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勘違い勇者

 何が起きているのかと誰に言わずとも問いただしたい。

 目の前にはゲーム世界における中世の中で門の前で佇み静かに多種多様な種族が行きかう中で茫然と見つめるしかない。


 「…回想しても絶対に意味ないよな」


 通常の小説ではここで回想に入り何が起きているのかを整理するのかもしれないが、俺の場合は回想をする意味もない。

 日本でニート生活を送る日々を過ごして、今日も今日とて頑張ったと自分を評価して早朝の六時に就寝して目が覚めれば目の前の現状だ。


 小説であれば文字数を稼ぐことも出来ない二行で終わる程度の回想を長々と話す必要も全くない訳だ。


 「…文字は見えるし声も理解出来るけど…エルフとか日本にいる訳もない」


 門の前で不審者の如く佇んでいるので傍から見れば頭のおかしい人に思われるかもしれないが状況を整理しているので勘弁して頂きたい。

 先程すれ違った魔導士の付ける黒いローブを着た耳が長いエルフの子は俺を一瞥した後に関わっては駄目だと悟ったのか颯爽と歩いて行った。


 「異世界転移したとしか…思えないよな」


 トラックに轢かれた、殺人鬼に包丁を刺されたなどの物語展開を期待した人も居るかもしれないが…残念ながら家から出ると言う行為を一年以上行っていないので特殊イベントは発生していない。


 「取り敢えず歩くか」


 黒髪黒目、顔つきは普通、身長も170㎝と高校二年生の男子平均である名前は高宮満と全てが普通の男だと自負しているが永遠とこの場に滞在していれば異世界警察に逮捕されても文句は言えない。

 …って言うか、自分で言いながら異世界に警察とかいるのか?


 ……無法地帯とかは勘弁してくれよ?

 喧嘩歴無し、ひ弱過ぎる男言えば俺の事だと言っても過言ではない。

 若干異世界転移に浮かれる間もなく戸惑っていたのに恐怖が勝り身を縮こませてなるべく人通りの多い道を通り辺りを見渡すが見た限りでは安全地帯だ。


 主婦らしき人が子供と手を繋いでな仲良く歩いている光景や、露店などをドワーフのワイルドな茶色の顎髭を生やした男性、小人族の人達が客引きをしている場面も見受けられる。


 「……というか、自分でも全く驚いてないんだよな」


 昔から漫画と小説が好きで永遠と読み続けていたので異世界転移は今ではテンプレを通り越して常に隣り合わせの存在だ。

 目の前の光景も何度も小説を見て分かっているのか正直な事を言えば全く驚いてない。


 見ている側からすれば何だこれは!?とか、凄い!これが異世界なんだ!とかリアクションを期待したかもしれないが…残念ながらリアクションを取ることは出来ない。

 まあ、最近ではありきたり過ぎてその辺のリアクションは要らないとか俺は思うんだよな。


 異世界のリアクションより速く話を進めてくれって思って流し読みになることが多い。


 「…リアクションよりお金に困るんだよな」


 よく見れば俺の格好は日本で居た時の寝巻だ。

 黒ズボンに黒パーカーのまっくろくろすけで完全な不審者装備だ。

 新しい服を買いたいが、ポケットの中に大金が入っているなど淡い夢で一円たりとも無い。


 「…住所不明の人が働けると言えば冒険者ぐらいしか俺の知識でないんだよな」


 取り敢えずは自分の服を新調する為にお金を稼ぐために冒険者ギルドを探そう。

 異世界に冒険者ギルドが無いなんて勘弁してほしい。

 というより、異世界に驚きと期待は無いが冒険者ギルドで自分の秘められた力が発見されて周囲は騒然とするとか、色んなパーティに引っ張りだこなどを凄い期待をしている。


 挙句の果てに世界最強のスキルなどを発見してスローライフを送る?

 いやいや、ここはチートスキルで魔王を倒す旅に出て色んな女の子を引き連れてハーレムで無双をするのも捨てがたい。


 「段々とテンションが上がってきた!」


 いいぞ!

