1 - 畑見に行ったら死にました
間違っている知識もあるかもしれません。
そのような物があればどんどん教えて下さい!
ゆったりやっていきます。
多少イベントはありますが基本的には山も谷もあまりありません。
ガタッガタガタ
ビュゴ――――――
おおう。
風が凄い強いなー。
北海道に台風が上陸したのって何年ぶりだろ?
しかもこんなに大きな台風。
滅多に来ないよね。
台風何号だったっけ?
十八とか十九とかそれくらいだったような。
ガタッガタガタ
ビュゴ――――――
......
風の音が家の中でも轟々と聞こえてくる。
畑が心配だなー。
コーン畑大変になって無いかな。
親がいない時に限ってこんな台風が来るとか...
因みに両親は今沖縄旅行に行っている。
帰って来ようとしたところ空港で足止めを食らったようだ。
目的地に台風が来ているんだから帰ってくることは難しいよね。
私の事を心配してくれているかな。
ないかー。
子供の事を労動力としか見ていない親だからなー。
ちちがたの
もし私が死んだとしても損をした程度にしか思わないのではなかろうか。
帰って来ようとしているのも畑が心配なだけじゃない?
借金返済の目処がようやく立ってこれからが大事な時期ってときに台風だなんて気が気ではないだろう。
じゃあ呑気に旅行なんて行くなよなー。
なんだよー沖縄旅行って。
南の民の血でも目覚めたの?
ちなみに父は祖父が依田勉三と同じ静岡出身らしくよく自慢してくる。
いや、あなたの祖父ってことは私にとっての曽祖父ってことなんですが?
なぜ私に自慢する。
あとここら辺は静岡からの民間開拓団の子孫の方々か多いから別に静岡出身は珍しくもなともない。
そして母はその父、つまり私の母方の祖父が三重県の四日市出身らしい。
都市名古屋の近くだっていつも自慢してる。
いや、名古屋出身ならまだしも「近い」って何?
それに大都市と言うなら東京出身レベルは欲しいところ。
名古屋出身と言われても「はあ...そうですか」で終わってしまう。
だというのにそこに「近い」って加えてしまうともう完全に無意味ですねー。
一体何を自慢したいのか。
松尾芭蕉と同じ?
だから?
です。
え?
大阪?
...たこ焼き美味しいよね!
そうじゃないって?
まあまあ。
...静岡と愛知じゃ南の民と呼ぶにはちょっと物足りないかな。
確かに北海道から見ればどちらも南だけれど彼らを南の民と呼称すると九州とかもっと南ら辺の人達に怒られてしまう。
私、遺産継がないからねー?
大学卒業したら札幌に引っ越して一人で生きていくつもりだから。
大学だって返済不要の給付賞学金で行ったから。
高校は普通の奨学金だけど自分で返すつもりだし。
それにしても私一人だけだとどうすればいいか分からない。
それに兄上、姉上達も帰って来ないし。
呼び方が他人行儀なのは実際に、ほとんど他人の様なものだからだ。
同じ家に居るってだけで。
私自身は農家の娘ってだけでまだただの学生。
農業系の学校に行っている訳でもない。
まあ幼い頃から親の手伝いをしてきていたから多少の知識はあるけど。
でも流石に畑が壊滅してしまっては私だけではどうにもならない。
不安だな。
「ちょっと畑でも見に行ってこようかなー」
危険だとよく聞くがちょっとだけなので大丈夫でしょ。
「行くか」
私はそう言って分厚いコートを羽織る。
雨に濡れないようにフード付きだよ。
傘はゴミになるだけと知っているので持って行かない。
あとは懐中電灯くらいかな。
「良し、準備万端! 出発しよう!」
掛け声と共に玄関の扉を開ける。
ガチャ
この時ヘルメットを装備しておけば良かったのにと後程思うことになるのだが、結局その選択肢に辿り着くことはなかった。
扉を開けた瞬間、勢いよく雨水を含んだ風が舞い込んでくる。
「ううぅぅ。 前を向けない...」
真っ黒。
それに風が強すぎて前が向けない。
何とか力を振り絞り、目を限界まで細めて雨が直撃しないように前を向き、左腕で顔を覆い右手に持った懐中電灯を点灯する。
そうしてようやく視界に映ったものは......
こちらへ飛んで来る巨大な看板か何かであった。
ゴスッ
鈍い音が耳に入るのを最後に私の意識は途切れた。
◇
ハッ!
ここは!?
暗い!
すごく暗い!
でも風は吹いていないから外ではないのかな?
確か、大きな看板の様なものが飛んできたんだよね。
一瞬しか見えなかったからよく分からないけど。
で、そのまま角がゴンッって。
うわー。
思い出しただけでも痛いなー。
想像するだけで痛い。
実際は何も感じなかったけど。
って事はここは病院って事かな?
でもなんで真っ暗なんだろう?
消灯している?
夜なのかな?
はっ!
もしかして失明したって事は無いよね?
看板が飛んでくる。
↓
顔に直撃。
↓
失明
......ありえる?
