80.お昼を食べます
マリたち一同が休んでいる間に見事に昼食を桜花や佳那子は作り上げた。
見るからに美味しそうなものがある。
いや、作っている段階からすでに素敵な香りがしていた。お腹を鳴らさせる、魅力的な香り。
それはこれから食べるものへの期待値をぐんぐんと上げていた。
「美味しいぃぃいい!!」
一口食べてみて、マリはついつい叫んでいた。情けなさなど一気に吹き飛んでしまう。やったね⭐︎気分が一気に上昇した。
前にも桜花が作ったものを食べていたのだけども、今回、食べたものは森の中だからなのか、さらに美味しく感じられ、感動がそこにあった。
シンプルな中にも隠し味を入れてあったり、一手間加えていたり。普通にシンプルな料理を作らせても神がかって美味しい。
こんな森の中だからこそ、より美味しく感じるのかもしれない。みんなでいつもと違う場で食べればそれは美味しい。作りたてほやほやだもの。
今日のは肉を串刺しにして焼いただけのもの。バーベキューの定番だ。
塩だけで味付けがなされたものや、タレに付けられたものもあってバリエーションは豊富。どれもこれもそこまで難しい料理でもない。
なんだったら、塩で味をつけただけのものなんて、串を刺して焼くだけだ。誰が作っても同じだろうに思えるそれすら、自分には再現できないレベルのものが出てくることに驚きを隠せない。
自分が作る時と何がちがうのか。マリにはさっぱりわからない。
作る側からすれば、全く違うわけなんだが。マリが作る姿を見れば止めに入り、作るから大人しくしててくれと言いたくなるわけだが、まりとしてはなにが違うか分からない。さっぱり分からないのだった。
だからマリの料理の腕は向上しないのだ。
マリにはそれが分からないが、とりあえず、肉にかぶりつく。美味しいを堪能せねばもったいない。幸せは噛みしめねばならないのだ。
「良いお嫁さんになるねぇ。」
料理を食べつつ、魁斗は綺麗な笑みを桜花に向けた。
作りの良い顔に微笑を浮かべれば絵になる。甘くて甘くてとろ甘い視線を相手に送れば、たちまち相手は胸を高鳴らせるーーー相手が相手であればだが。
魁斗は時折、こうして口説きにかかる。
自身の容姿を最大限に発揮した攻撃だ。
またやってると、マリは魁斗をスルーして肉を堪能していた。
「ねぇ〜。癒せて料理もできて。可愛くて守ってあげたくなるあたりっ!カナちゃんはおすすめだねぇ。変な男に引っかかっちゃダメよ〜?私のお眼鏡にかなわない男は却下ね?」
桜花には魁斗の口説きが通じない。
それが分かりきっていたからこそ、リアクションはしない。
矛先はなぜか佳那子に向かった。それは予想外だ。
「え?!え?」
いきなり矛先が自分に向き、佳那子は対応できずに狼狽た。
分かりやすく顔を赤らめ慌ててしまった佳那子は可愛らしい。
「アハハ〜、可愛い〜。」
桜花はカナちゃんのリアクションを見て楽しんでいる。
「……もぅ、桜花さんは意地悪ですっ!」
「ふふふー、カナちゃんは可愛い〜。でも、やっぱり変なのに引っかかっちゃだめよー?モテモテだろうけどダメ〜!」
「桜花さんのほうが、美人さんで、こんなに美味しい料理作れるんだからモテモテのはずですっ!」
「料理を作れるってだけで良いなら、みんながみんな、料理を頑張っちゃうね。守ってあげたくなるとか癒せるとか大切な要素よ〜?」
クスクス笑いながら言う桜花。
マリは桜花のだけでいいとかいう発言が納得いかない。
作れるだけとは何か。
それだけでも十分すぎる魅力だ。マリにはできないことでもあるのだから。
それに魅力はそれだけじゃあない。マリにとっては羨ましいとしか思えない魅力が桜花にはたくさんあるように感じられる。
「こんな料理が毎日食べれるなら、私、桜花のとこに嫁入りするわっ!」
力いっぱいそう言ってしまうくらいに魅力があるはずだ。
私が男なら放って置かないのにっ!虜になっちゃうわ!!
