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95.ウサギはビビリで弱虫のようですよ?rust

冷凍庫の中に迷い込んでしまったのだろうかと思うくらいに辺りは寒々しい空気に包まれていた。


いや、冷蔵庫ならば幾分かマシだろう。


冷や汗など出るはずもない。身体が恐怖で硬直することもないだろう。


「む、ぅ〜。」


桜花ちゃんは唇を突き出し、拗ねような困ったようなそんな顔をする。


桜花ちゃんだけが絶対零度のこの空間の中で通常通りに動けていた。


悪いのは桜花ちゃんなのだから、さっさと謝るべきだろう。そして、この空気を払拭してくれ。頼むから。


桜花ちゃんはもう少し空気を読んで良いと思うんだ。いや、空気は読めてないわけではないか。


怒り殺気立つチビや周りを凍りつかせる月姫様が与える周りへの影響について考えて欲しい。


普段、怒るチビを放置しているが、周りにとって怒るチビは怖くて怖くてたまらないもんだと震える気持ちを理解して、さっさと怒りを収めてもらえるように働きかけてほしい。月姫様についてだって同じだ。


桜花ちゃんなら簡単にできるのだから。


今の月姫様の空気も同様だ。さっさと怒りをしまっていただけるように動いてくれ。


「まったくぅ〜。もしもがあるんだからちゃんと持ってなよぉ?」


月姫様が弟子に甘い方なのは良いのか悪いのか。すぐに苦笑を浮かべつつ、桜花ちゃんを見た。


空気が和らぐのを感じる。


甘い方で良かった。桜花ちゃんを大切にしている方で良かった。今も怒気の充満した地にいるのは嫌だ。


「だから取りに来たんだし。…やっぱり、完全に紐がダメになってるや。あーぁ、丈夫いの買ったのに。」


「随分使い古したんじゃないのぉ?とりあえず、僕のあげるから、これ使いなよぉ。」


月姫様は術式を展開し、袋を取り出すと桜花ちゃんに渡す。桜花ちゃんが良くするように。自然な流れで術式を使いこなす。


月姫様が渡す袋は簡単に渡すことができるものではないと思うが。それなりの値段するだろう物だと価値に疎い俺にもわかる。


あれ、それなりに値段がするマジックアイテムだろう。


ダメになったという袋もマジックアイテムなのだろうが。それよりも物が断然良さそうだ。


「ありがとう〜。」


桜花ちゃんは当たり前のように受け取っているが、簡単に受け取れるとは。


普段、もっと高価な物を級友達になんて事もなく提供するのはこうして師匠様達に物を与え続けられているからかもしれない。


「じゃ、行こっかぁ?」


受け取った袋に薬草を入れ替え、腰に括り付けたのを確認すると、月姫様は桜花ちゃんに声をかけた。


月姫様の言葉にうなづきつつも、桜花ちゃんは先ほどのようにどこかにさっさと行こうとはせず、俺に近づいてきた。


そして俺の正面に立つ。


「………はじめちゃんがビビリなのも弱っちょろいのも、知ってる。私は私自身が化け物とビビられるの自体に何かを感じたりはしないよ。一々気にして傷付かれても困るんだけど。うざったいなぁ。」


毒を吐きつつ、桜花ちゃんは俺に手を差し伸べた。


手を差し伸べてくれる。何も感じないなんてことはないだろうが、俺に気にさせないために動いてくれているのではないだろうか。


優しく、甘い。


やはり、その通りだと思う。


虫の居処が悪くて口が悪くなっているが、彼女は優しい。こうして、気にしていないと言うのだって俺のため。気にさせないための気遣いのはず。


今度こそ、差し伸べられた手をつかめば、桜花ちゃんは俺を引っ張り、立ち上がらせてくれる。


「だから、おめぇ、その言い方はなんだべ?!」


ずっと黙って場を見ていたにゃんこ先生が限界を迎えたようで口を開く。


キィっと桜花ちゃんを睨み上げるように見て、シャァーっと威嚇する小動物のように言った。なんだろう、威嚇する子猫を思い出す。本人は必至な威嚇をしているのだろうが、周りには一切の恐怖が与えられない。


「にゃぁにゃあうるさい。」


大型の魔物が目の前で哮ろうとも、ビビらず何なら笑っていられるような彼女に子猫の威嚇は一切通じない。


鬱陶しいと態度にありありと示していた。


教師に対する態度としてどうなのかとは思うが、改める気などはないだろうな。


「にゃぁにゃあなんて言ってねぇべ?!」


「はいはい。ーーーよし。」


だいぶ、にゃんこ先生やわんこ先生への態度がおざなりになってしまっているな。その態度で接すると決めたのかもしれない。


にゃんこ先生もわんこ先生も自分たちへの態度に対して桜花ちゃんに言及していないとこを見ると許容されているのだろうか。


言っても直らないだろうから、言わなければこのままの態度が続くかもしれない。いや、続くだろうな。行き過ぎた態度を取る前に一度、注意すべきか。


て、桜花ちゃん??