 正直異世界に行くのは行きたい人でが行けば良いし俺は日本で永遠とニート生活を送るのが一番だなぁとか思ったけど悪くない。


 考えたら即実行だ!

 今が何時か分からないが、服だけではなく寝床、食事も確保する為にもお金は絶対に必要だ。

 お金って本当に大事だよね!


 「さて、地図なども無いし何処に行けば冒険者ギルドに行けるのか」


 これがゲーム世界に転移しているのならメニュー画面やマップなどが拝見出来る仕様になっているのが多いので…もしかしてと思ったが何も俺の周囲には映し出されてないし淡い希望は崩れたので諦めるしかない。


 「…本当にどうするか」


 最も最悪な展開はこのままダラダラと歩き続け深夜まで歩き続け野宿で何も食べないで寝るのが一番無理だ!

 今までニート生活を送っている人間が唐突に野宿なんて絶対に無理!


 今日中に絶対に必須なのは仕事探し、宿、食事、その三点だ。

 服は最初の三点を全て達成した後に考えるべき事案だ。

 目標を達成するための必須条件が冒険者ギルドを見つける事だ。


 「あの、すみません」


 自分でも宿、食事が無いことに緊張が走り慌てて道行く人に話しかけたが…俺が話しかけたの女子だ!


 「どうしたの?」


 少し落ち着いてから話しかけるべきだった!

 ていうか、目の前の女子三人とも凄い美人なんだけど!?


 一人目は桃色の髪の毛を頭の上で団子状に纏めた可愛らしい髪の毛に桃色の瞳をした、顔立ち完璧、スタイル抜群の女の子で俺の言葉に首を傾げている姿も相当可愛い。

 二人目は金髪ショートカットだが、短い髪の毛を二つに纏めたツインテール姿で赤い瞳をして男子から見ても憧れの視線を向けてしまう程の勇ましい佇まいで立っている。

 因みに腰に剣を下げているので剣士と推測できる。

三人目は腰まで届いている黒いローブを着こみ、俺と同じく黒髪だがポニーテールにして背が低く俺の肩にも届かない身長で若干猫背で大人しめなイメージが持てる。


 「ねえ、どうしたの?私達に何か用でもあるの?」


 一瞬、三人の可愛さに見惚れていると先程も応えてくれた桃色の髪の毛をした女の子が再び問い直してくれたおかげで正常を取り戻せた。


 「あ、すみません。一つ聞きたいんですけど冒険者ギルドが何処にあるのか教えてくれませんか?」


 「冒険者ギルドなら、この先の道を左に曲がってまた進んで右に曲がって真っすぐ行ってまた右、左って行けば着くわ」


 「いや、最後が適当過ぎるだろ!」


 最初緊張して敬語で話していた気持ちが一瞬で霧散してつい普通に話してしまった。

 突然聞いた俺も悪いけど、途中まで理解していたのに急に面倒になったのか適当になって道のビジョンが一切見えない。


 しかし、この女の子はスッキリしたように腰に手を当て「完璧でしょ」と言わんばかりなのが非常に困る。


 「分かる訳ないでしょ。貴方はここに初めて来たの?」


 「ああ。そうなんだ…です」


 「別に敬語じゃなくていい。同い年だろうし私も普通に話すから」


 勇ましい姿の金髪の女の子が話しかけてきたことで再び緊張が走ったが、彼女の眼が真っすぐ俺の方を向いた眼に何故か落ち着きを取り戻させてくれた。


 「それは俺も助かる。それで、忙しくないならもう少し具体的に冒険者ギルドまでの道を教えて欲しいんだけど」


 「別に良いよ。私達も丁度冒険者ギルドに行く所だから一緒に来る?」


 「本当か!?もしも邪魔じゃないなら一緒に連れて行ってくれ!」


 「二人とも良い?」


 「良いわよ」


 「う、うん」


 ……不意に話しかけて失敗したかと思ったけど大成功だ!

