98.飛ばされた先はどこでしょう?③
樹里の唐突に始まる訳の分からない言動に似た行動をツバサにまでされては対応しきれない。
ツバサの言い分をマリは意味が分からないわと切り捨て、話を終わらせねば自分の心労がとてつもないことになる。
そう考えマリは口を開きかけたが、言葉は出てこなかった。マリが話すより先にツバサが口を開いた。
「stop think observe plan。この頭文字をとって、ストップ。落ち着いて、考えて、観察して、計画してから動くの。無作為に動いたら危険。」
マリがどんな内容か理解していないって察したのか、ツバサは説明をはじめた。
地味に発音が良い説明だ。
あ、ストップって。前にウサが授業で話していたわ。聞いたことがある内容だったわ。何かあった時あわてず、とりあえず、落ち着くように、と。そうそう、そうだったわ。とマリは授業の内容を思い出す。
聞いたことある内容であった。見聞きしたことあっても詳しく中身を聞かないと思い出せない時ってあるよね。あんな感じに思い出したのであった。
思い出すと共にツバサまでもが樹里のような言動を始めたわけではなかったことに安心し、同時に少し恥ずかしくもなった。ツバサの言葉を頭ごなしに否定しようとしていたことに。
ちょいとわからなかったからといってすぐに否定するのはダメだと頭に刻む。
「まず、深呼吸。落ち着いて。」
立ったままであったことに気づき座りなおしたマリにすかさずツバサは言った。
さぁ深呼吸しろと。
たしかにパニックにはなっていたが、深呼吸をしろと言われても困ってしまう。戸惑ってしまう。
樹里が言った素数ほどではないが、困ってしまう。本当にこんな状況で深呼吸などするのか。している場合かと。
「すぅ〜、はぁ〜、すぅ〜、はぁ〜。」
ツバサが言うと同時に樹里が深呼吸をはじめた。素直にツバサに従っている。
単純馬鹿なんだから。今はそんな余裕ないじゃないとマリは思うのだが、文句を言うより先にやれとツバサが無言で圧をかけた。
仕方ない。やるしかないか。
ツバサに目線で促され、マリも樹里を見習って深呼吸を始めた。マリは押しに弱いのであった。
大人しく深呼吸を繰り返す。
何度か繰り返し深呼吸することで、さっきまでバクバク言っていた心臓が少し落ち着いてくるのを感じた。
深呼吸って大切だ。パニックになったらとりあえず深呼吸。それだけで少し、頭がスッキリするのだ。
マリも深呼吸によって少し落ち着くことができていた。
「次、think。考える。現状はさっきの通り。今、この場にいるのは3人だけ。周りに魔物はいる?」
深呼吸の効果があったのを周りを見渡し確認した後、ツバサは樹里に視線を向けた。
この3人の中で最も気配に敏感なのは樹里だからこそ、だろう。
マリはいるのかとドギマギしながら樹里に視線を向ける。
「………この近くには、いないと思います。」
周りを見渡しつつ、耳をすまさせ、周囲の気配を探り、樹里は答える。一緒にツバサやマリも気配を探ったが、何かがいるようには感じられない。
だが、気配に敏感なわけではないから不安があるのだ。樹里の返答にマリもツバサもホッとする。
もしも魔物がいたとしても、それに対処できる自信はない。
「そ。ここはどこかの建物の中。魔物がいる。私達を襲撃した人達もいるかもしれない。動き回って魔物や人に出会う可能性がある。このまま、隠れていて、誰かが来るのを待つのも、手。」
今後どう動いていくか。
ツバサは話していく。闇雲に動くよりは待つのもありかもしれないと。
動くのが怖いと言うのもある。暗闇。魔物のいる場所だ。危険もあろう。
「待ち続けるのも安全とも限らないですよね。」
ツバサに対し、樹里は言う。
そう、待つにしても動くにしても安全だとは言えないのだ。
だからこそ。
こうして話している今だってマリの胸はバクバクとうるさいほどに音を鳴らしていた。そんなに早く強く脈打って大丈夫かと心配になるほどに。
今、マリたちはどこだかわからない建物にいた。
いきなりの襲撃を受け、訳がわからぬままに飛ばされパニックになっていた。
それを考えればツバサに深呼吸を促され、多少は冷静になれただろう。しかし、それでもやはり怖いものは怖い。ガクブルしちゃう。
:(;゛゜'ω゜'):こんなんになっちゃう。仕方ないよね。怖いんだもん。落ち着きなく周りを見渡しつつ、マリはそばにいる2人に視線を向けた。
どうしようどうしようと視線を送るだけで、良い案は全然思い浮かばない。思い浮かぶ気配はない。そんな余裕はない。
「うん。動くか、隠れ続けるか。……次、観察する。何を持っていて、何が足りないか。」
