作者目線で「いいね機能」について語りたい
今更ながら、小説家になろうに追加されました新機能「いいね!」について語りたいと思います。
既に皆さんおなじみ……くらいの立場にはなっていますかね? この「いいね機能」は。
知らん、という方のために説明しますと、2022年2月より実装された機能であり、今までは各作品単位でしか評価できなかったのですが、この「いいね」は各話ごとに評価できるというシステムです。
短編でも長編でも各話の下の方にあるサムズアップマークを押すことで「今読んだ話に限定した」投票ができるというシステムですね。
とまあ、今まではなかったより細かい評価ができるという点では斬新なのですが……とある理由により、この「いいね機能」は「この機能何のためにあるの?」と疑問を持たれる仕様になっています。
まず、評価ができるとはいっても既存の☆☆☆☆☆の数で評価するそれとは異なり、この「いいね」はいくらやっても小説家になろう内で公表されている「総合評価」には全く影響を与えません。
ちなみに、説明するまでもないとは思いますが、総合評価とはランキングに乗るために参照されるもので、総合評価=作品の人気と知名度と言っても過言ではありません。
計算方法は各作品の下にある☆評価一つにつき2ポイントで最大10ポイント。それにプラスしてブクマ一つにつき2ポイントが加算されるため、一人最大12ポイントお気に入りの作品へ投票することができるシステムですね。
なろう作家にとって、このポイントを如何に集めるかが当面の目標と言えるでしょう。読者方からの客観的な評価そのものであるとともに、ポイントの低い作品はランキングというもっとも読者の目を集める場所に参加することができず、結果作品の良し悪しに関わらず誰からも見られないという悲しい結末に終わってしまいますので。
そんな総合評価に、この「いいね機能」は全く影響を与えない。つまりいくらもらっても感情的な面は無視してシステム的に考えると「だからなに?」状態になるというか、逆に読者方がいいねの方を押すだけで満足して点が入る評価の方をしてくれなくなるんじゃないかとかそんな心配をされてしまうわけです。
それでも「いいね」がいっぱいもらえていれば面白い作品なんだと客寄せにはなるんじゃないか……と言いたいところですが、なんとこの「いいね機能」による投票数は完全非公開なのです。
各作品の何話に対していくつの「いいね」が入ったのか……ということがわかるのは作者本人のみ。外からは全く分かりませんので、客寄せの効果も全く期待できないということになります。
という仕様を踏まえまして「この機能何のためにあるの?」という当初の疑問が生まれてしまうわけです。
正直いいねの数くらいは公表しても別にいいと思うんですが……各話に投票できるという特性上、単純に話数が多い方が有利になることを懸念されているのかもしれませんね。
ランキングと同じノリでいいねの多い話を読むって風潮ができた場合、まず長編と短編で不公平極まりないことになります。そりゃ一人につき「1いいね」しかできない短編と、話数分だけいいねできる長編で数比べすれば長編が勝つに決まっているでしょうし、そんな不公平を生まないための処置と考えれば仕方が無いことです。
また、少しでも有利になるためにとにかく一話当たりの文字数を減らしてその分話数を増やすという悪しき文化を生み出すきっかけにもなりかねませんね。
今でさえ更新頻度を上げるために一話1000文字くらいで投稿しまくり、ほとんど話が動かないぶつ切り連投になって連載を追うのがきついって作品が結構あるのに、更にエスカレートして一話200文字の連載小説とか生まれかねませんから。
ちなみに、このエッセイはここまでで大体1500字になります。エッセイですのでそれなりに情報詰め込めていますが、これが普通の物語ならちょっとしたバトル描写とか心理描写入れただけで1000~2000字くらいはあっというまに埋まります。
一言しゃべって周りがリアクションしてまた明日~みたいなのを繰り返され、結局さほど長いわけでも重要なわけでもない会話が終わるまで一週間かかりますとか言われると、読む側としてはイラっとしません?
なんて問題を危惧するための「いいね数非公開仕様」なのではないかと私は勝手に思っております。
で、その結果「いいね」機能は完全なる作者側の自己満足。もらえると嬉しいなと一人で喜んでそこから一切発展のない機能となっているのが現状だと思います。
つまり、この機能をどう生かすかは我々作者サイドの気持ち次第、とも言えるわけです。
自分にしか見られず、宣伝目的としては何の役にも立たない。それを踏まえたうえで生かすも殺すも自分次第、とかいうと何とか面白い使い方ないかなと考えてみたくなりません?
