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6.始まるのは学園生活だそうです①

晴天。雲一つない青空。


太陽の光に木々の葉っぱ達はキラキラと照らされ、その輝きが眩しい。


気持ちの良い風が吹き、木々が揺らされる音が気持ちいい。


チュンチュン。


聞こえてくる鳥どりの声も心なしか楽しそうに聞こえる。さぁ今日も楽しい1日がはじまるぞ。そう言っているようにも聞こえる希望に満ちた光景に見える。


洗濯日和だなぁって色気も何もないことを私は考えてしまう。よく洗濯ものが乾きそう。チビを洗って干すのもいいなぁ。


そんな光景が窓の向こうに広がっていた。






そんな中、私がいるのは室内だったりする。あー…何で何だろうねぇ。外で昼寝でもしたいなぁ。






窓の外に広がる気持ちの良い光景から打って変わって空気の悪い室内。外はあんなに晴天であり、散歩日和だというのに、空気の悪い室内にいるわけだよ。


「ぐっどもーにんぐ、皆さまぁ!!」


朝から教室の中には無駄にテンションの高い変態の声が響いた。


聞くだけでイラッとくる声だ。


昨日同様に機械を使用して変えた不快な声。お前の娘は預かった。そんなセリフが似合う不愉快極まりない声。


「やや、空気が悪いですねぇ〜〜。」


誰のせいだよ。そう言いたくなることを変態は抜かす。分かっていながら抜かしやがる。本当、たちが悪い。


みんながイラつく中、変態野郎だけがハイテンションな異様な空間に私はいた。いたくはないけど、いたのであった。ほんと、ヤダ。家帰って寝たいよ、マジで。











◇◇◇


昨日、変態に出会った後に、他にも変態によって、この何処かもわからない場所に連れてこられている子たちに会った。


変態の案内により連れて行かれた場所は学校のような見た目の建物だった。そこは入ってすぐにラウンジがあり、そこに同世代くらいの子たちが座っていたんだよね。


変態野郎を見るなり、みんな警戒した面立ちになっていたけど。


何だったら見るからにヤンキーって感じのやつが変態野郎に襲いかかっていた。スキあらばといった感じにお兄さんまでヤンキー君と一緒になって変態野郎に攻撃をしていた。


なんだけど。


2人とも軽くあしらわれるだけで、攻撃は通らない。息を切らす2人に対し、変態野郎は傷一つなく涼しい態度。


やっぱりそれなりに強いようで。お兄さんやヤンキーくんは手も足も出ないんだよな。ここに集められた子達じゃあ手も足も出ない実力者だよ。


逃げようとかせず、ついてきたけど正解だったみたい。これは逃げきれない。みんなを見捨てればいけなくはないけど。そんなことして何になるって話だしなぁ。


「皆さま、本日はこちらでお過ごしくださいませ。一階には各自お部屋を準備しております。部屋には皆様のお名前が記してありますので各自ご確認ください。建物内の物はお好きにお使いくださいませ。」


