのご主人様のこと、バカにしてんじゃねーよ!」


 オレに向かって駆けてくる先輩、その拳をヒラリと避けて、カウンターをお見舞いした。




 こんなタイマンなんか、最終的な人事にはマジ関係ないんだけどさ。

 ずっとジメジメチクチク色々言われて圧かけられ続けるのも癪だし。


 嫌な先輩ぱーっとぶっ飛ばせてスカッとした。



 ◆


「……護衛を名乗るのであれば、最低限俺よりも強い男でなくてはな!」

「私も、君であれば安心して息子を任せられるよ。ジェラルド」


「はい。もう二度と、あの日のように殿下を見失うという失態はしません。更なる忠誠を誓います。改めまして、今後とも何卒よろしくお願いいたします」


 ふんぞりかえる殿下。

 非常に柔和な微笑みを浮かべるジオルグ国王陛下。


 ……並んでるとマジで似てるのは髪の毛の色と顔の輪郭だけだな、この親子……。

 マジで殿下はどこでそんなに偉そうな表情を覚えてきたんだ……?

 妃殿下も大体いつも穏やかな顔してるよな……? なんで……?


 もうナメられることもないだろうに、殿下は相変わらず偉そうなお坊ちゃんだった。生まれ持った性格かなあ、これは。うんうん、まっ、殿下はそこがまたかわいいんだけどね!


 ともあれ、オレは無事にアルバート王子殿下の護衛を続投できることになったのだった。

 やったね!

 ついでに先輩との個人的なタイマンも、オレの過失じゃなくて先輩のパワハラによる正当防衛って認められたよ、やったね!


 改めて任命を受けた王の間から、殿下と一緒に退室する。


 殿下のマント下からはジャラジャラと音がしていた。


 ……待って、どんだけぶら下げてんの、今。

 すげーうるさい。


 魔力増えたの喜びすぎじゃない、はしゃぎすぎじゃない。次抱っこしたとき死ぬほど重そうなんだけど。

 殿下、結構急に「疲れた。運べ」とか言うからなー! 年相応ですけど!


(……)


 はー、おっかしいな。

 あんな情けねえチャラチャラじゃなくって、頼もしくていかつい音になったってのに、なんでかオレの涙腺はいまだに緩むのだった。




 ◆

 ◆

 ◆

  

「うっわ、毎日見てるから気づかなかったけど、殿下。マジで背ぇ伸びましたね!」

「ふん、そのうち追い越す」

「えぇ? 嘘でしょ、オレより背ぇ高くっていったらさ、190センチくらいになんじゃん。殿下のそのツラでそんなんになったら怖すぎ。今のくらいがいいっすよ」


 そんなやりとりをしていたオレ達だけど、その後、殿下は180センチを越したくらいで猛成長は落ち着いたようだった。うんうん、それでよろしい。オレよりちょっとちっちゃいくらいでいてくれ。


 殿下と出会って、もうかれこれ八年か。


 ――今年、殿下は十六歳になる。魔術学園に入学する年だ。


 王太子に選ばれた男子は魔術学園でお嫁さん、将来のお妃候補を見つけるのがしきたりになっている。


 殿下はオレから見ても超カッコいい男の子に育っていた。やっぱり顔と態度は偉そうだけど。それを差し引いても絶対モテる。殿下、優しいし。いい子がいるといいんだけどな。




「……さて、殿下はどんな子をお嫁さんに選んでくるかねえ……」


 さすがに工房の連中みたいにじじい視点じゃないけど、殿下の頼れるお兄さんポジのオレとしてはちょっと楽しみだ。殿下はどんな女の子のことを好きになるんだろう。どんな子を殿下が選んだとしても、殿下はすっごい優しい人だからどういうタイプの子でもまあ大丈夫だろう。


(めちゃくちゃかわいいに全振りしてる子だったら好み分かりやすすぎて笑っちゃうけどな~。殿下絶対かわいい系好きだもんな、あんな顔して)


 なーんて俺は、殿下が連れてくる未来のお妃様に思いを馳せるのだった。

以上で番外編、チャラチャラしてた時の殿下のお話終了です!

最後までお付き合いありがとうございました。


サクサク進行でしたが書いていてとても楽しかったです。

ちなみに殿下はどちらかと言うとママ似です。パパは王としてはちょっと優しすぎるくらいの人です(殿下は父親をとても尊敬しています) 


◆コミカライズも連載中です。ぜひぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

次の月曜日の更新で1話の最後まで更新されますが原作既読勢みんな「あっ』ってなるやつなのでぜひ…!


また何か書けたら更新すると思いますので、またぜひお会いできましたら幸いです!

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