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守護像職人  作者: 猫松ぺ子
第1話 守護像職人の少女

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5.捜索②



「ちぃ、いなかったね……」

「なーん……」

 

 疲れ切った表情でシオとテトは台所の椅子に座り込んだ。

 

 結局、店内を探し回った後、続きのクロードの応接室、台所、備品室、ミハルの部屋、浴室棟と調べていったが、どこにもいなかった。


「ミハルも帰ってこないね」

「なーん」

 

 ミハルが工房を出て、だいぶ経っていた。帰ってこないということは、ミハルもまだちぃを見つけていないのだろう。


「よし」

 

 シオは気合いを入れて立ち上がった。


「テト、私も外探してくるね」

「んーなぁ?」

 

 テトが大丈夫か?というようにこちらを見てくる。


「うん、平気だよ」

 

 これだけ部屋を探しても見つからなければちぃは外に出てしまった可能性が高い。


「テトはちぃが戻ってきたらお願いね」


 シオがテトの頭を撫でると、テトは珍しく、ぐるると喉を鳴らした。





 昼間は人が多いこの町も、夜になるとひっそりと静まりかえる。

 

 若手職人が多く集まるカペロには、大都市と比べて飲み屋が少ない。そのため、夜中に道を歩いているのは訳あり者か野良猫くらいだった。

 

 そして大都市と異なる点がもう一つ。


(灯りを持って来れば良かった……)

 

 シオは工房を出てすぐに後悔した。

 

 大都市と違い、カペロのように小さな町に夜の灯りは少ない。


 大きな通りであれば、ぽつん、ぽつん、と街灯はあるが、一本小道に入ってしまえば頼りになるのは星や月の明かりと、家々から漏れ出る灯りだけだ。


 しかし、


(さっきまで晴れてたのに)

 

 シオは忌々しげに空を見上げた。


 分厚い雲が空を覆っている。星はおろか月さえ見えなかった。


 これでは小道を歩くのは危険だろう。大通りでちぃを探しつつ、ミハルと合流するのが良さそうだ。

 

 シオは出がけに羽織ってきた、濃緑色のケープコートの前を掻き合わせた。丈は足元まであるが、冷気は容赦なく身体から体温を奪っていく。


(ちぃ、大丈夫かな……)


 守護像は石なので外気温に体調を左右されることはない。それでもこんな寒空の下、たった一匹でいるかもしれないと思うと胸が締め付けられるようだった。

 

 早く見つけ出して、家に連れて帰ってあげたい。

 

 シオは暖色の明かりの下、夜の町を歩き出す。

 

 野良猫の寂しげな声が、眠りに沈む町に響いた。





「さっむ……!」


 冷たい風が吹き抜け、ミハルは身体を震わせた。


 夜の町を徘徊し始めてだいぶ経つ。息で赤くなった指先を温めるのもそろそろ限界だ。


「どこにもいないんだもんなぁ」

 

 思わず弱音が口から漏れる。ちぃはリス型の守護像だ。それほど遠くに行ったとは思えない。工房の前の大通りを中心に、いくつかの裏通りを回ってみたが収穫はゼロだった。


(もしかして盗まれたんじゃ……)

 

 嫌な考えが頭をよぎるが、すぐに打ち消した。


 工房には守護像のテトがいる。そう安々と悪意のある人間が入り込めるはずがない。


 さて、次はどこを探そうか。


 思案しながら天を仰ぐと、頬に雫が落ちてきた。


「え?」

 

 と思う間に、パラパラと雨が降り始める。


「うわぁ、こんな時に限って……」

 

 ミハルは顔をしかめた。ランタンの火が消えることはないが、視界が悪くなって探しにくくなってしまう。


(一度工房に戻った方がいいかなぁ。痺れを切らしたシオが探しに来そうな気がするし……)

 

 シオにはできれば温かい工房にいてもらいたい。そう思いながら、空振りだった路地を抜け、大通りに出た時だった。


「ミハル!」

 

 名を呼ばれ、ミハルは飛び上がった。

 

 声がした方を振り向くと、


「シオ!?」


 フードを被って頬と鼻の頭を赤くしたシオが、ランタンも持たずに立っていた。

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