えー。
もしそうだったら嫌だよ?
これからどうやって生きていけば? って話になる。
「暗いよー、見えないよー」
以下のプログラムがこのデバイスに変更を加える事を許可しますか?
バーチャルスペースビジュアライザー・プラグイン
ふえ?
急に何か見えたからびっくりする。
何だこれ。
よく分からない。
いいや。
何か知らんけど許可しちゃえ。
Yes
ブワッ。
周りが突然明るくなった。
そして目に入る長い人の行列。
良かったぁ。
失明した訳じゃなかった。
しかし何だろう?
ここ。
真っ白で何もない空間。
あるのはどこまでも続く長い行列のみ。
どこまでも続くは言い過ぎか。
長いけど途中で途切れているのが見える。
あれは...?
先頭の人たちが赤い輪っかの中に入って行っている。
何をしているのだろうか。
...もしかしてここって死後の世界か何か?
そうするとあの輪っか、輪廻の輪?
なんかのアニメで見た輪廻の輪と似ている。
後ろを振り向く。
後ろにも同じように列が。
うーん。
抜け出そうと思っても列から外れることはできないし。
大人しくあの輪っかに入るか。
それから順番がやってくるのはそこまで遅くなかった。
ただ輪っかに入るだけだから当たり前か。
おお、何が起こるんだろう。
緊張するな。
それでも体は勝手に動いて入ってゆくのだが。
と、その時!
「あ、ちょっと止めてー」
その言葉で体が一切動かなくなった。
え?
なに?
「あれなんか丁度いいんじゃない? よく分からないけど」
声のした方を向くと人の形をした光が何人か? いた。
もしあれが神様的な何かだとしたら何柱って言った方が良いのかな?
そして、その光のうち一柱が私を指差している。
「あれ転送することってできる?」
あれ呼ばわりとはひどい。
「できるよ」
後ろについている他の光が答えた。
「えーっと、君。 そこの君だよー。 突然で何のことかわからないかもしれないけど説明するのめんどくさいから単刀直入に言うね。 えーっと……何だっけ?」
いや私に聞かれても。
目の前の光はしばらく固まると突然頭を搔き毟るような仕草をしだした。
「あー! もうっ! めんどくさいなー! なんで私がこんなことしなきゃいけないんだよー! 私は教授の小間使いじゃないんだけど? っとー、ごめんねー? えーっとねー、それでねー、君にはねー……」
話が遅々として進まない。
はよ!
「そう! 実験体になってもらいたいんだ!」
ごめん!
何の事か訳が分からないよ!
「もっと分かりやすく説明してあげないと...」
後ろの光グッジョブ!
「えー、めんどくさーい」
めんどくさいじゃないよ!
「私はー、普通の大学生だったはずなんだけどー、なんかうちの教授のパシr……ゴホンゴホン! 教授の奴れ……ゴホンゴホン! 教授の……助手? みたいなことをやってる者でーす。 そんでー、なんか教授がー、圧倒的な技術格差が文明に及ぼす影響? とか何とかいうのを調べるから適当にいい実験体見繕っといてって言われたんだよねー」
はい?
え?
何だって?
話し方が要領を得ず全くわからない。
「軍事、医療、交通、教育、農業、あと何だっけ?」
「政治」
「そうそう。 その分野に分けて実験をしようとしているらしいんだけどー、どうやら君は農業に適性があるようでー。 どう? 協力してくれない?」
うーん。
まだまだ説明が不足していると思うのだけれど?
「実験の具体的な内容も教えてあげないといけないんじゃない?」
後ろの光が言う。
そうだよ。
具体的に私に何をして欲しいのか教えてくれないと。
「内容? なんだっけ?」
だめだこいつ……
そんな光を見かねたのか後ろの光がカンペみたいなのを差し出す。
初めから渡しておけよなー。
「ある程度の制限を持ってはいるが基本的にその分野に関して自身の知識内の環境が再現可能な特別な力を君に与える。 そうしてその状態の君を、少なくとも以前君が居た世界より文明の発達が遅れている世界へ君を送る。 そこでは君は好きな様に生きてくれて構わない。 似たような環境で他の魂に対しても同じ話を持ちかけ、他にも実験の結果をいくつか得るから、君の向こうでの人生がそのまま実験の結果になると言うことは無い。 だからそこまで気にせずに普通に生きてくれればいい。だってさー」
はあ。
それってつまり異世界転移ってやつ?
私そういう小説は少ししか読んだことないけど。
でも、もうちょっと人生が続けられるって言うのは有り難いかな。
この人生はあまりにも短過ぎたし。
特に前世に未練とかも無いし。
親は...まあ...どうでもいいっていうか?
跡継ぎも沢山いたし向こうも私の事気にしていないのではないだろうか。
因みに私が死んだ時兄上や姉上達はパチンコに行っていた。
兄上達の一部はまだ未成年だっていうのに大丈夫なのだろうか。
「別に断ってくれても構わないよ?」
うーん。
ま、いんじゃね?
よくわからんけど。
私は首を縦に振った。
+現在の資金 14400000円+
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