表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/314

85.ウサギはビビリで弱虫のようですよ?①

俺の知る志貴桜花は天才だ。


何度、自分がいかに凡庸な奴でしかないと痛感させられたことか。彼女は少し教えただけで、いつだってすぐに教えた以上の事をやってのけた。


志貴桜花の凄いところは常人離れした才能だけではない。継続して努力し続けられるとこもまた、彼女が優れている所以だ。


俺は努力なんてしていない。そう思うくらいに勤勉である。


共に何度も任務をこなしてきたが、俺は任務の中で幾度となく彼女に救われてきた。


彼女らの師匠からは面倒を見て欲しいと依頼されていたのだが、結局は俺が彼女らに何度も助けられていたんだ。


それほどまでに彼女らの戦闘力も現場対応力も機転の良さも、全てが俺より遥かに優れていた。幼い時からそのように鍛えられていたとはいえ、ずば抜けて優れている子達だった。


いつでも彼女らは自分達の実力におごることなく、俺のことも実力が下だと見下すこともなく、迷わず救いの手を差し伸べてくれていた。対等の仲間として当たり前のように助けてくれた。


それは彼女らにとっては至極当たり前の事であったんだが、この無情な現実世界では決して当たり前の事ではない。当たり前としてほしい事だが、当たり前ではなく、希少な事だ。


誰にだって当たり前のように救いの手を差し伸べ、我が身を危険にさらすことをいとわない彼女らは本当に希少だ。仲間を何より大切にする姿は敬うべきものである。


彼女は大切にすべき存在だ。失わないように守らねばならない。失いたくない。彼女ーー桜花ちゃんを失ってはならないんだ。


ワクワク学園に集められた子供達は決して強くはない。いや、一般人に比べれば強い。


しかし、戦闘員の中に入れれば赤子も同然。まだまだ、4月の入社直後の新入社員のようなもの。


何となくの知識や力はあってもうまく動けない。動き方を知らない。絶対に知っておくべき事すら知らない。


彼らは誰かを守るにはまだまだ弱い。自分自身を守る事すらままならないのだ。


悪意にさらされればひとたまりもないだろう。だが、確かな才能はある。磨けば輝く原石。だからこそ、彼らを鍛える。


俺にとっては彼らもまた、桜花ちゃん同様に守るべき対象だ。


彼らが悪意にさらされ、心を失わないように鍛え上げるのが目的で学園は作られたのだから、しっかり守り鍛え上げる必要がある。


彼らは仲間を大切にする強さを持つ。


桜花ちゃんは、人の悪意にさらされ、傷つけられ、いまだにその傷が癒えていない。俺に桜花ちゃんのために何かができたら良いが不甲斐ない俺ではどうすることもできそうにない。


苦しそうにする彼女に俺は裏切らない、どんな選択をしようと支持すると伝えはしたが、見守るしかできない不甲斐なさが情けなくてたまらない。


だが、ワクワク学園に集められた彼らならば。もしかしたら、桜花ちゃんを癒せるかもしれない。


何度も俺を救ってくれた恩人を。大切な仲間の心を、救ってほしい。彼らに彼女の深い傷を癒してほしい。


そう本気で思い、ここワクワク学園にて教員として彼らに戦闘について教えつつ、見守ってきた。桜花ちゃんの傷が癒えるように願いながら彼らの成長を見守っている。


今も大切に思っている気持ちに変化はない。


桜花ちゃん含め、彼らを大切に思い、彼らのためになれるようにしたい。そう強く願う。


強く願うくらいに大切な存在なんだ。






ーーーそう。






たとえ本気で殺意を向けられ、容赦のない攻撃を受けたとしても。


俺の気持ちは決して変わるはずがない。


彼女が俺にとって大切な仲間である事に変わりはないのだから。桜花ちゃんを大切に思う気持ちが変わるなんてあるものか。


………とはいっても。


怖いものは怖い。恐ろしくてたまらない。それもまた、事実だ。


誰が本気で怒った桜花ちゃんを誰が恐れずにいれると言えるだろうか?


