12 - 狩り&探索
私、今日休みじゃないんですよね...
カーテンから光が漏れ出してくる。
その光が瞼を透かし網膜まで届くと私の意識は動き出す。
はっ!
おはようございます!
朝です!
枕元に置いてあった腕時計の針の先を見る。
長針は天辺を、短針は東南東を指している。
四時です!
朝ごはん食べたら五時から搾乳です!
って、あ。
ここ地球じゃないじゃん。
こんなに早く起きなくても良かったんだった。
ま、いいや。
この時間に起きてしまうのは生活習慣だし。
ばんっ!
窓を開ける。
先程までカーテンの隙間からチラチラと顔を覗かせているだけだった優しい太陽の日差しは自身を遮るものの消滅を確認すると勢いよく部屋の中へ舞い込み、すっかり部屋を朱く染め上げてしまった。
朝焼けだ。
太陽の位置は低く本体は山脈に隠れていて見えない。
だけれど朝の香りと光は山脈の遥か上を跳び新しい一日の来訪を知らせている。
......ごめんなさい!
こういう詩的な表現一回してみたかったんです!
「いー気持ち!」
絶好の狩り日和だね!
狩り日和とは何かと疑問詞が付くかもしれないけど気にしないで大丈夫です。
私はマタギとかじゃないから。
知識とかもそんなにないけどまあゆっくりやっていこうと思う。
あとはこの辺りの探索かな。
まだ人間を一人も見ていない。
どこにそういうコミュニティーがあるのかも調べたい。
新しく弾も買う。
20発入りの箱を。
1400円です。
昨日買ったのもまだまだ残っている。
というより3発しか使っていないから17発も残っている。
でも昨日の狩りだって20発全部使い切るつもりで買ったんだよ?
銃は素人だし。
当たらないと思ってバンバン撃つつもりでいたけど。
なんか全部当たってくれて3発で済んだ。
リローディングしないのって?
出来ないよ!
そんな知識ないもん!
銃の事何にも知らないもん!
ゼロインとかそういう知識はゲームとかでちょっと知っているけど。
でも私ゲームとかよくやる方じゃないし。
そんなものをやるお金があるんなら御飯食べに行く。
無料のゲームとかあってもそれができるほどのスペックを持ったパソコンを買うのが惜しい。
スマホ?
なにそれおいしいの?
あれでしょ?
スマート俸禄焼。
私も一応携帯は持ってたよ。
ガラケーを。
でもスマホが欲しいって思ったことはないな。
だって私みたいなお百姓さんがほしい機能って連絡機能とメモ機能くらいだもん。
あとカメラ機能?
だからガラケーで十分だった。
なんか調べものとかやりたいときはパソコンだし。
だからパソコンのスペックが第六世代core i three、4Gメモリ、464Gハードディスクとかなんだよね。
私のやりたいことならそのスペックで十分だった。
その銃のゲームは友達ん家でやったよ。
札幌の普通の大学だとみんなだいたいスマホ持ってたし。
その友達の家になんか黒い箱があってそれでゲームをやった。
四角柱の黒い箱。
友達の家には他にも平ぺったい箱とかいろいろあったけど。
閑話休題でーす。
朝シャワー浴びたら歯磨きして朝ごはん食べて狩りに行きましょう!
◇
はい。
という訳でね準備が整いましたので早速周囲の探索&狩りに行きましょうか!
移動手段は車にしようと思う。
歩いて行ってもいいんだけどあまり大きい獲物を捕ると持って帰れなくなってしまうのでピックアップにした。
小さい雌鹿とかなら解体すればリュックサックでも運べるんだけど。
昨日みたいな大きさの謎牛とかイノシシとかムースとかになるとどう頑張ろうとも一人では運べない。
ピックアップトラック 4000000円
高い。
いやこれ新品で売られていたらすごく安い方だけど。
普通あと二百万はする。
古い型のだと新車でもこれくらい買えるけど。
でもなんか燃費悪かったし。
まあ新車にしては安いといってもね、それでも一気に半分の資金が吹き飛んでしまうんだから。
でもまあ作物の納品とかにこれから必要だから。
いずれ買う物を今買っただけ。
車を買ったって言ってもそれで移動するわけではない。
そんな車で爆走なんかしたら獲物が逃げてしまって一生銃を撃つことさえできない。
なのでゆっくりと歩きながら狩りをし、狩れたら強力忌避剤でも撒きその場で放血をしておいてその間に車を取りに行く。
その後車で戻ってきて獲物を積み、帰る。
そんな感じにしようと思っている。
「てことでレッツゴー!」
銃を担ぎながら丘を歩いていく。
風上に向かって。
野生動物たちは匂いに敏感だから。
特に銃の鉄の匂いとか人間の匂いとかすればすぐに逃げて行ってしまう。
ざっざっざっざっざっざっ
ピー ピー ピー
チュンチュンチュン
自然音が気持ちいいねー!
