表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/42

スローライフの人生を

 早朝から色々と衝撃的な出来事は起きたが、テリサさんは用事があると朝から元気な様子で去って行ったので俺は現在リビングで寝ころびながら寛ぐ真っ最中。

 シャルはリビングからでも見えるが庭で剣を振り、セリーヌは俺と同じくリビングのテーブルで記事を見て寛いでいる姿が見れるし、アイミは今日は買い物当番でテリサに言われた食材を買いに行っている。


 「俺は何をするかな」


 正直に言えばここにゲームやテレビ、パソコンがあれば一日中であろうと遊び放題なのだが異世界にそんなものを求めることも出来ないので何かしらの趣味を探したいと考えていた所だ。

 クエストには当分の間は絶対に行かないと固く決意しているので自由気ままに過ごせる趣味を探したい。


 まだ、異世界に来て日も浅いので散歩をするのも悪くは無いが結局の所はその場しのぎの暇潰しで、三日程度歩き回ればまた、今の繰り返しになることは間違いない。

 歩いて趣味を探すのも悪くはないが、俺はアウトドア派ではなくインドア派なので家の中で遊べる趣味を探すか。


 「なあ、セリーヌは暇なときは何をするんだ?」

 「私は適当に散歩をしたり、今みたいに世界中の情報とかを見たりするわ。後は記事に美味しいお酒とかあれば探す事もあるわね」


 ……意外とまともな奴だった。

 セリーヌは時々分からないんだよな。

 馬鹿で天然かと思いきや常識人的な一面もあるから何処か不思議な奴でもある。


 「何か面白そうな記事でもあったか?」

 「今日は特段何もないわね。ていうか、ミツルも暇ならアイミの買い物を手伝えば良かったんじゃないの?」

 「俺も考えたが久々に寛げるからゆっくりしようと思ってな」


 近頃は大変な目に遭ったり少しでも借金を返済することばかり考えていたので少しは落ち着く時間があっても良い筈だ。


 「なら、お酒でも飲みましょうよ!折角お金があるんだし少しぐらい飲んでも良いわよね!?」

 「昼間から飲むのか?」

 「別に多く飲まなくても良いのよ。お酒を大切に嗜むには多く飲むんじゃなくて味わいながら飲むのが一番なんだから」


 …一理あるかもしれない。

 昨日は浮かれすぎて豪快に飲んでお酒の味など全然覚えていないが、二日酔いも治ったので豪快に飲まずに少量を飲む程度なら大丈夫かもしれない。


 「なら、少しぐらい」

 「駄目よ」

 「え?」


 お酒を飲もうとか考えれば庭で剣を振り続けていたシャルがタオルで汗一つ掻かないで澄ました表情で戻って来た。


 「ミツルはお酒を飲んだら駄目」

 「な、何でだよ。少しだぞ?」

 「絶対に駄目」


 シャルからはこれでもかと言わんばかりの固い意志を感じてしまう程の圧力が出されている。


 「ちょっと」

 「駄目」

 「一杯なら!」

 「駄目だから」

 「何でだ!?」


 ……ここまで強く止められるのは初めてじゃないか?

 何だかんだ言いながらシャルが俺に強く物を言ったことも無いし手を出されたことも無いのだが、今回は強い意志を感じてしまう。


 「もしかして、俺は酔っている間に何かしたか?」

 「……」

 「おい、無言になるなよ!怖いだろ!?」


 記憶が無いのって怖いんだけど!?

 何かやらかしたのか!?

 だけど、セリーヌとお酒を飲み勝負をしてからの記憶が何度頭を張り巡らしても記憶が蘇ることは無い。


 「それよりもクエストは?前回のクエストをまだ完了してない」

 「クエストかー。別に急いで頑張る必要もないと思うんだよな。お金もある訳だしわざわざ無茶をするのもな」


 冒険者というのは一回で命を落とす可能性も孕む物で正直に言うと中々最初の一歩が踏み出せない。

 動き出せば恐怖はあるが勇気を持って歩けるが、動き出す前の一歩が非常に億劫になり中々頑張ろうとは思えない。


 「私も折角休めるんだから休める時に休んだ方が良いともうわ」

 「それともシャルはクエストに行きたいのか?」


 シャルがどうしても行きたいと考えるなら球体魔法で再び罠を張って倒すのも一応考えとしては有りでもある。

 一応二億金貨という大金が手に入ったが遊びながら暮らせばお金が無くなる可能性も捨てきれない。

 何しろ、目の前にいるのは【借金の帝王】の称号を付けられた三人組がいるのだからお金が増えることに越したことはない。


 一応今日の予定としてクエストに行くのも考え物だと思えばシャルは首を横に振る。


 「別にバウンドベアは余り興味は無い。何度も勝ってるしそれよりも竜を倒しに」

 「さあ、この話は終わりだ。今日はゆっくり家で休むぞ」


 話し合いは終えたのでシャルから視線を外して寝転がるが、シャルが俺の目前まで顔を近づける。


 「竜を倒しに」

 「行かない」

 「なんで?」

 「危ないから」


 会話は終了したので再び寝返りをするがシャルが再度俺の目の前に顔を近づける。

 ……もう少し違う場面が無いのか。

 これが、何時もの日常の中でひょっこりと現れるのなら俺は心臓が飛び跳ねるほど喜び、ラッキースケベイベント発生!と心の中で発狂をするが、内容が全く嬉しくないので対応に困る。