と、いうわけで二つほど考えてみましたので、私なりの「いいね機能」の活用法をご紹介することを本エッセイの本題とさせていただこうと思います。
1.読者の好みの傾向を知れる!
2.連載における最新話が読まれているかを知れる!
という二つの点から見ていきます。
1.読者の好みの傾向を知れる!
当たり前の話ですが、一口に「読者」と言っても好みの傾向は多種多様です。
中にはとにかくハッタリの効いたド派手な演出を好む者もいれば、逆にリアリティ重視の緻密な演出を好む人もいるでしょう。人と人の会話劇が好きな人もいれば地の文多めのスタイルが好みの人もおり、シリアスな緊張感のある雰囲気が好きな人もいれば軽いギャグな空気を求めている人もいます。
さて、では我々作者はそのどれに合わせればいいのでしょうか?
なんて考えても答えが出るはずがありません。いつどんな価値観の読者が読みに来るか、なんてネット投稿でわかるわけがないので。
しかし、この「いいね機能」を使うとある程度傾向が見えるかもしれません。
もちろん新規読者がどうなるかは未知数ですが、既にそれなりのファンが付いている長編小説ならば『どの話に多くのいいねが付いたか』を分析することは可能かもしれません。
一番人気の話はどんな傾向であったのか、どんな内容だったのか。それを見ていけば『自分の作品のファンが望んでいる方向性』がぼんやりと見えてくる、という可能性があります。
……なんかさっきから「かもしれない」とか「可能性がある」とか曖昧な言い方してるな、と感じているかもしれませんが、その理由はシンプルに「全読者がいいね機能を使っているわけではない」からです。
まあ要するに、少数のいいね機能を活用している方々の意見しか拾えないので、このエッセイの主張を真に受けてマニアックな方向に舵を切って座礁しても責任を持てませぬって話ですね。
とはいえ、いくら氷山の一角だろうがこの小説家になろうにおいては入手することが困難な『第三者の意見』であることに変わりはありませんので、自作のどの話が読者受けがいいのかという参考にするのは悪くないことだと思います。
ちなみに、その一環というわけではないですが、つい先日私は
『「婚約破棄されたら隣国の皇子様に求婚された」って事らしいんだけどお前らどう思う?』
という短編を前後編に分けて投稿しました。別に分けなきゃいけないほど文字数多いわけでもなかったんですが、このエッセイのネタに使えそうだったのでそんな形で投稿してみました。
内容はどうぞ読んでください(ダイマ)なのですが、ざっくりいうと前編はコテコテの何のひねりもないテンプレ婚約破棄ざまぁもの。そして後編はそんな前編を全否定するような内容になっています。
要するに、前編と後編で受ける印象ががらりと変わるようなものを目指したつもりなのです。
日曜日の夜に投稿して現在は木曜日の夜ですので、集計期間としてざっと4日経過している計算になりますね。
その間に頂いた「いいね」数は前編が『15いいね』後編が『115いいね』となっております(2022/6/9時点)。
それを証明することは非公開制度によりできないのですが、まあ嘘つく必要はないのでこれを真実として話を続けます。正直私もこのいいね制度ができてから投稿したのこの一本だけで、他の方のデータは見られないのでこの分布が平均的なものなのか異常なものなのか、多いのか少ないのかはわかりません。
なので客観的なデータとしては全く持って信用できないこの数字を見てみると……まあ圧倒的に後編の方が多いのがわかりますね。文字通りの桁違いです。
そこから見るに、私の投稿作品を見に来てくださる方々は前編的なテンプレものよりも後編のようなアンチテンプレな内容を好んでいるのかなーと、そんな分析ができるのかもしれません。
……また曖昧な言い方で逃げてるとお思いでしょうが、実はこのいいね数で読者の好みを把握しよう作戦、一つ巨大な欠点があるんですよね。
いいねしない人の意見を取りこぼすという問題以外にも、重大な欠陥として……『いいねは最終話に偏る』という傾向があるんですよ。
まあいいねと投票する側に立って考えれば当然の話なのですが、楽しんで読んでいればいるほど早く続きを読みたいものです。なのに一々この話はよかったからいいねしておこう~みたいな几帳面な方は結構レアなのだと思います。
大半の方は全部読んでから「面白かったからいいねしておこ」と最後に一つだけボタンを押す、つまり最終話にのみ「いいね」していくケースが多いのではないかと薄々感じている次第です。
実際、いいね機能実装前より長期放置してアクセス数が減っている長期連載や完結済みの連載の方でも、いいねは最後の一話に偏る傾向が見られますし。
まあ、初めからいいね制度がある状態から長期連載を始めた、ということなら全ての話においてある程度は対等になるかもしれませんが、投稿に時間が空くなど最新話である時間が長い話にいいねが溜まることでデータにブレが生じることは留意してください。
なので、正直なところ前後編しかない短編はこの説の例としては微妙だったかなーなんて思いつつ、これしかサンプルがなかったんだから仕方がないと自分に諦めて最後に結論を。
『いいねの集まる話で読者の期待、好みの傾向を読み取ることができるかもしれない。ただし最新話は多くのいいねが集まる傾向があるので注意』
ということで、いいね機能活用法の一つ目を終了します。
2.連載における最新話が読まれているかを知れる!
