52 - 山脈の終わり
誤字報告ありがとうございます!
歩いた。
朝も。
昼も。
夜...は流石に休んだけど。
山の中をどんどん突き進んで行った。
現在朝の三時。
そこで突きつけられたのは...
非情な現実だった。
「また切り立った山ですかっ!?」
今までうまーく谷に沿って低いコルを通ってきたというのに...
ここの山々高低差が激しすぎ!
北海道の山とは比べものにならないほど高いのもあるし。
流石に修羅の国北海道出身の私でもこれはキツイ。
だが安心したまえ!
人間、究極の状態に置かれると数日でも成長する!
もはや私は山マスターも同然!
...やばい。
疲れすぎてテンションおかしくなってきている。
まあテンションがおかしいのはいつものことだけど今は一段と、ね。
「らー! こんな山なんて一瞬で越えてやるぜー!」
と意気込んで避けられなさそうな絶壁に向かっていったが...
「うぅ...辛い」
半ばで力尽きる。
つらいことはさっさと終わらせるのが善だと思っているんだけれどその最中で力尽きると最悪だ。
一息つくこともできないしまだつらいこと残っているし。
例えば階段。
神社の階段とかすごく長いでしょ。
だから一息に登ってしまおうとするんだけど絶対途中で息が切れてひどい目に合うんだよ。
と、ヒイヒイ言いながらもなんとか山を越えることができた。
ら...
ずるっ
唐突にそんな音がした。
...ずる?
次の瞬間ふっと視界がブレた。
「うわあぁぁぁ――――――」
しばらく思考が停止し叫ぶことしかできない。
ぐるぐると視界が回転する。
どれくらい転がっていただろうか、体が危機を感じて体感時間がゆっくり進んだのもあるだろうけれどかなり長く落ち続ける。
すると突然ドンッという音と共に背中に衝撃が走る。
「かはっ」
痛った!
ちょ!
これはシャレにならない!
下手したら死ぬよ?
何で死んでないのか不思議だけど。
ってああ。
そうか。
こんなでっかいザックを背中に背負っているからクッションになってくれたんだ。
それに標高が高かったのもよかった。
山が雪に包まれていたからね。
運が良かったのか飛び出た岩などもなくこうして無事に落ちることができた。
まあそもそも落ちている時点で無事ではないのだけれど。
「私、運良っ!」
まさに九死に一生を得たというべき?
いやちゃんと注意してたらそもそもこんなことにはならなかったんだけど。
その後何とか起き上がる。
体中が痛いけれど致命的な損傷はしていないようだ。
ただの打撲かな。
立ち上がり前を向いたとき...
「ははっ...」
思わず口から笑いが零れてしまった。
「森だ...」
森。
平坦な森。
「山脈を越えたぞー!」
やったー!
...痛い。
◇
しかしねー。
この森も一体いつまで続くんですかねー?
体中まだ痛いんですけれども?
ぴぴぴぴぴ
すっと望遠鏡を目に当てる。
あれはなんていう鳥だろうなー。
コガラみたいな。
とバードウォッチングをしているとふとあるものが映った。
前にも見た覚えのある物。
だけれどそれとは少し違う。
前見たものは黒ずんだ灰色にそれを覆う緑。
それに比べこれは白く光り輝いている。
長かった。
実際は一週間もっ経っていないだろうけれど精神的に長かった。
山から滑り落ちた甲斐もあったものだ。
ようやく孤独から解放される。
「第一声はハローにするべきかな?」
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