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ミツルVS【槍王】

 「いやいやいや。シャルが勝てない相手に俺が勝てるわけないだろ」

 「分かんないよ。人には得意、不得意があるからミツル君が私に勝てる可能性もある」


 ……あ、駄目だ。

 この人は既に俺がゴーレム戦で活躍したと勘違いして目を輝かせて…手に槍を持っている。

 何で…俺の周りには戦闘狂ばかりが集まるんだ!


 ここで『デートしませんか』とか言われたらはい、喜んでって言って直ぐに了承するのに…最弱のステータスで【槍王】とかチート級に強い女の子と俺が戦って勝てる見込みなんて一つもない。


 「まあ、僕も負けるって言うか勝負と言うよりはゴーレムを倒した人たちと戦うのって楽しそうだと思うでしょ?」


 いいえ。全く思いませんと言いたいのに既に立ち上がってクルクルとその場で回りながら槍を構えているミカには伝えずらい。


 「なら、アイミと戦えよ」

 「ちょ!?なんでそこで私に振るの!?」


 アイミも話が振られるとは思っていなかったのか慌てた様子で呟くが…先程俺を馬鹿にしたので丁度良い仕返しだ。


 「だってアイミちゃんは魔導士でしょ?魔導士は基本一対一では戦わないよ?」

 「…まあ、だろうな」


 自分で言っておきながら考えてみれば【炎魔法】を手加減なんて出来ないだろうし万が一にも怪我をする可能性は拭えない。


 「ミツル、私の仇を取って」

 「いやいや。戦う前提で話を進めるなよ」


 勝負を始めることを前提として話を進めるのは勘弁してくれ。

 旅行に来たのに俺は何度叩けば気が済むんだ。


 「負けたらちょっと大変なことになるけど大丈夫だと思うから勝負しようよ」


 大変な事とか言っておきながら戦うのを辞めない時点であんたは立派な戦闘狂だ。

 というより、【槍王】とか呼ばれてるし戦闘狂ではない方が不思議な話ではあるのか。


 「……ハア。分かったよ。戦えばいいんだろ」

 「やった!ミツル君ってば意外と乗り気だね!」

 「もっと駄々を捏ねると思ったのに」


 ミカは両手を広げて喜びを露わにしてアイミが驚いたような表情を見せるが…俺は最近学びと言う言葉を覚えた。

 この世界でどれだけ反対しようと俺の意見は覆らないと言う事を。


 重い腰をあげて立ち上がりミカと対峙するが…何だろうな。

 剣先は丸いし死ぬことは無い筈なのに…恐ろしい程の風格を漂わせている。

 シャルはこんな相手と対峙するとか尊敬に値するが…俺も簡単に負けるのは嫌だな。


 男としてのプライドと言うより俺自身のプライドがそれを許さない。

 ついでに球体の新しいのを使用できる絶好の機会でもあるか。


 「一応ルールを確認するが俺は一応剣は持ってるけど使えないし俺なりの戦い方で戦うけど良いか?」

 「全然問題ないよ。僕も槍を使うんだしミツル君も自分の好きな武器を使ってよ」


 これで球体魔法が使えるので何とか戦えるのだが、


 「これは勝ちと断定するには?」

 「相手に有効打の一本を取る事」

 「オッケー」


 球体魔法は魔物相手を想定して作っているので威力は倍増しているのだが、俺はセリーヌを実験台にしているので人に有害ではない範囲内の球体も作っておいて本当に良かった。


 「なら、平等にアイミで良いから開始の合図を頼む」

 「うん。それでは勝負始め!」


 アイミの合図で始まるのだが…ミカは動かずに俺の行動を警戒しているように見える。


 「何だ?来ないのか?」

 「ミツル君の実力を見てから勝負しようと思ったんだけど…攻撃して良いの?」

 「何処からでも掛かってこい」


 ぶっちゃけて言えば俺から攻撃するよりされた方が戦いやすくはある。


 「じゃあ遠慮なくお手並み拝見するよ!」


 ミカが走り出すのが速いが既に俺の手にはミニサイズの人間に害が無い球体を持っているので全力で投げつける。


 「ん?こんな小さな球で僕が――ギャアアア!?目が!?」


 流石は【槍王】と呼ぶべき動体視力と槍への扱いだ。

 俺がミニサイズの【閃光弾】を投げつければ、普通の人ならば避ける攻撃も【槍王】と称号を手に入るだけの実力者で俺の球体魔法を避けることなく槍で切ってくれたおかげで閃光弾が発動してミカの視界を奪ってくれた。