次の話は長編限定であり、『投稿した最新話に対する評価がわかる』というものです。
たぶん、いいね機能を実装した狙いはこっちなのではないかと私は思っているのですが、いいね機能が実装される前に読者側からできるアクションは『作品そのものに対して』評価やブクマをすることだけでした。
これが更新された最新話に対して応援をしようと思えば感想を書く、というワンクリックではできない結構な手間をかけるしかなかったわけです。
そして、☆の評価もブクマも一人一回だけです。その気になればアカウント分身の術でいくらでも増やせる……なんて考えは規約違反ですのでNGとして、一度評価した作品にはそれ以上の応援は感想を書くかレビューを書くくらいしか手段がなかったわけです。
感想を書くのって文章を書き慣れていないと結構手間ですし、もし書いたことが意図しない方向に伝わって不快にさせたら……とか考えちゃう人も多いと思いますし中々ハードルが高いことでしょう。
つまり、一度評価した作品が続いていったとしても、もう作者の方へ応援していることを伝えることが困難だったということです。
作者の立場で言えば、更新したけどブクマも評価も増えない~なんて時「本当に最新話は読んで貰えているんだろうか?」みたいな不安に陥るわけですね。アクセス解析で部分別アクセスを見れば最新話が開かれた回数はわかりますが、それも見られた回数がわかるだけで既存の読者に受けたのかどうかはわかりませんし。
その点で言えばこの「いいね機能」は非常に頼りになる存在です。ただアクセスされた、ではなく明確に応援されていることが伝わるわけですからモチベーションのアップには非常に有効だと言えるでしょう。
まとめますと、
『読者からすれば、感想を書くよりも手軽に読んで応援していることを作者に伝えることができる。作者からすれば、今まで応援はしてくれていても届いていなかった読者から意思を受け取ることができる』
ということです。
点数云々ではなく作者と読者の交流という観点から見ると、この「いいね機能」は画期的なシステムであると思います。
……まあ、こんなことを書くと「じゃあ投稿してもいいねして貰えない自分の作品は誰からも応援されていないってことか?」とブルーになってしまう作者勢もいるかもしれませんが……別に全読者が「いいね」と押しているわけではないですから、そんなときはいいねすることにも躊躇するシャイな方々が自分の読者層だということにしましょう!
と、言うところで今更の「いいね」についてのエッセイを終了いたします。
もう実装されて四ヶ月くらいになりますが、皆さんはこの機能活用していますかね?
作者的には自分の今歩いている道が本当に正しいのか、という不安を払う一助になり得る可能性があるものですので、面白いと思える作品に出会えましたら是非「いいね」してあげてください。
以上!
他にも皆様方が「こんな風にいいね機能を楽しんでいる」みたいなのがあれば是非教えてください。
また、2の説の実証を行うべく明日より以下の長編連載を再開しますので、是非こちらも見に来てください。リンクも張ってあります。
魔王道―千年前の魔王が復活したら最弱魔物のコボルトだったが、知識経験に衰え無し。神と正義の名の下にやりたい放題している人間共を躾けてやるとしよう
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