変態野郎はヤンキーくんやお兄さんの攻撃を楽々避けながら、私達に言う。


まだまだ余裕があるぞと示す話口調。これはヤンキーくんやお兄さんじゃあ、やっぱりかなわないねぇ、なんて思っちゃうわけだよね。


「明日、4階にあります教室まで8時までにお越し下さい。各部屋に制服がございますゆえ、そちらにお着替えいただければ、と。」


変態野郎はそれだけ言うと何処かに行ってしまった。


ここがどこかとか説明もせずに。


ワクワク学園とか言ってたけど聞いたこともない。


建物内ならばどこに行っても良いし、好きに使えば良いとか、好きにくつろげとか言っていた。とはいえ、言われた通りにくつろげるわけがない。


みんな、何とも言えない顔立ちで周りの様子を伺っていた。


だから。


とりあえず、自己紹介してみんなの事をいろいろ聞いた。


それからみんなで、建物内を探検してみた。結構広くて食堂もあれば修練室もあれば浴場もあった。生活するには困らない施設。身体も鍛えられちゃう。金かかってるねぇ。


建物から出るに出られないから、とにかく言うことを聞くしかなく。一晩就寝して、8時に集まろうって話になったんだ。


ただ、各々の部屋で寝るっていうのは怖くて嫌って事でみんなで集合就寝。


雑魚寝をしたわけだよ。











◇◇◇


そして今に至る。


森に戻るのも危ないし、逃げるにしても、どこかもわからず、変態野郎の正体も分からない。


というか、建物から出ようとすればどこからともなく変態野郎があらわれて拘束されるから建物から出るのもかなわない。


だから、どうにもならないし、素直に従ってみようって話になってみんなで8時に教室とやらに来たわけなんだけど。


まぁ、ヤンキーくんやお兄さんは制服を着ず、昨日の格好のまま。ヤンキーくんはパーカー。お兄さんは甚平のような作業着のような服。番傘はしっかり携帯してきている。


私?私は制服を着ているよ⭐︎


そのへんは順応できちゃう系なのです!


今は様子見がいいかななんて思うからね。


「さてさて。皆様方、ここはワクワク学園。あなた方入園者の方々を鍛えさせていただきます学園にございます。皆様におきましては、この学園に通い、切磋琢磨していただきたい所存でございます。あなた方がすべき事は1つ。この学園で過ごしていただき、授業をこなしていく。ただこれだけにございます。簡単にございましょ?」


変態は簡単に言うけども。


それってどれくらいの期間なのか。いろいろ説明を省きすぎている気がしてならないよね。


「ふざけんなっ!この変態野郎がッ!何が目的だ、あ゛ぁ゛ん?!さっさと俺らを家に返せや、コラァッ!」


メンチを切って動き出したのは阿部。見るからにヤンキーって感じの子。ピンクの派手な髪。前髪はカラフルなピンで止められている。耳には数多くのピヤス。


ヤンキーな阿部はどっから持ってきたのか、金属の棒切れを持っている。いわゆる鉄パイプだよね、あれ。ヤンキーな見た目に似合ったそれを躊躇なく変態野郎に振りかぶった。


だけど。


変態は最小限の動きでヤンキーくんの攻撃を避けていく。ヤンキーくんは手足全てを使い、変態に攻撃をしていく。


ヤンキーくんは喧嘩慣れしてるんだろうね。拳が中々早くて重い。殴った壁に傷がつくって中々だよなぁ、普通に当たれば痛いよ、あれ。ま、非戦闘員相手ならば、だけど。


て、あ。


変態はやっぱり変態みたい。


ヤンキーくんの振りかぶった鉄棒を掴む事で受け止めた。力負けすれば腕ごと殴られて怪我するわけだけど。


ヤンキーくんは力を全力で込めているようだけど、鉄棒が動かない。変態野郎がヤンキーくんに空いてる方の手を伸ばしたけど、ヤンキーくんは鉄棒を手放し、後ろに飛ぶようにして変態野郎から離れた。


「阿部様?私、口を酸っぱくして申し上げているはず。私への暴力は固く禁じます、と。あまり規則を犯すようであれば…()()()()()()へと向かっていただく他、ありませんよ?」


ざわぁ……と毛が逆立つような雰囲気を変態野郎は醸し出す。


お仕置き部屋、ね。どんな部屋なんだか。立ち入り禁止と書かれた地下の入り口。鍵がかけられており、入ることがそもそも出来なかったあそこにあったりするのかなぁ?


