第1話
「あ~あ、今日もクソめんどくせぇ何の代わり映えもしねぇ一日だったなぁ。何か面白ぇことでも起きねぇかねぇ。」
あたしの名前は樋口紅葉、どこにでもいるふっつーの女子高生だ。いや、あたしは別になんとも思わないけど他人からしちゃあ普通じゃないかもしれん。なぜかって?そりゃあ、あたしん家が組、所謂カタギじゃねえってことだ。だが、確かにうちはカタギじゃねぇが、そこまで不真面目って訳でもねぇ。麻薬なんかの法に触れるようなことにゃ、一切手を出してねぇからな。あたしの知る限りはだけど。まぁあたしが知らなくてもウチのじじぃが黙ってるわけねぇけどな。じじぃはもう還暦越えてんのに、そうは思えねぇぐらいピンピンしてやがる。あんなん夜道でバッタリ会ったもんなら、気絶しちまうわ。もう慣れたあたしでもたまにびっくりするんだからな。って、誰に話してんだか。
あ~あ、何か面白ぇことないかねぇ。
「ーーーーーーーぃ!」
「ぁん?」
「ーーーぉーーーぃ!」
「げっ!この声は。」
「おーーーい!こーよー!!」
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「やっと見つけたよ!!もうっ、どこにいたのよー。ずっと探してたんだからっ!!」
「どこってそりゃぁやっとクソだりぃ授業が終わったから帰ろうとしてたんだよ。(くっそ、めんどくさい奴に見つかっちまった。こいつはいい奴なんだが如何せんめんどいんだよなぁ。いい奴なんだけど。)」
「あー!!今私のことめんどくさいって思ったでしょー!!分かるんだからねっ。」
「い、いやぁ。ンなことねぇよ。それよりなんだ?用がねぇなら帰んぞ。」
「ちょちょちょ!!ちょっと待ってよ!!やっと見つけたって言ったでしょ!!あのねっ、こーよーってゲームとかするの?」
「ぁあ?ゲーム?あんましやんねぇかなぁ。でも最近暇してるし、面白ぇもんあんの?」
「おぉっ!!ナイスタイミング私!!あのねっ、少し前に発売されたとっっっても良いのがあるんだよ!!私がやりたくて買ってもう遊んでるんだけどスッゴく面白いんだぁ。でもねこの前くじ引きで一等賞出してね、もう一個ゲットしちゃったんだよねー。」
なるほど、確かにこいつやたらと運がいいもんなぁ。でも待てよ?この流れあんまし良くなくねぇか?なんとか、逸らさねぇと。
「へぇ、良かったじゃねぇか。でもそうか二個もあんのか。それならお前の家族にでもやったらどうだ?お前んとこめっちゃ仲良いから喜んで受け取って貰えんじゃね?」
「ちっちっち、甘い、甘いよこーよー。確かに私の家族はみんな仲良しだけど、今回のはちょっと無理かなー。」
「なんで?」
「だってみんなが好きなジャンルのゲームじゃないし、たまには私達以外と遊びなさいって言われたからねー。だからこれはこーよーとやりたいな。はいっ。」
「いやはいってお前…。持ってきてんのかよ。」
「もちろんっ。だって今を逃したら次に渡す機会って、そうそう来ないと思ってさ。私はチャンスを逃さない女なのだよっ!!だ・か・ら、はいっ受け取って。」
「お、おう。」
「はい、今受け取ったね!!確かにこーよーが受け取ったね!!返品は受け付けてないから、そこのところヨロシク!!」
「(はぁ、つい勢いに負けて受け取っちまった。まあ確かに最近ってかもうずっと暇だったし、やってみるかなぁ。それにここしばらくゲームなんかやってねぇからなぁ。)なぁ、これってオンラインとかでやる奴なのか?」
「いや?シングルプレーだよ。そうだ、このゲームならこーよーでも推しができると思うの。だから、もし推しが出来たら教えてねっ。あ!こーよー!バスが来ちゃったよ!!早く乗ろうよ。さっ、はーやーくー。」
「ちょ、おい!!推しってなんだよ!!おい!!待て、まだ話しは終わってねぇだろうがー!!!」
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はぁ、ったくなんなんだよ、渡すもんだけ渡してさっさと乗っちまいやがって。それにうちの高校結構バスを使う奴が多くて離れちまったし、あたしはゲームとかひさびさなんだからもう少し詳しい説明とかしてほしかったんだけどなぁ。んでなんだこりゃ、何かやたらとイケメンな野郎だらけだな。なになに?『あなたはとある貴族家の長女として生まれました。そこから稀代の聖女になるのも、史上最悪の悪女になるのも全てあなた次第。もちろん恋愛も。さあ、あなたはどんな人生を送るのでしょう。是非私に見せてください。私は貴女方が私の世界に訪れる日を楽しみにしています。』だぁ?なんかえらく壮大だな。だけどなるほどな、自分の行動を全て自分が選べるのか。ただし、その行動によってもたらされるものの責任は全て自分にあると。面白そうじゃねぇか。やってみる価値はありそうだな。でも、はぁ~。『推し』ねぇ。そんなもんあたしにできんのかねぇ。まぁいいや、あとは帰ってからのお楽しみって奴にしとくか。
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ガタン!!
!?何の音だ?いつの間にかあたし寝てたのか。っておい、あたし以外みんな寝てんじゃねぇか。それになんかバスん中に、いつの間にか煙がっ!!それにここどこだ?外の景色が知らねぇとこだ。これは…山…か?えらく細い道だな。ヤバイ意識が…この…煙…か。くそっ………
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『速報です。たった今入った情報によりますと本日未明。近くの山中の崖底にバスが転落しているとの通報がありました。そのバスには近くの高校に通う生徒が多数乗っていたとのこと。しかし、バスは原型をとどめておらず乗客や運転手はおそらく即死だろうとのことです。このバスの運転手は巨額の借金があり……』