現代日本では自然音なんてものを気にしている暇がなかったから。
上空では雲がゆっくりと流れていっている。
平和だねー。
まあその動物たちの平和を今から壊しに行くんだけどね。
あ、動物たちには平和な瞬間なんてないか。
彼らはいつも弱肉強食の生態系ピラミッドの中で食うか食われるかの争いを繰り広げているんだから。
自然を見て平和だなんて思えるのは人間くらい。
私はのんびりできて幸せだけどね。
木々が黄色い。
やっぱり秋かな。
っと!
ん?
足跡?
これは......
鹿かな?
二枚の蹄跡が見える。
足跡は山々。
つまり西の方へ向かっている。
風向きは北西。
これなら大丈夫だね。
この辺は山脈なので低い山や高い山が入り乱れている。
ずっと西の方に行けばもっと高い山があるけどこの辺は比較的低い山ばかり。
それでも山頂に雪が降っている山もあるけどね。
そしてそんな低い山は木々が生い茂っている。
そんな森の中、草木をかき分け進んでいく。
凄いね。
さっきまで野原だったのに一瞬で森に入るなんて。
日本の森に比べて木の背が低いから日の光がよく入ってきて和やかだけど。
草は大きいので膝まで。
低木は脇辺りまで。
でも全然鬱蒼とした雰囲気ではない。
木々が固まった場所が所々にあり木の生えているところから生えていないところに出ようとする時はまるで映画の中に入ったかのようなきれいな景色を見ることができる。
数歩前に奇麗な太陽光が降り注いでいる光景は神々しさすらある。
しかし......
「足跡......多すぎ!」
色々な方向へ向いた足跡がそこら中にある。
これは私を攪乱する気か!?(そんなことはありません)
そうして山道に迷ったところを後ろから音もたてずにガブっと!?(冗談です)
と、まあそんな冗談は置いておいてこれではどこへ行ったか分からない。
専門職ではないから長年の勘とかそういうのもないし。
「えーっと? この足跡がここに続いて? その次こっちに向かって? うーん?」
何となーくでこの鹿と思しき生命体の動きを予想する。
「多分......あっちに行ったのかな?」
最後の足跡がこっちを向いているし。
鹿の足跡って人間の歩幅より圧倒的に間隔が広いから断続的にしか分からない。
「お! こっちにも足跡が見つかった! ってことはやっぱりこっちで合ってるのか」
空の光は雲の動きでどんどん変わっていく。
雲が一瞬太陽を隠し辺りが暗くなったと思ったら直ぐにまた再び明るくなる。
今までこんなに自然に意識を向けたことはなかった。
向けたとしても畏怖の念だけ。
特に私は台風で死んだからね。
死んだとき恐怖とかなかったけど。
でも台風は来るたびにトウモロコシ畑をなぎ倒していくしビニールハウスも吹き飛ばしていくしで嫌いではあった。
洪水なんて起こされちゃ目も当てられない。
今この大地でもその意識はあるけれどこちらの世界ではゆとりがある。
地球では借金とか借金とか借金とかで金銭的被害が出たら最悪って感じがあったけどここではそんなものないしお金が無くなっても何とかなるかなって思えるほど余裕がある。
その余裕で自然に目を向けてみると自然がいかに素晴らしいものか思い知る。
自然は強い。
襲ってきたりしたら太刀打ちできない。
でも美しい。
前世ではその恐ろしい部分にばっかり目が行って美しい部分に全然目を向けることができなかった。
はあ。
「癒されるねぇー」
+現在の資金 4728500円+
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