答えが出ないため、ツバサはストップの手順に従い、次のことを考えることにした。
とりあえず、今は状況把握をしなければと。
話し続けなければ怖いと言うこともあったが、それを気取られないように震える手を誤魔化すように自身の武器、センシをギュッと抱きしめていた。
が。
もっとも、薄暗い上に余裕がないマリにはそれを気付くことができるはずもない。
「持っているものって…武器と非常食、水…あとは桜花達が作ってくれた激袋とかのセット…あ、投げたら煙が出るやつ、あるわよね?あれを投げたらどうかしら?」
名案だわ!と言うようにマリは目を輝かせる。
自分達の居場所を伝えたら、みんなと落ち合うことも出来るはずだ。
こういうときのために渡されていたもののはず。今使わずしてどうするって話だ。なんですぐに思い浮かばなかったのか。
「ここ、室内。」
名案だと思われた案はツバサによって冷静に却下された。
ツバサは自分よりテンパっているマリを見て、少々、落ち着くことができてきた。頭が動くようになってきたように感じる。
ほら、お化け屋敷とかだって、自分より怖がりとかいると、冷静になれたりする。あんな感じにツバサも冷静になれる。
マリったら凄い、役立てちゃった。本人には一切の自覚はないが、ある意味、役立っていた。
「あ、そうよね。ダメよね。」
考えるまでもなく分かった事が分からなかったことに恥ずかしく思い、マリは顔が赤くなるのを感じた。
いくら不測の事態だからと言って、今のはない。考えなしすぎたわ。
ここが暗い場所で良かったとマリは思う。
「あと、あるものは…私はナイフとかワイヤーソーくらい。」
自分が持っているものをツバサは見せつつ確認していく。
この状況を打破できる便利なドラえもん的アイテムはなさそうだ。なんでも出てくる4次元ポケットなんてものは当然だがない。
「僕はサバイバルキットがあります。」
キラーンと目を光らせつつ樹里は言った。どやぁーっと効果音が聞こえてきそうな顔をしていた。
そんな樹里の手元には何やら、手のにサイズの箱のようなものが握られていた。
はてはて、なんだと言うのか。
「キット?」
初めて聞いたのか、マリは頭を傾げつつ、樹里の手元に視線を送る。
CMのお約束のようにおうむ返しをし、それは何だと聞く。
「はい。コンパクトで持ち運びに便利なんです。ナイフとワイヤーソーとソーイングセット、懐中電灯、多機能カード…あとは自己防衛ペンが入ってて、なんと手乗りサイズ!」
まるでCMでもするかのように樹里は言う。いや、まじで。その売り出している会社の差し金かと言うくらいにハマっていた。
ついつい買いたくなってしまう深夜の番組のよう。
「へぇ。便利ね?」
そう聞くと、便利で買いたくなってしまう。こんな状況であるがゆえに、さらに便利なものであるようにかんじられる。
手乗りサイズならば邪魔にならなくて良いかもしれない。こんな時に役立つかもしれないし今後買おうかと悩んでしまう。
「はい。あと持っているものはタオルくらいですね。」
「えっと…次、何が足りないか。」
「今、どう言う状況であるかが分かりません!」
ピシッと元気に手をあげると、樹里は言う。こんな状況でもいつも通りの様子だ。
そんな樹里に呆れたようは視線を向けつつ、まりも口を開く。
「ここがどこだかも分からないわ。みんなは無事かしら。」
「………圧倒的に情報、ない。」
ポツリとツバサが呟けば、嫌な沈黙が生まれる。
どう行動するのが正解か分からない。
情報がないならば情報収集をすればいい。
だが、どうしたら良いかも分からない。
さてさて、どうしようか。
恐怖があるけどもあり、誰も一歩を踏み出せずにいた。
「僕の懐中電灯、ホイッスルとしても扱えますが…」
自分の懐中電灯を手に取って樹里が口を開く。
先程のマリの案よりは良い。
だが。
「魔物やみんなじゃない、他の人達を呼ぶ可能性も、ある。」
懸念もある。
ゆえにどうするか迷うとこだ。
読んでいただき、ありがとうございます^ ^
楽しんでいただけると嬉しいです!
楽しんでいただけましたら、ぽちりとしていただけると奇声を上げるやもしれません
あ、喜んでですよ?
夜勤に執筆するとネタが出来上がりますね
やばいテンションになりますw
何かがあったらパニクる前に深呼吸。
大切ですね。
深呼吸して落ち着くと、自分の動悸をより自覚しちゃうから考えものです。
あ、震えてる。
あ、うまく話せてない。
自覚しちゃうんですよね。
深呼吸も大切ですが、何より数をこなす、すなわち、経験が大切だと私は思います。
何の話だってなりますね、これ。