 冒険者ギルドが無いなんて事にもならないし、偶然にも美少女三人と関りを持てただけで幸せ十分で異世界転移は最高!!と誰もいない野原で叫びたい気分だ。


 「自己紹介がまだだった。私は冒険者で剣士のシャル」


 「私は回復魔導士のセリーヌよ!」


 「わ、私は攻撃魔導士のアイミで、です」


 口数こそ少ない金髪の女性剣士がシャル、桃色の髪の毛をした元気一杯の女の子がセリーヌで、内気な黒髪ポニーテールがアイミだと頭の中で記憶しておく。


 「俺の名前は……ミツルだ」


 名字を名乗るか迷ったが三人の名前を聞けば名字を名乗れば些か面倒な事態になるのは免れないので名前だけ名乗っておく。

 三人も全く気にした様子も浮かべていないので満という名前は特殊な名前ではないのだろう。


 「着いた」


 意外と近場に冒険者ギルドはあり四人で自己紹介をしたらいつの間にか冒険者ギルドに着いていた。

 ……ていうか、一度も左にも右にも曲がってない気がするんだが…俺の勘違いか?


 チラリと桃色の髪の毛をしたセリーヌを見つめるが、当の本人は全く気にした素振りも無く冒険者ギルドに入るので、俺も気のせいだと頭の中で決めて冒険者ギルドの中に入る。

 木造建築で赤い屋根、西部劇に出そうな木の扉を開き中に入れば――――まさしく異世界というべき冒険者ギルドだ!


 屈強な男たちが重装備を付け斧を背負うドワーフ、盾と剣を持つ俺達と同じ人族たちが部屋の中を行きかいしている。

 ……目の前の光景を見れば本当に冒険者ギルドに来たのだと実感が湧いてくる。


 「な、なあ、何処で受付をってん?」


 興奮してシャルに急かす様に尋ねてしまったが…ふと不思議な感じがした。

 俺達が冒険者ギルドに入ると同時に…ギルドの雰囲気が若干変化した。


 先ほど椅子に座り話し合いをしていた屈強な男たちがまるで猫に怯えるネズミの様に屈みこみ寝たふりをしている。

 行きかう人達も何故かシャルたちの方を絶対に一度見て身体を振るわせ何事も無かったかのように去っていくが、その足取りは先程よりも速く逃げているようにも見えた。


 「…何か起こってるのか?」


 「さあ?私には分からないけど」


 シャルには何故か得体のしれない話しかけにくさが現れ反対を歩くセリーヌに尋ねるが首を傾げて本当に分からないように歩いている。

 ……気のせいか?


 「ここで受付をする」


 「お、分かった」


 「よ、ようこそいらっしゃいました」


 考え事をしながら歩いているといつの間にか受付の所まで辿り着いていたのだが、目の前の冒険者ギルドの受付嬢は何処か体を震わせながら全く歓迎されていない様な挨拶をされる。


 「あ、あの、俺が何かしました?」


 「い、いえ。何でもございません。本日はどの様なご用件ですか?」


 「冒険者の申請をしたいんですけど」


 「それではこちらのカードに名前を記入してください」


 受付嬢に渡されたカードに羽ペンを使って書くのだが…何故、後退する?

 俺が文字を書くために屈めば何故か受付嬢の人も反射的に一歩下がっている。


 ……初対面の俺が何かしら怖がらせる様な真似をしたつもりはないのだが…何か悪い事でもしたか?


 「記入しましたけど…」


 「ありがとうございます。それではこちらの水晶に手を掲げて頂き初めのステータスをカードに刻むことが出来ます」


 受付嬢の人が机の下から出した水色の炎が揺らめく水晶に目を惹かれる。

 綺麗な入れに見惚れていたが…これから俺の今後の人生をも左右するステータスが分かるのだ。


 ――――冒険者生活の始まりだ。


 ◇◇

魔王城


 黒い雲に覆われ、雷鳴が鳴り響く魔法城で一人の配下が静かにその場に右膝を付く。


 「本日はどの様なご用件でしょうか」


 「…またしても人族は勇者を召喚したそうだ。その者を見つけ出せ」


 「承知しました」


 ゆっくりと…不審な空気が入り込んでいく。 


 

こちらは描けたら投稿するような形になります。

今日は三話投稿する予定なので一話を読んで面白いと思っていただけたら続きもお願いします。

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