 ミカが閃光弾の威力に絶叫している間に新たに作った球体を三個程度ミカの付近の地面に投げつけて、さらに新しく作った球体をミカに投げつける。


 「あ」


 適当に頭に投げつける程度でビビらせようと思ったのだが、自分のコントロールが良くて絶叫して大きく口を開けているミカの口内に入り込んでしまった。


 「な、なんか口に…え!?痛い!?辛い!?なにこれ!?僕こんなの初めてなんだけど!?」


 俺がたらしく作ったのは【激辛球】で異世界の料理に詳しいテリサやアイミに尋ねて異世界一辛い食べ物を知ることが出来たのだが…その威力はとてつもなく口に入れるまでもなく鼻腔に空気を入れただけで汗が流れ辛いと感じてしまう程の地獄の食べ物だった。

 因みに異世界一辛い食べ物をカラー実とふざけた名前だが小さい大豆程度の大きさの実だが球体にカラー実をすり潰して入れたので匂いは抜群、口に入れれば地獄の苦しみが待ち受けていることだろう。


 「あ!キャ!?何で地面がぬかるんで!?」


 俺の球体魔法が想像以上の活躍を見せているのに驚きなのだが、地面に投げた【水糾弾】で地面がぬかるんでミカが態勢を崩してのたうち回っているのだが…これは。


 「あ、ええと俺の勝ち?」


 恐る恐る近づいてミカの首元にシャルから貰った剣を近づけてアイミとシャルの方を向けば唖然とした表情で口を開けて放心しているが…勝ってよかったのか?


 「――――もう大丈夫か?」

 「いや、死ぬかと思ったよ?川の向こう側が見えてたんだけど?」

 「悪い。まさか、あそこまで完璧に決まるとは思ってもみなかった」


 十分ほどたち、ミカは視力が回復した後に慌てて水を飲んで戻って来たのだが…涙目になっている。


 「ミツルさんが…【槍王】に勝っちゃったよ」

 「私、勝てなかった」


 アイミは今でも俺を凝視して信じられない様子を浮かべ、シャルは自分が勝てなかった相手を俺が倒したことに若干むくれている。


 「負けたら【槍王】の称号をあげる決まりだからミツル君に渡すよ」

 「いや、要らないし俺は槍なんて使わない」


 もうオチが見えている。

 もしも、今の状況で俺が【槍王】の称号を手に入れれば挑戦者が続出したり、魔王軍に新たな【槍王】が誕生したとか言われて変な言いがかりで新しい敵を用意して来るに違いない。


 「…ん?待てよ。もしかして大変なのって称号を渡さないと駄目な事か?」

 「ううん。称号を掛けて戦う場合はきちんと大勢の前で公式的な戦いが基本だし、非公式の場合は両者で話し合って決めるからミツル君が要らないなら称号は手に入らないよ」


 ミカが首を横に振って否定するのなら…大変な事ってなんだ?

 ……ん?


 落ち着きを取り戻したかと思いきや何故かミカが俺の前で正座をして頭を下げた。


 「おい。どうした?」

 「僕は一つだけ親と自分自身で決めた誓いがあるんだ」

 「へえ。うん?よく意味が分からないんだが何で正座して俺に頭を下げてるんだ?」


 突然誓いを立てたと言われても俺には全く意味が分からないし…頭を下げられる理由が無い。


 「僕と――――結婚してください」


 んんんんんんんんんん!?


 「「「はああああああああああああああ!?!?!?」」」


 豪邸の中庭で三人の絶叫が鳴り響いた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 嫁が増えましたね... というかタイトル変わってた(;゜∇゜)
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