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守護像職人  作者: 猫松ぺ子
第2話 守るもの、守られるもの

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45.ピクニック③


「たくさんあるからいっぱい食べてね~!」

「こ、これは……!」


 バスケットから次々と出されるごちそうにシオは目を輝かせた。


 

 包み紙が破れそうなほどパンパンに中身がつまったサンドイッチに、切り口から輪切りにしたゆで卵とトマトが覗くロングバケットサンド、黄緑色のアスパラガスが乗ったキッシュ、春野菜をトッピングしたフォカッチャ……色とりどりのパンがテーブルにズラリと並ぶ。


 さらに、テラテラ輝く茶色いタレが眩しいミートボールやマッシュポテトとレタスをローストビーフで包んだピンチョス、旬のソラマメが三つずつ刺さったピックの束、花の形を模したクッキーや一口サイズのパイが、これでもかというほど積み上げられ、テーブルの上を彩っていた。


 シオは恐る恐る震える手でサンドイッチを一つ取った。


 ずっしりとした重みにゴクリと唾を飲み込む。


(こんな……こんな豪華なサンドイッチが存在していて良いのか……⁉)


 はち切れんばかりのわがままボディには、レタスやトマト、細切りにされた人参がぎっちりつまっている。鮮やかな三色が織りなす断面は見た目にも美しい。


「シオ、何固まってるの?」


 ガラスの水差しからレモン水を注ぎながら、ミハルは不思議そうにシオを見る。


「早くお食べよ。お腹空いてるんでしょ?」


 シオの前にコップを置き、リリーに手渡すと、リリーは同意するように頷いた。


「そうよ。遠慮なんていならいんだから、さっさと食べなさいよ!」

「は、はい……いただきます!」


 上からの物言いに普段だったら反論しているところだろうが、今のシオはサンドイッチに釘付けだ。ミハルやリリーの方には目もくれない。


 シオはドキドキしながら大きな口を開け、そのわんぱくな見た目のサンドイッチにかぶりついた。


――シャクッ! シャキッ!


 噛みついた瞬間、小気味よい音が響き、口の中にマヨネーズのほどよい酸味が広がった。


 うっとりと目を閉じ、ゆっくりとその味を噛みしめる。


(んん~……! パンはしっとり、野菜は新鮮! マヨネーズの酸味と人参のほのかな甘みの相性抜群……!)


 次は少し場所を変えて二口目。先程とは少し違う風味が口に広がった。


(んっ、この、適度に塩気の効いた味は……もしかして、茹で鶏⁉)


 カッと目を見開き、囓った断面をよく見てみると、野菜の奥に薄切りされた茹で鶏が何枚も重なって挟まっていた。


 茹で鶏には香辛料がまぶされているようで、ピリリとした刺激が味を引き締めている。


――くぅぅぅぅ


 食べているのに、何故か余計にお腹が空いてきた。


 シオは飲み物で喉を潤すことも忘れて、中身のつまった量感たっぷりのサンドイッチを貪った。


 ずっしりと重たくて、育ち盛りの少年が喜びそうな見た目のサンドイッチは、みるみる小さくなっていき、あっという間にシオのお腹の中に収まってしまった。


「はぁ……なんて贅沢なサンドイッチだったんだ……」


 空になった包み紙を呆然と見つめながらつぶやくと、隣でリリーがクスリと笑った。


「ふふっ、シオってば大げさね! ほら、まだまだ美味しい物はたくさんあるんだから、休んでる暇ないわよ!」


 そう言うと、リリーは皿に山積みになっているパイを二つ取り、一つをシオに差し出した。


「これ、私のイチ押しなの。ピクニックの時しか作ってくれないのよ」

「そうなんですか」


 受け取った一口大のパイは、手で持ちやすいように半分が紙に包まれていた。紙から出ているパイには黄金色の焼き目が付いている。


「んん~! この味、久しぶり~!」


 パイを口にしたリリーは、幸せそうに頬を押さえた。


(中身は何だろう?)


 一口サイズで作られたパイは、中身が出ないようにしっかりと生地で包まれているので外からでは分からない。それでも、ふんわりと漂う甘さを纏ったバターの香りが美味であることを主張していた。

 

 シオはワクワクしながらパイに歯を立てた。


――さくっ


 一口食べた途端、口の中に果実の甘酸っぱい味が広がった。


「いちご?」


 尋ねるように視線を上げると、リリーが自慢気に顎を逸らした。


「それだけじゃないわ。ブルーベリーとラズベリーも入ってるのよ!」

「早摘みのベリーたちだから、はちみつで甘さを足してるんだけど……甘すぎた?」


 ミハルが不安そうにシオを見る。


 シオは首を振って二口目を食べた。


「ううん、美味しいよ」


 甘ったるくなくて、何個でも食べられそうだ。


 リリーはすでに2個目に突入している。口元に赤いベリーソースを付けた姿はとても子どもらしい。


「良かった! 食べたい物があったら言ってね。取り分けるから!」


 ミハルは二人の食いっぷりに満足したように朗らかに言うと、取り分け用のナイフとフォークを構えた。

「45.ピクニック③」おわり。

「46.ピクニック④」につづく。

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