表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護像職人  作者: 猫松ぺ子
第1話 守護像職人の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/89

7.捜索④


「おや、ミハル君だけですか?」

 

 昨日の雨が嘘だったかのような翌朝。

 煌めく朝日を浴びながら、クロードが台所にやって来た。


(そうだった!!今日ってクロードさんがちぃの確認をする日だった……!)

 

 何か忘れていると思ったら、一番忘れてはいけないことだった。


 ミハルは火に掛けた鍋をお玉でぐるぐるとかき回しながら、


「お、おはようございます。クロードさん」

 

 なるべく平静を装って、笑顔でいつも通りの挨拶をする。

 

 そんなミハルを、クロードはジッと見る。


「シオ君はどうしました?」

 

 ミハルの心臓が跳ね上がる。


 クロードはいつも通り、手紙の束をテーブルに置き、椅子に座って足を組んだ。いつもと違うのは、その視線が手紙ではなくミハルに注がれていることだ。

 

 ミハルはクロードから顔をそらし、鍋の中に視線を落とす。


「シオは、その、ちょっとまだ寝てて」

 

 ピクリ、とクロードの片眉が持ち上がる。


「寝てる?」


 声のトーンが一段下がった。マズい。


「そ、そうなんですよ!起こしに行ったんですけどね!!まったく困っちゃいますよね、あははは!」


 クロードに笑顔を向けながら、一心不乱に鍋をぐるぐるぐるぐるー


「ミハル君。それ、掻き混ぜすぎじゃありません?」

「えっ!あ、えっ!?」


 どうやら勢いよく掻き混ぜすぎていたらしい。鍋の中で波が立ち、ぱしゃん、とスープが跳ねて手に飛んできた。


「あっつぁっ!」


 お玉をガシャンと床に落としてしまった。


「大丈夫ですか?ミハルくん。今日は落ち着きがないですね」

「え、いやぁ、そ、そんなことないですよ!?通常運転ですよ!バッチリですよ!?」

 

 濡れた布巾で手を冷やしながら、ミハルの視線はあちこちさまよう。

 

 クロードは銀縁眼鏡を押し上げて、ミハルを値踏みするようにジッと見つめた。


(あ、怪しまれてる……?)

 

 ゴクリ、とミハルの喉が鳴る。手にじっとりと汗がにじんできた。心臓が早鐘を打つ。

 が、


「そうですか」

 

 クロードはそれ以上追求することなく、ミハルから視線を外した。


(良かったぁ……!)

 

 クロードに気がつかれないように、ミハルはホッと息を吐き出した。どうやら疑われていたわけではないようだ。


「今、コーヒー入れますね」

 

 ミハルはクロードのマグカップを食器棚から出し、いつものようにコーヒーの準備をする。


(神経質になりすぎてたかな)


「では、私がシオ君を起こしに行きましょう」

「いやいやいやいやいや!!」


 クロードがゆったりと台所から出て行こうとするので、ミハルは慌てて進路を塞いだ。何が「では」なのか分からないが、クロードを行かせるわけにはいかない。


「そんな雑用でクロードさんのお手を煩わせるわけにはいきませんよ!!僕が後で行きますから!!」

 

 頭突きをする勢いでクロードに向かっていくが、クロードはやんわりとミハルの身体を押し返した。


「いやいや、ミハルくんは食事を作るという大事な使命がありますし、私が起こしに行きましょう」

 

 颯爽と台所を出て行こうとする。


(いや、待って待って!行かれたらバレちゃうから!マズいから!!!)


「いやいやいやいや、シオの部屋、今、足の踏み場もなくて危険だし熱は出てるし、クロードさんが入るのは如何なものかと思われますから!!!」

 

 クロードの背に向かって叫ぶように言うと、クロードはピタリと足を止めた。


(良かった、止まってくれた)

 

 ホッと胸をなで下ろすミハルだったが、


「熱?」

 

 つぶやいたクロードの一言に、ミハルの表情が固まった。

 

 振り返ったクロードは、穏やかな微笑を浮かべ、鋭く冷たい瞳でミハルを見つめる。


「ミハル君?」

 

 ミハルは、全身から血の気が引くのを感じた。

「7.捜索④」おわり。

「8.ベッドの中のシオ」につづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