何で、にゃんこ先生の首に首輪なんてはめつつ、良しとか言っているんだ?よしじゃないだろう?


可愛らしいデザインの首輪ーーいや、チョーカー、なのか?


黒色の花が連なるようにして輪を作っている、レースで出来たチョーカー。先には黒い石が3つ付いており、シンプルながらに女性らしい可愛らしいデザインではある。


だが、いきなり首につけ、よしっていうのはおかしい。何を考えている?


「コラッ!桜花ぁっ!!……全く、アイツはっ!人の話を聞かねぇ!!何なんだべ、これは?取れねぇっ!!」


案の定、怒ったにゃんこ先生を無視して、桜花ちゃんは今度こそ、姿を消した。


気配を探るが、猛スピードで離れて行っているのがわかった。


「桜花は僕に任せて、君たちはあの子達をよろしくねぇ?何かあったら呼んでねぇ。あの子達に何かあったら桜花が暴れちゃうから早めに連絡しなねぇ。」


じゃねぇと月姫様は桜花ちゃんを追いかけていく。


桜花ちゃんがにゃんこ先生にしていったことは一切気にする様子はないようだ。


突っ込んで注意して、桜花ちゃんが聞き入れるとしたら、月姫様だけだったのに。


これはもうこの件については諦めるしかないな。


「ハハハッ?良いようにおちょくられているね?」


そこで笑える貴方はやはり、度胸がある。要らぬ度胸だとしかいえないが。


何が起きたかも、分かってないーーーいや、桜花ちゃんの思惑を理解した上で傍観し、笑っているのかもしれない。


良い性格をしている。


「笑い事じゃねぇっ!!何なんだべ、これはッ!」


首元であり、よく見えないながらも、必死に見ようとして足掻く。外せば良いだろうに付けたままで必死にもがいている。


にゃんこ先生は賑やかだな。


「悪戯グッズだろうね?付けた子しか外せないと言うか?にゃんこ先生、頭とお尻、触ってみたら?」


クスクス笑いつつ、わんこ先生は言うーーーやはり、悪戯グッズ、か。


チョーカーをつけた瞬間、出現したものがあったからな。


そんなアイテムを桜花ちゃんが持っているとは。いや、何で持っているんだ。術式で持ち歩くことができるものの量に制限が桜花ちゃんにはほぼないとはいえ、持ち歩くようなものではないだろう。


「………何だっぺ、これ。」


「猫耳と猫の尻尾かな?そういう悪戯グッズじゃないかな?」


にゃんこ先生には黒髪に似合う猫耳と尻尾が生えていたーーーあ、あれは動くのか。


にゃんこ先生の感情に反応し、毛が逆立っている。すごいな。凄いクオリティだ。


感情に反応して、まるで本物のように動くとは。


「ッ!!おうかぁあああああっ!!!」


「ハハハ?志貴さんは月姫様がいるから大丈夫だろうし?僕らはあっちに集中しようか?何かあったら、それこそ怖い目合うだろうし?」


怒り心頭の同僚の心境など気にせずに話を進めるわんこ先生は度量があるのか、無神経なのか。おそらく、後者なのだろうが、にゃんこ先生が不便でならない。


やはり、俺にはこの同僚(わんこ先生)がさっぱり分からない。


だが。


あの子らに集中すべきなのも事実だ。


「わかってるっぺ。オレらの役割くれぇ、忘れてねぇっぺ!これは付けたままでいかねぇといけねぇのかっ!!」


「桜花ちゃんに取ってもらう他ないでしょうね。とりあえず、今はいきましょうか。」


にゃんこ先生が不憫な気もするが、いつまでも気にしていられない。


今から桜花ちゃんを追いかけ取ってもらうわけにもいかないしな。


とりあえず、10人の子供たちに集中しなければ。


呼べば月姫様が来てくださるみたいだが、俺たちの役目だ。


彼らを育成していかなければならない。さっさと集中しよう。


ぴょこぴょこ動く猫耳が気になるが、今は集中しなければだ。


気持ちを切り替えて行こう。


読んでいただき、ありがとうございます^_^


楽しんでいただけていると嬉しいです!


更新を明日の設定にしてました( i _ i )

ゆえに遅れての投稿です…

凡ミス悲しみ…





さてさて。





番外編的なちょっぴり長いウサ話がこれにて終了にございます。


ここからウサ達は完全に裏方という形で子ども達のサポートにまわります。


頑張っちゃうわけですね。


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