そんな部屋を用意しているあたり、やはりこの学園は胡散臭い。


「………ハンッ!入れれるもんならやってみろッ!」


ヤンキーくんがあんな脅しで黙るわけがなく。一瞬言葉失うくらいにはビビったようだけど、すぐに復活して変態に噛み付いている。


それは勇敢なのか無謀なのか。


「承知いたしました。」


鳥肌が立つかと思うくらいに冷たい声を変態野郎は出した。武器につい手を伸ばしてしまうような威圧感もある。


――これは、ヤバイ。


そんな雰囲気を変態野郎は醸し出す。


さすがに変態野郎が動き出したらヤンキーくんを――


「とりあえず、本日より阿部様のお食事にはセロリー人参ピーマン…もろもろ増量でございます。心してくださいまし。」


――て、おい。


やることが小さいな、コラ。


身構えちまった時間返してほしい。利子つけてしっかりきっちり返せや、コラ。


「……ふ、ふざけんなゴラァアアアア!」


私としては脱力だったんだけど。ヤンキーくんはさらに怒りを燃やした様子で変態野郎に殴りかかった。


ヤンキーくん…野菜苦手なのかな?


好き嫌いはダメだと思う。ま、セロリーは私も嫌いだから出てきたら師匠の皿に捨ててはいたけど。バレないようにするのが大切よな。バレたら、メッ!!


「皆様方、自己紹介と致しましょう。これから先、寝食を共にし、苦労を分かち合う仲間でございますゆえ、お互いを知っておく必要がありましょう。では、まずはこちら、阿部秋明様。こんせい武器でありますバッドが武器でございます。ご覧の通り、接近戦を得意といたします。闘魔隊の戦闘員であり、ランクはF。さて、他の方々も自己紹介をしていきましょう。窓側の後ろからいきましょうか。」


変態野郎は襲いかかり続けているヤンキーくんをかわしつつ、何事もないかのように進行しはじめた。


ヤンキーくんはこんせい武器を持っているのか。バット、ねぇ。今こそそれを使えば良いのに、使わないのはなんでだろう?


ん?てか、当てられたのは私だ。

私から自己紹介とやらをするらしい。


変態が私を見てるから目があった。仮面つけてるから目が合っているか定かではないのだけれども。おそらく、きっと私を見ている。


「無視してんじゃねぇぇえ!!」


お?


ヤンキーくんが変態野郎から棒切れを取り戻した。頑張ったねぇ。いや、変態野郎はわざと返したか。奪い返されても構わないってか。余裕だねぇ。


そんなこととは梅雨知らず。ヤンキーくんは変態野郎に全力で襲いかかる。


全力でヤンキーくんは鉄の棒切れを振り下ろ――までは良かったんだけど、軽々と避けられ、壁にぶつかり、それは――先が折れちまって私の顔面目掛けて飛んできた。


カーーンッと勢いよく。


ヤンキーくん、あの見た目だけど、悪い子じゃないみたいだね。飛んだ瞬間、やべって顔して、私を振り返ったあの顔。真っ青だった。


ま、変態野郎の背中ですぐに見えなくなったけど。


変態野郎は私の顔に届く前に私の前まで移動して、鉄屑を掴んで見せたのだ。


その動きに教室内はざわつく。


みんなには動きが見えなかったんだ。瞬間移動したかのように見えるのかも。


これだけでも実感できるだろう。変態野郎は間違いなく強い。みんなでは手も足も出ないくらいには実力がある。


「さぁ、志貴様?自己紹介をしてください。」


グルンっと不気味な動きでこちらに顔を向ける変態野郎。お面をつけているからこそなのか、より不気味な雰囲気が強い。


「それは命令ですか?」


私は変態野郎に聞く。指令であるならば従う他ないよね。変態野郎が胸につけている()()()も気になるし。


あれ、昨日は付けてなかったはず。


「……どう捉えるかはあなた様次第にございます。」


あれま。


普通に命令ですって高圧的にくるのもありだろうに。


判断は自分でしろって話かな?


「判断は自分でしろって事ですか。……ちなみにあなたは戦闘員ですか?」


なんとなく、聞いてみた。答えてくれるようだから、とりあえず聞いとこ。


聞くだけタダなのです!



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