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7.始まるのは学園生活だそうです②

戦闘員なみの戦闘力が変態野郎にはある。少なくともここにいる戦闘員達よりは強い。みんながかりで襲っても敵わんだろうね。


だけど、戦闘員だったら、戦闘員だったでもったいないよね。私らのために時間をさくって。私らから授業料を取るとしても、たかがしれているはず。


現場に行って戦ったほうがよほど身入りがいいはずだよね。だったらなぜ、ここにいるか。何のために何を企んで動いているのか。気になるよね。気になっちゃうよね。


腹の探り合いなんて行儀のいいことじゃあないけど。気になるもの。


「いいえ?私は非戦闘員にございます。」


変態野郎は簡単に答えてくれた。


そかそか。


()()()()、非戦闘員なんだ。


そんな気がしてた。そかそか。


「――そっか、非戦闘員、ね。ふーん………ま、いいか。私の名前は志貴桜花。武器という武器なら大抵使えるよ。武器収集が趣味だったりするから、持ち歩いてる武器も多ければ誰が運んだんだか、部屋にも大量の武器があるよぉ。売るほど揃っているよ〜。貸して欲しかったら声かけてぇ。術式もそれなりに使えるかな。って言っても、これ全部、昨日、みんなに言ったことだから知ってるよね。改めてよろしくね。」


にっこり笑いながら自己紹介しつつ、みんなの顔を見渡していく。


非戦闘員、か。


戦闘員とは闘魔隊に所属するうち、魔物が現れる地に派遣される者たちを言う。


闘魔隊から現場に出るだけの実力があると認められている者。


一応、闘魔隊には裏方的な人達も所属しているから、みんながみんな、戦闘員というわけではない。まぁほぼほぼ9割以上は戦闘員だけど。極々わずかだけど、非戦闘員はいるんだよね。様々な理由で。


戦闘員には戦闘能力によってランクが付けられている。上からss、S、A、B、C、D、E、Fランク。1番下がFランク。はじめはFから始まる。


一応、中学生から登録できるけど。登録するためには試験を突破する必要がある。最低限の力が必要っていうね。まぁ有心武器が扱えるなら試験なしで入隊できるけど。


そういや、ヤンキーくんはランクが低かったな。ヤンキーくんは登録したばかりなのかな?


「ちょっと!何であんなやつの言うこと、素直に聞くのよ?!阿部をあんなに簡単にあしらったのよ?アイツが非戦闘員なはずないじゃない!!」


私の前の席に座っている女の子がこちらを振り返り、吠える。キャンキャン吠えまくる。どうやら、私が変態野郎に従ったのが気に入らないらしい。


名前はマリ。ツンデレちゃん。今のとこ、ツンが強い。いつデレるか、桜花さんは待っています。しずかぁに待っております。


変態野郎と会話しているあたりから気に入らないと言うようにこちらを見てはいたけど、素直に自己紹介をしたのが気に入らないらしい。


キッとこちらを睨むように見ている。


「まぁまぁ。落ち着きなって。話が進まんし、素直に自己紹介したほうが早いでしょー?」


苦笑しつつ、マリに言った。


一々突っかかってたらなにも分からんでしょ。話をとりあえず進めてみて、状況把握しなきゃ。


それに。


散々、お兄さんやヤンキーくんが襲ってダメだった。


全員がかりでやっても、ねぇ。そんな状況じゃあ従う他ないでしょうて。


いや、私もガチで、みんなを気にせず戦えば勝てなくはないけど。ここにいるのは変態野郎1人じゃあない。あちこちから人の気配があるからね。大人しくしてた方がいい。


マリはなおも気に入らないって顔をしている。何かを言おうと口を開きかけるが、マリより先に声を発する子がいた。


「まどろっこしいだろうがっ!コイツをたたんじまえば済むじゃねーかよ!」


ヤンキーくんだ。昨日も散々、変態野郎に攻撃をしかけて、しかけまくって。それでも一回も攻撃が通らなかったヤンキーくんはイライラした様子でこちらに怒鳴ってきた。


たたむだけの実力もないのに、よく吠えるなぁ、ヤンキーくんは。何か、良いことがあったのかぃ?て、元ネタ知らないと分からないか。


攻撃が通らないのが気に入らないからって私に八つ当たりでもしてるのかな、ヤンキーくんは。


相手は変態野郎だけじゃないってのに。それにも気づいてないのか。周りを囲ってこちらを見てる連中に気付けないとは。


昨日、ヤンキーくんやお兄さんが変態野郎に攻撃しているのを傍観していた、というより、ヤンキーくんやお兄さんをこっそり術式使って援護してたのは変態野郎が今しているバッチをつけていなかったからだ。


今日は状況が違う。変態野郎が右胸に付けているバッチがもしも本物であるならば、私は、いや、私達はみんな従うしかないんだよね。


まぁ、多少予想できていたから暴れる子を止めることはしないまでも、従ってたわけだけどね。あの人達の指示で来ているだろうと思ってたから大人しくしているんだよ。


にしても、喧嘩腰なヤンキーくん。もう少し周りを見るべきだろう。


下手に行動を起こせば自分が痛い目に合うんだから。飛び火で怪我とか嫌だ。


「もしも。変態野郎が胸につけるバッチが本物であり、かつ、彼が言っている事に嘘偽りがなかったらどうするの?その責任は取れる?」


落ち着かせるためにヤンキーくんに問いかける。


ヤンキーくんはどうせバッチに気付いていないんだろうけどな。


あれをつけている人に下手に手を出すわけにはいかないんだよ。


「あん?バッチ?なんだって言うんだよ、あれが。嘘がなかったらなんだってんだよ。」


怪訝そうな顔をして、私の方を睨むようにヤンキーくんは見た。


――え?本当に言ってる、の?


