51.武器師達の放課後です②
おそらく。というか、間違いなく。
ユキやゆずるが作った武器を桜花に試しに使ってもらうことも可能であろう。頼めば良いよーと言うだろう。簡単に。
ユキやゆずるにとっては重要だが、桜花は簡単に良しを出すだろう。武器に対する評価は別にして。
良質なものばかりを使う彼女は武器として使うものは選ぶ。試すことをしてくれても、使ってくれるかは別だ。
ワクワク学園の同級生達の誰よりも武器を見てきているであろう彼女に評価してほしい。彼女の役に立つ、彼女を守れる武器を作って見せたい。そう武器師達は強く思う。
あぁ、何を作ろうか。
どんどん生み出したい。自分の武器を。みんなを守る武器を。
ゆずるは笑みを浮かべる。高まる感情が抑えられないというように。
作りたい。作り出したい。気持ちばかりが先行する。
「本当にな。戦っている姿はあまり見たことないが、銃の腕前もすごかった。凄いといえば、ムラムラのスナイパーの腕も意外だったな!あの武器も素晴らしいよな?解体してみたくてウズウズするよな?」
話は飛ぶ。
そろそろ、2人とも集中が切れてきていたようだ。武器作りは好きだし、どんどん武器を作り出したい。意欲はまだまだある。
だが、2人とも作業はしているものの、進捗状況は芳しくない。芳しくないのであった。気持ちだけが空回りをし始めている。気持ちだけが1人でに歩み始めてしまい、結果が後ろで居眠りしているのかついてきていない。必ずそばにいて欲しい芳しい結果が不在なのである。
ここらで息抜きが必要かもしれない。ゆえに話に身を投じる。話を弾ませる。弾ませて気分転換をはかる。
「そうね。最大射程距離が気になるところね。そこまで射程距離がなさそうな種類に見えたのに、遠距離も問題なかったわ。それに、あの威力。」
とうとう手を止め、ゆずるは前に見た村山の武器を思い出す。
あぁ、作ってみたい。
どうなっているか、どう作られているか、どんな能力があるか。
全てを知り尽くしたい。作り出してみたい。
そう思うといてもたってもいられないくらいに胸が躍り出す。
クールな見た目であり、ツバサに負けず劣らず表情豊かではないが、目は爛々と燃えていた。
「あぁ。つくも武器だからこそ、なのだろうか?」
ゆずるの気持ちがテンション高く興奮し出したのに対し、同じく楽しげにユキは言う。
こちらは表情豊かであり、顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「そうなんでしょう。無心武器じゃあ、あの威力はないわ。同じように魔力を撃ち込むタイプは志貴さんが使っていたわね?」
「そうだな。だが、射程距離も、威力もムラムラのものが上だ。しっきーが武器を使いこなしていて慣れているからこそ、あまりその差が出ているようには見えなかったが。」
「……そうね。武器が劣っていても、使い手の技量が遥かに優っていたらあぁなるものなのね。」
「ふむ。しっきーは無心武器、ムラムラは有心武器。使用する者の実力が同等であれば明らかに戦闘力はムラムラが勝るはずだがな。実力差がありすぎる。それにしっきーが使っている武器は有心武器には劣っているとはいえ、優れた武器だ。」
「そうね。あれこそ、じっくり見させてほしいわ。志貴さんが魔力量を調整して、威力の調整をしていたわ。射程距離も多少調整できそうよね。どれくらい耐えられるのかしら?」
実力差があまりにもあるとはいえ、戦闘の場において、有心武器に負けず劣らず肩を並べて見せた武器。
その性能をもっと見てみたいと思う。
「装飾もまた、美しい!!!真っ黒でいて、シンプルなフォルムでありながら、全体的に彫られた美しい装飾!」
「あれ、武器の耐久性をあげ、魔力の伝導をよくするものよね?」
装飾としてなりたっていた。武器をカッコよく飾っていた。だが、装飾としての役割を十分に発揮しつつ、意味のない模様ではなく、武器として必要な意味のある模様であった。
複雑で難しく繊細でいてきめ細かな細部までこだわり抜いた彫り。
実にじっくりと眺めたい。芸術と言っても過言でない美しさがそこにはあった。
美しさとか語りだしたならば、武器の全てに魅力があるとここにいる武器師達は言うのだけれども。武器だけを展示する美術館があるならば、一日中入り浸ってしまうのだろうけど。
あの銃の美しさはやはり飛び抜けたものがあった。武器師の技術が詰め込まれているからこそ、興味のそそる物であった。
「だろうな!!ぜひ、じっくり見たい!細部まで丁寧な仕事だ!!!頼めば見せてくれるだろうか?」
「……自分の愛用する武器はあの子、手放さないじゃない。ナイフだって見せてはくれたけど、渋々だったわ。」
「とはいえ、見せてくれた!頼むだけの価値はあるぞ。」
にぃと笑っていつか頼んでみようとユキは言う。
渋々であった様子を見るに、あまり愛用する武器を他者に触れさすのを良しとしないようだけど。それに気づいていながらも頼むのは気がひけるのだけれども。