 「クエストに危ないのは無い。それに、借金も返してお金もあるから馬車も借りれる。私もステータスが上がったし大丈夫」

 「ステータスが…上がる?」


 シャルの一言に慌てて起き上がり自分のポケットの中に仕舞いこんでいた冒険者カードを取り出す。


 「おおおお!レベルが上がってるぞ!」


 level.10

 名前:ミツル

 種族:人族

 力:200 C

 敏捷:300 D

 耐久:50 D

 知力:500 C

 運:ー1000 測定不能

 魔力:300 C

 【魔法】

 ・球体魔法:新

 【能力】

 ・無


 レベルだけでなく、ステータスが上がっていたことに喜びが増すが…ふと気になる所があった。


 「なあ、この魔法にある新ってなんだ?」

 「それは簡単よ。魔法の中に新たに一種増えたって事なのよ」


 記事を見ながらも一応回復魔導士であるセリーヌが教えてくれる。

 …よく考えたら一応セリーヌも魔導士なんだよな。

 俺はてっきり囮魔導士の勘違いかと思っていたが…ん?増えた?


 「もしかして新たに魔法が増えたのか!?」

 「魔法が増えたと言うより種類が増えたのよ」

 「同じだろうが!やばい!今すぐ確認するぞ」


 新しい種類が増えていると言うことは成長してチート化しているかもしれない!!

 慌てて冒険者カードの中にある球体魔法に触れる。


 ・球体魔法

 【小:球体】、【軟:球体(永久保存)】。


 「…強いのか?」


 頭の中に【軟:球体】と書かれ、カッコで永久保存と書かれているが…強い要素が無い気がするのは俺の間違いだろうか。

 いや、何もしない内から決めつけるのは良くないので…取り敢えず出してみるか。


 「【軟:球体】」


 永久保存もいるかと一瞬思ったが、俺の予想を覆し普通に魔法は発動して掌の中に球体が置かれているが、【小:球体】と大きさは変わらないが軟という文字と永久保存という言葉が気になる。

 こんな時に魔導士であるアイミが居れば助かるのだが今は買い物に行っているので仕方がない。


 「…若干柔らかい?」


 【小:球体】はゴムの様に跳ねる性質を持ち合わせていたが今回の球体は少しだけ柔らかくて…今にも破裂しそうな勢いがある。


 「何か変わったの?」


 シャルには違いが分からないのか首を傾げているが俺も横から見れば分からない気がする。


 「触ってみるか?」

 「うん」


 シャルに手渡して、奇妙な物を掴むように触るがいまいち分からないのか首を傾げている。


 「…少し柔らかいかも」

 「だよな」


 俺と同じ意見の様でシャルが優しい手つきで返してくれたが、一つだけ気がかりなのは永久保存という言葉だ。

 言葉のままであれば永遠と残ると言う意味だが…この魔法を果たしてどう使うのか。

 物は試してなんぼだよな。


 「えい」

 「あ」


 効果音を付けて壁に向かって放り投げればパン!と悲しい破裂音が聞こえて球体が飛び散った。


 「……これをどうやって使えと?」

 「…だからミツルってば何度も言ってるけどその魔法に成長を期待するのは諦めたら?」


 ……畜生。

 お金を持って余裕の表情を浮かべているセリーヌが記事を見ながら優しい言葉で嗜めるが、まだ馬鹿にされれば反論できるのに質が悪い。


 「驚かす程度なら使えるか?」


 一瞬でも期待した俺が馬鹿だがシャルの言う通りこの魔法に成長を求めるのが駄目なのだろう。

 パンという破裂音は相手を誘導させるためや少しでも驚かすいやがらせ程度には使えるかもしれないが、攻撃手段となり得るチート能力では無かったようだ。


 「ねえ、ミツル。確かに球体は消えたけど残りカスがあるわよ?」

 「ん?」


 俺が絶望している間にシャルが球体があった場所に移動し何やら小さな破片の様な持ってくるのだが…それは誰が見ても球体が破裂した後の破片だ。


 「成る程な。永久保存って言うのはやっぱり言葉通りの意味でアイミが言うように炎魔法であれば魔力を切れば消えるのがこの魔法は消えないのか」


 永久保存の意味も分かったが大した強さは得られないようだ。

 この球体を例えるなら水風船の様な形かもしれない。

 強い衝撃を与えると水が飛び出す球で小さい頃はよく遊んでいたなと記憶が――――ん?


 んんんんんん!?


 頭の中で突然閃きが見えた気がした。

 ……もしかしたらの可能性だ。

 だが、万が一だがこの【軟:球体】は――――強くなる可能性を孕んでいるかもしれない。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