真夜中に一人で遠くにあるトイレに行く、あのときのように消え去らない、後に引く恐怖がある。無事に布団に帰った後にも続く恐怖だ。怖くて怖くてたまらない。四肢末端は冷え冷えと冷たくなってしまっている。


手足がすぅ〜と冷え、中々に温まらず、震えが起きる。トイレに行き冷めたからこそなんだが、怖い時にはそれにゾッとするという。なんかいるんじゃないか。だからゾッと背筋が冷たくなるんじゃないか、と。


あー、おそろしい。


本気で怒り、殺気立ち、銃を隙なく構える姿は圧倒的な実力差のある魔物と、1人対峙した時よりも恐ろしい。


遠足開始時に軽く睨まれたりはしたが、武器を構えるでもなく、気に入らないと睨まれただけ。


攻撃を受けたとしても手を抜いてくれており、そこに殺意は皆無だ。だから、怖くもなかったんだ。


本気で怒った彼女は恐ろしい。何なら魔物なんて怖くないって言えてしまうくらいにはおそろしい。


それもそのはず。


桜花ちゃんは複数の有心武器を有する。そして、その武器の全てが最終段階まで至っている。


すなわちーーー……











◇◇◇


ワクワク学園には経験の浅い子供達が集められ、能力を磨き、一人前の戦闘員として鍛え上げる事を目的としている。


ここに6期生である桜花ちゃんを含め11人が入学した後、俺はその子らをイベントや日々の訓練で鍛えてきた。


才能もあり、皆がそれぞれの能力を伸ばせているだろう。


しかし。


問題もある。


ワクワク学園に入学するのは空により選出された者だ。戦闘員の全てが入学できるわけではない。


主に訓練を必要とする者たちが選ばれ、お互いに刺激し合い強くなれるようにサポートするのが俺たち教員の仕事。


今回、6期生の中には志貴桜花が選ばれた。空の愛弟子だからこその処置なのだろうが、彼女の実力でこの学園に入る必要はない。他の思惑があるのは重々承知であるのだが…。


他の子供達に対し、桜花ちゃんは規格が違いすぎて、本人は大した事をしてないつもりなんだろうが、その実、手を出しすぎている。


明らかに手出ししすぎだ。彼らをこれでもかと甘やかす。


出来るだけ見守ろうとする努力はあるが、危機にさらされれば、迷わず助ける。少しでも怪我をすれば必ず手を出す。


桜花ちゃんがそういう子なのは昔から知ってはいたが、今はいただけない。あの子達のための訓練中なんだ。その行動は問題ありだ。


今回の遠足にしたって桜花ちゃんならば他の全員を守りながら進むことなど容易い。それを思えば、手加減をしているのだろうが、そうだとしても手を出しすぎている。


もう少し彼らに自立してほしいところだ。


訓練で甘やかしすぎて桜花ちゃんに頼る癖でもつけば後々に困るのは彼らであり、訓練の意味がなくなってしまう。


だからこそ、今回、罠に引っかかると危険に晒されるのだという事を身をもって知ってもらい、自分達で対処するようにバラバラに建物内に転移させた。


経験を積ませ、彼らの成長を促すため。彼らの未来のために。


現実には人による罠に引っかかることもある。それを含めて対処できるようにするのが今回の目的だ。


桜花ちゃんは別行動になるようにした。そばにいると甘やかしすぎてしまうから。


桜花ちゃん自身も、張り巡らせた罠で島の端に飛ばされる予定だった。飛ばされた先には彼女のために準備された課題があった。


空様たちに準備頂いた罠だ。空様に今回の件を相談して、罠や計画を準備していただいた。島に月姫様が直々にいらして、準備をしてくださった。


桜花ちゃんをはめるためには、俺たちだけでは確実でなかったからこその処置だ。俺たちは指示に従い動き、罠を作動させたのみ。


空様の計画通り、桜花ちゃんを残してあの子達全員を強制転移させることができた。


しかし、桜花ちゃんは出来なかった。


他にも多くの罠を張り巡らされていたというのに、桜花ちゃんはそれら全てを回避し、俺たちの元まで来たんだ。


わずか数秒。わずか数秒で罠を回避しつつ、俺たちのもとまでやってきた。


桜花ちゃん用に準備していた月姫様直々に張り巡らされた罠であったにもかかわらず、桜花ちゃんには通用しなかった。


計画まで立ててくださり、罠を張り巡らせにお忙しい中、わざわざいらしてくださった月姫様に申し訳ない。


ただ、それ以上に懸念せねばならないことがある。




それはーーー()()()()()()()()()()()という事である。




月姫様達への申し訳なさもあるんだが、俺達の身の危険のほうが緊急性が高いのだから仕方ない。


あ、ヤバイ。走馬灯が見えてしまう。


志貴が死期を連れてきた。笑えない事態である。


読んでいただきまして、ありがとうございます^ ^

お前誰だよとなりましたか?

みんな大好き、ウサにございます。

ウサとて心中なハイテンションはウサではないのでございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