本気で嫌ならば嫌と言うだろう。本気で嫌がられなければ良いかなとゆずるの心も揺らいでしまう。ユキの笑みを見ていると悪魔の囁きを受けたかのように心が揺らいでしまう。
頼んでみるだけ頼んでみようかしらとゆずるは思うのであった。
ーーーコンコンコン
話が盛り上がり、お互いに作業の手を止め、話に夢中になっていたタイミングであった。
誰かがノックした。
ユキもゆずるも扉に視線を向ける。
「し、失礼…します。」
顔を出したのは佳那子であった。
手には荷物が持たれている。
「あら?どうしたのかしら?」
部屋に入ってきた佳那子にゆずるが頭を傾げ聞く。
「あの、お2人、お食事まだですよね?おにぎり、ですけど、作ってきましたので……どうぞ。」
手に持たれた荷物は2人のための夕食であった。
夕食の場に姿を表さない2人を心配し、佳那子が準備したものである。
実は度々、佳那子は2人のためにそのようなことをしていた。寝食を気にすることなく2人が作業に没頭してしまうことがあるがゆえに、だ。
「ありがとう!!そういえば、何にも食べてなかったな!……もうこんな時間か!」
佳那子が準備した物を見て、空腹感があると気づき、何も食べていなかったとユキは笑う。ユキは言われるまで空腹感と言うものに気付いていなかった。忘れ去っていた。
空腹感は思い出すようなことではない。忘れてしまうような類の話ではない。言われなければ気づかないと言うものではない。
頭に衝撃を受け、大怪我を負っても、怪我に気づくことなく動けることがある。周りに指摘され、血に気づき、自覚することで痛みが出始めることがあるんだとか。
だが、空腹感はそう言う類のものではない。決して違う。そうは思うが佳那子はいつものことであるが故に何も言わずにいた。困ったような笑みを浮かべて2人を見るのみ。
ユキやゆずるが時計を見れば、もう少しで日にちが変わろうとしていた。
作業を開始してゆうに7時間程が経っていたという事だ。
通りで集中も切れるわけだ。
「はい。もう夜遅いですから……あまり無理はなさらないでくださいね?」
ずっと作業しっぱなしでいた事を知っていた佳那子。2人に懇願するように言う。
空腹感を忘れていたような2人だ。睡魔だって忘れてしまい、朝となってしまうやもしれない。倒れてしまうまで無理をするやもしれない。
部屋の隅に置かれた掛け布団。
あれを被っての仮眠で済ませるのはいくらなんでも身体に悪い。
だからこその、懇願である。
「大丈夫よ。あの子達が頑張っているんだもの。私達だって。」
「そうだな。ボクらを守るために当たり前のように戦地に赴いてくれ、ボクらを安全地帯に居させてくれる。彼らを守る牙を盾をボクらは作らねばならないな!」
すぐに2人は佳那子の言葉にうなずく。それはもう素直にうなずく。逆らう気など一切ないと2人は堂々という。事実、2人にはそんな気などない。
が。
2人の言葉は今後とも無茶をしますと言っているようにしか聞こえない。素直にうなずいてはいるが、佳那子の言葉を聞き入れていないようにしか聞こえない。
「分かります。私も皆さんの役に立てるように頑張ります。……ただ、無理をして倒れてしまっては意味がありませんから、休んでくださいね?」
頑張りたい気持ちは分かる。
自分とて頑張りたい。
だが、倒れてしまってはどうにもならない。
体調管理ができぬならばストップをかけるのもまた、治療を担うものの役目だ。
佳那子は2人に強めに言った。
「えぇ、そうね。無駄な心配はかけられないわ。……もう少しでひと段落するから。」
「ちゃんと休むから大丈夫だ!カナカナは先に休んでくれ。」
2人とも、やはり返事は良い。
本当に分かっているかは分からないが素直にうなずいてくれる。
「………分かりました。お茶もここに置いておきますね。おやすみなさい。」
とりあえず、声かけはした。
であるならば、行動観察を継続し、適宜声かけや差し入れをしていくしかないか。
そう考え、佳那子は弁当やお茶を2人の近くに置くと、部屋を後にした。
「おやすみ!」
「ありがとう。」
2人は部屋から出ていく佳那子に声をかけつつ、気分転換は終了と言うように手元に視線を戻すと作業を再開させた。
ーーーそして。
今しばらく、部屋の中には作業する音のみが響くのであった。
いや、飯食って寝ろよとツッコミたいが、ツッコむ人間はいないため、まだまだ2人の作業は続く。
読んでいただき、ありがとうございます^ ^
昨日、人生初のボードを友人とチャレンジいたしました
あちこちが痛くなるよ!と、友人からずっと言われていたわけですが…
とりあえず今は尻が痛くてたまらない月姫です
やばい座るのがキツい…
あれ、痔核の人が使うアレ、
ドーナッツ型のクッション!
穴あき座布団!
あれが欲しくてたまらない今日この頃です