いや、まぁ…あの顔はマジで言っているようだけどさ。


阿部は闘魔隊に所属する戦闘員なんだよね?


なのに知らないとかあるんだ。無知なのか何なのか。知らないから許されるってことでもないだろうに。


本当に登録したばかりなのかも。


他のメンバーは変態野郎の右胸に付けられたバッチを見て表情変えてたのに。まぁ、ハナからバッチに気付いていた奴はなにも反応しなかったけど。いや、阿部の反応に呆れてはいたか。


昨日はあれだけ阿部のように襲いかかっていたお兄さんが大人しいのに対して阿部はなにも感じないのか。お兄さんは早々に気付いてて、不機嫌そうだったってぇのになぁ。


「………あれは闘魔隊の紋よ。それも空の紋。空から任を受けたものっていうこと。あれが本物なら、ね。…嘘よあんな変態が空の紋を持つだなんて。嘘よ嘘。偽物よ。」


マリは気付いてなかった様子でバッチを見て驚いていたけど、ヤンキーになんとか説明をした。


最後は暴走しているようだけど。嘘よーとつぶやきながら混乱顔だ。


「あぁん?」


ヤンキーくんは説明してもいまいち分からない様子。眉間にシワを寄せ、変態野郎を睨むように見ている。


見た目通り、頭が弱いみたいだね。


「分からないのか、あべべ?つまりはウサくんに逆らうことは空に逆らうことを意味するって事だ。空から指示を受けた者に逆らい、その上傷つけたとあっては空を敵に回すに等しい。」


ずっと静観していたユキが口を開く。阿部の斜め後ろで表情を変えずに状況をずっと見ていたユキ。見るからに賢い雰囲気を醸し出す頭脳派な雰囲気がある女の子。


変態野郎のバッチにハナから気付いていたであろうユキは一切の動揺を見せることなく、冷静にヤンキー君に追加説明をしている。


「そいつの言うことを信じるなら、非戦闘員って話でェ。空の指示に従って動く非戦闘員に手ぇ出すってェのは戦闘員としちゃあ、まずいだろうが。」


お兄さん、苦虫を噛み潰したような顔をしてんねぇ。殴りたいとこを余程我慢していたよう。


昨日の様子を見る限り、お兄さんは中々好戦的な性格をしている。すぐにでも気に入らない変態野郎をのしてしまいたいだろう。


ヤンキー君に説明しつつ、状況を再確認して、自分に言い聞かせている様子。ただ、その現実にあからさまに気に入らないって態度だけど。


「ま、そういうことだ。本当か嘘か判断できない今、手を出すっていうのは反対する。マリの言うように偽物の可能性はあるけど……偽物だっていうなら空の名を語る不届き者だ?……楽に死なせない。死ねなくしてやる。」


私はにっこりと笑みを浮かべ、変態野郎を見た。


()()()()を語るなんて、絶対に許さない。必ずつぶす。


とりあえず、偽物だったなら、ここに師匠を呼ばなきゃ。こんなことをした理由とかも調べないといけない。


「志貴様は中々に過激な様子で。空の名を語る不届き者があらわれたならば、この私も喜んで手を貸しましょう。」


ふふふと笑いながら変態野郎は言う。


私達の話す姿を静観していた変態野郎。


急に話に加わってきたと思ったら。


――いや。好都合か。


「"約束だよ?"」


言質を取っておくかな。術式を使えば可能だし。


まぁ、解術されれば、されたでその波動を見れば、チビが見たことある戦闘員なら特定できる。彼が誰であるか。


魔力の雰囲気というか、空気の流れというか。上手く言葉には出来ないけど、術式を使う気配は人それぞれで。見たことある人物ならチビが記憶している。


「はい、喜んで。」


変態野郎は恭しく手を胸に当て一礼してみせる。


「――ふーん。」


マジか。変態野郎に拒否されなかった。


ま、それはそれで、コイツが師匠の指示で動いているっていう事であり。偽りではないってことなわけだけど。




――あぁ、少し残念。つまり、私はこの状況に従うしかないのか。




違えば暴れて逃げるなりできるんだけどなぁ。偽りであったほうが暴れるだけで済むから楽なのに。


そうでないとなると…ショックがなかなかでかいな。このまま従うしかない。


まぁ、偽物だっていう可能性は低かったから良いけども。


「今のは術式かぃ?」


隣から聞いてくるお兄さん。


「うん。術式87の契約の術。解術する様子から実力を見たかったんだけどね。簡単に受け入れられちゃったぁ。これは面白くない。抵抗するわけにいかないじゃんね?」


私はお兄さんに肩を竦めて見せた。


言質を取るタイプの契約の術式。彼は手を貸すって言ったから自分が空の名を語っているならば彼自身をどうにかするために手を貸すことをする必要があるわけで。空に従ってない者ならば拒否するしかないわけだ。


空に従っているにしろ違うにしろ、術式を掛けられるなんて不快だろうから、拒否すると思ったけど。


ますます、偽物でない可能性がでかいな。



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