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守護像職人  作者: 猫松ぺ子
第2話 守るもの、守られるもの

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41.準備①


(あの夫妻は何を企んでいるんだろう?)


 リリー救出の翌日。


 シオはここ最近と同じようにリリーの部屋に向かいながら、考えを巡らせていた。


 昨晩、リリーの両親が言っていた策というのが気になって仕方がない。


(あの口ぶりからすると、リリーとポポの仲を取り持つのに良い状況を作り出してくれるみたいだったけど……)


 会長からは「楽しみにしていておくれ」と自信たっぷりに言われたが、全くウキウキもワクワクもしなかった。


 むしろ、夫妻の作戦について考えを巡らせれば巡らせるほど、口がへの字に曲がっていく。


(そんな状況をどうやって作るつもりだ? あのリリーのことだから、普通に話し合いの場を設けても絶対に逃げ出すだろうし……もしかして、私とリリーとポポを、逃げ場のない場所に閉じ込める気でいるとか?)


 ぞわっと背筋に冷たいものが走る。


 そんなことになったら最悪だ。


 ポポと二人だけで閉じ込められるなら大大大歓迎だし、逆に自分から閉じこもりにいきたいぐらいだが、そこにリリーが加わることだけは願い下げだ。


 リリーがその場にいたら、絶対にポポはリリーの元へ行ってしまうだろうし、リリーはリリーでポポを避けようと攻撃を繰り出すに違いない。そんな中に閉じ込められるなんて悪夢でしかない。


(そもそも、リリーと私の仲が良いと思っているのはあの人達の勘違いだし……)


 リリーとの関係が築けたとは言えない以上、どんな策があってもリリーとポポの仲を取り持つことなどできないだろう。


(きっと今日だって、リリーに避けられっぱなしだろうなぁ)


 案の定、リリーの部屋には彼女の姿はなく、代わりに数人の使用人が部屋の中をパタパタと動き回っていた。


「さぁさ、テキパキいくわよぉ~!」


 突然、ポーラの声が響き、シオはビクッと肩を振るわせた。


 視線を向ければ、ポーラが部屋の中心で景気づけとばかりに手を叩き、メイド達に指示を出している。


 忙しそうなのにもかかわらず、どこかウキウキとした雰囲気だ。

 

 そんなポーラとは対照的に、シオの顔には渋みが増す。


(ポーラさんに会うのは気が進まないな……)


 昨日はポーラのお説教を上手くかわせたと思っていたのだが、結局、寝る直前になってポーラから呼び出しがあり、キッチリしっかりクドクドとお説教の続きを受けたのだ。


 聞き流す努力をしていたので内容は記憶に残っていないが、それでも耳にはポーラの声がへばりついているような気がする。


 当分、ポーラの声は聴きたくなかった。


(それに、リリーがいないんじゃ私がいる意味もないからな)


 もっともらしく理屈を付けて、静かに扉を閉めて立ち去ろうとしたのだが、


「シオさん! そんなところに突っ立ってないで、早く手伝ってくださいな~」


 めざといポーラに見つかってしまった。


 シオが渋々閉めかけていた扉を開けると、素早く近づいてきたポーラに大きな籐のトランクを押しつけられた。


「今日は忙しくなりますからねぇ~」


 歌うように言いながらポーラは室内に舞い戻る。


「……はぁ」


 シオはポーラに気が付かれないようにため息をつくと、続いて室内に入った。


「忙しくなるって、何かあるんですか?」


 気持ちを切り替えるように尋ねる。


 部屋の中には大小様々なトランクが積み上げられ、メイド達は広げたトランクに服やら小物を詰め込んでいた。これからどこかに行く予定でもあるのだろうか。


 疑問に思っていると、ポーラは足を止めて不思議そうな顔で振り返った。


「あらまぁ、奥様から聞かされなかった? 今日はみんなでピクニックに行くんですよぉ」

「ピクニック?」


 意外な言葉にシオは目を瞬いた。


(あ、もしかして……会長が言っていた策って、これのことか?)


 あれこれ考えていたのにいささか拍子抜けしてしまったが、同時に最悪な状況に放り込まれずにすんだことにホッとする。


「何かあってはいけませんからね~。着替えのお召し物に、膝掛け、ストール、それからお嬢様がお気に入りのクッションもあった方がいいわねぇ~」


 大きな独り言を言いながら、ポーラは部屋の真ん中に広げられた敷布の上へ必要な物を置いていく。


「お昼前には出発しますからね~。シオさんもほら、どんどん詰め込んでいってくださいな」

「分かりました」


 素直に指示に従って、敷布の前に移動すると抱えていた籐のトランクを広げた。


 敷布を挟んだ向かい側には、二人のメイドがシオと同じくトランクを広げて荷物を詰め込んでいる。


「皆でお出かけなんて、久しぶりね! 楽しみだわ」

「そうね、忘れ物がないようにしなくっちゃね!」


 二人のメイドもポーラに負けず劣らずの浮かれっぷりだ。周りに花が飛んで見える。シオよりも随分年かさに見える二人だが、目を子どものように輝かせていた。


 そんな二人を見て、シオはこっそり息を吐く。


(この準備が無駄にならなきゃ良いけど)


 リリーはいまだに心を閉ざしている。そんな中、ピクニックに出かけようと両親に言われても、一緒に行くだろうか。


(昨晩の疲れが残っているから、とか、外出を拒否する理由は適当につけられそうだし)


 行かない可能性の方が高い。


 そうと分かってはいるのだが、シオは敷布に置かれたシャツを手に取ってトランクに詰めた。


(でも、ここでは余計なことは言わず、指示に従った方が身のためだろうな)


 昨日、ポーラの逆鱗に触れてお説教を食らったばかりだ。機嫌が良さそうなポーラはそっとしておくに限る。


「さぁさ、どんどん行くわよぉ~」


 ポーラが張り切ってどんどん敷布の上に荷物を積み上げていく。


 シオは黙って籐のトランクにリリーの服を詰めることに専念した。

「41.準備①」おわり。

「42.準備②」につづく。

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