マリは力説する。
「………お嫁さんかぁ…家事炊事は私がするから、マリは働きに出てくれる?」
ん〜、困ったなぁっていうわざとらしいリアクションを取りつつ、上目遣いをする桜花は意地悪だけど可愛くて。
小悪魔の言葉がよく似合う。
「何よっ?!働くわよ!稼ぐわよっ!桜花は家をピカピカにして美味しい料理を作ってっ!家、守りなさいっ!」
「ハハハハハッ。おっけー。マリったら、おっとこまぇー!」
反射的に言い返せば桜花は楽しそうに笑い声をあげた。
遊ばれている気がするのが憎らしいが嫌いにはなれない。
「焼きおにぎりも、美味しい。」
「志貴氏は凝った料理を作るでござる。この塩気が疲れた身体に染み込み癒しとなっている。さすがでござる。」
悠真や司は桜花の作ったおにぎりを食べていた。
実は桜花は焼きおにぎりも普通のおにぎりも作っていた。どんだけ作ったんだというくらいにしっかりといろんなものを作り上げていた。
しかも、海苔は焼きおにぎりのほうには猫の形に切ってあるものが貼り付けられており、可愛らしい。
そんな一手間を加えていると言うのに、テキパキとあっという間に作ってしまうんだからすごいと思いつつ、有り難くマリもおにぎりをいただく。
お肉が混ぜ込まれたおにぎりは甘めのタレがご飯に染み込んでいて美味しい。ついつい勢いよくかぶり付いてしまう。
これは、マリは太る未来しかないな。
「それは良かった。おかわりもあるよー。作りすぎちゃった。」
「くれ。腹減った。」
「俺にもくんな。」
桜花がおかわりがあると言えばすぐに秋明や魁斗が手を出しておかわりを乞う。
さすがは男の子。食べる量が違うわねとマリは視線を向ける。
「マリ?そんなに見つめなくてもマリの分もあるから。ほらほら、小腹が空いた時ようにオヤツとして食べれるように包んどこうね。」
桜花はおにぎりを包みつつ、幼子に言い聞かせるようにマリに言った。
おにぎりをオヤツってどんだけ食べると考えられてるんやら。
そのイメージはいただけない。
「別に欲しくて見てたんじゃっ!」
マリは咄嗟に言い返す。
が。
「いらないのー?」
頭を傾げつつ、包まれたおにぎりを渡されれば、受け取らないなんてことはできない。
だって美味しいんだもの。
肉を細かく刻んで混ぜ込んだご飯で作られたおにぎりも入ってるって知ってるから、受け取りたくなるんだもの。
タレに漬け込んで焼いたお肉を細かく刻んでご飯に混ぜ込む。それは香りだけでよだれが溢れ出てくる。
確か、その肉は魔物の肉だが、豚肉のようにビタミンを多く含み、疲労回復に良いんだとか。タレにもニンニクとかが含まれていて疲労回復にも良ければ活力がつく。
こう言う場にいるんだから食べるべきものだ。それに食べた分まで動くから問題ないはず。そうそう。多少食べすぎても太らないはず。
そう、大丈夫なはずなんだ。
「いや、もらうけど!!」
いろいろ思いつつ、マリはついつい受け取ってしまう。
何気なく、秋明や魁斗もまた、包んでもらっていた。2人も食べるようだ。
自分だけじゃないなら、尚更大丈夫なはず。
この先も動くのだからおやつを食べるのはおかしくない。そう、エネルギーは必要なんだから食べる必要があるはずだ。
そうマリは言い聞かせる。
自分は女の子で2人は男の子。
そんな事はマリには関係ない。突っ込んじゃ、ダメ。絶対。
「あまぁい木の実もあげようね。こちらは今食べる分くらいしかないけど。果物もちょっとならあるよ。ビタミン込み込みだから疲労回復に良いよー。」
「甘い木の実!!僕にもください!!」
「はい。」
甘いもの好きな佳那子や樹里が嬉々として受け取った木の実もマリはしっかり受け取り平らげたのであった。
お肉がつくのが気になる年代だけど、欲には勝てないのが現実なのよね。
だって食欲は3大欲求だもの。しっかりきっちり、満たさなきゃな欲望だ。なぁんて言っているから肥えていくわけなんだが。
美味しいは正義なんだから仕方ない。
◇◇◇
昼ごはんを終えれば、再び森の中を進んだ。
あたりを注意しつつ、薬草を探していく。
「ひゃあっ!!!」
さっきから私ばっかり声を上げているわ!なんで私ばっかり!!!
そんな事を思いつつも、マリは声を上げる。
「ん〜??」
今度は何ぃ〜?と桜花がマリを見た。
他の面々もマリに視線を向ける。
「ふ、服にッ!何かが入ってきた!!ぎゃあっ!!なな、なんッ!何なの?!何なんなの??いやっ!!んッ!!!」
変な声やら何やらを上げつつ、マリはクネクヌ動き出す。
何かが服に入ってきた。そして、今、現在進行形的に動き回っている。その触覚が気持ち悪くて半端ない。
訳がわからないという視線が集まったとしても、本人は必死である。
いきなり変な声を上げ、変な動きをし始めた奴。そんな風に他者の目には映っていたりするわけだが、そんな事を気にしている余裕など、ない。
「はいはい、落ち着いて。」
何があったか、どうしたら良いかなんてことは分からず、困惑した様子でみんながマリを見つめる中、パニックになっているマリに桜花は声をかけた。
「どこ入っていくのよッ!ひゃぁっ!!ぇ?えッ?!いやッ!!そこはダメッ!!あうッ!!!ぅぅ〜…ッ!!何?何なの?」
落ち着いて。
そう言われて落ち着けるのならばハナからパニックになっていない。すぐに落ち着けるはずがない。
読んでいただき、ありがとうございます^_^
楽しんでいただけたらうれしいです!!
祝80回です!
これからも頑張って行きますのでよろしくお願いします!!




