表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護像職人  作者: 猫松ぺ子
第2話 守るもの、守られるもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/89

19.リリーの部屋②

――シャッ‼

「ちょっと何⁉ いきなり開けないでよ‼」

 

 寝台の上には、大量のクッションに突っ伏したリリーの姿があった。


 こちらを見もしないで不服の声を上げるリリーに、シオは仏頂面で軽く頭を下げる。


「それは失礼しました。お返事がなかったので」

「なんですって⁉」


 リリーはわずかに顔を上げ、シオの姿を認めると鬱陶しそうに顔をしかめた。


「……あなた、さっきの新人じゃない。何の用?」

「夕飯までの間、おしゃべりでもどうかと思いまして」

「そんなの要らないってさっきも言ったでしょ⁉」

 

 リリーはスパッと言い放つと、シッシと野良犬でも追い払うような仕草をしてみせる。


 予想通りの反応に、シオは溜息をつきたくなった。


 すると、


「それ……あなたが摘んで来たの?」

 

 リリーがスッとシオの右手を指さした。


「あ、これ?」


 シオはタンポポの花束を顔の横に掲げる。


「これは――」

「ダメよ! そんな風に握ったらすぐに枯れちゃう。花が可哀想だわ」


 リリーから飛び出した予想外の言葉にシオは驚く。


(花を労る心はあるんだ)


 シオの感心をよそに、リリーはベッドから素早く起き上がると、机の上に置いてあった空の花瓶を持ってきた。


 ゴブレットの形のような小ぶりなもので、側面に縦模様が刻まれている。それ以外の装飾はない。白色のつるりとした質感は、生けた草花をより活き活きと魅せそうだ。


「何ボケッとしてるの? これに水を汲んで挿しておいてちょうだい」

「あ、はい」


 花瓶を押しつけられ、シオは慌てて受け取った。


 リリーは出窓に視線を送る。


「窓際にでも飾っておいて。……いつも、そこに置いてくれてたから」


 窓から入る西日に照らされ、その横顔はどことなく寂しげだった。


「花、好きなの?」


 シオの質問にリリーは一瞬口ごもる。


「別に? ただ――っ⁉」


 リリーがシオに顔を向けた瞬間、その表情が強ばった。


(え?)


 否、リリーの視線はシオを飛び越え、部屋の入り口に向けられている。

 

 パッと振り返ると、扉がいつの間にか少し開いており、ポポが顔を覗かせていた。


「ポポ! 待っててって言ったのに……!」

「なんだ、そういうこと」


 感情を押し殺した声。


 ハッとして振り返ると、リリーの煮えたぎる瞳がシオを射抜いた。


「っこ、これは――」


それ(・・)を私に近づけさせないで! 一緒に出て行って‼」

 

 リリーはシオの背中を押し、部屋の外へと追い出しに掛かる。


 シオは慌てて扉にしがみつきながら、リリーに向けて花を差し出す。

 

「ちょっ、待っ‼ せめて花だけでも――」

――パシンッ!


 リリーはシオの手を払いのける。廊下に黄色い花が四散する。


それ(・・)が摘んだ花なんていらないわ!」


 リリーはポポを睨み付けると、シオの鼻先で乱暴に扉を閉めた。


――バタンッッッ‼‼


 空気が大きく震え、一転して廊下は静まり返る。


 シオは、知らず知らずのうちに詰めていた息をそっと吐いた。


「……ごめんね、ポポ。失敗しちゃった」

「ぽぉ……」

 

 元気のないポポに、掛ける言葉を思いつかない。

 

 シオは身をかがめると、廊下に散らばったタンポポを拾い集める。


(途中までは良かったと思うんだけど)


 ポポを目にした瞬間、リリーの態度は明らかに変わった。


「ぽぉ」


 ポポも花拾いを手伝ってくれるらしい。一輪口にくわえて持ってきてくれた。


「ありがとう」


 シオはポポの頭を撫でて、花を受け取る。


(リリーは何でポポを嫌うんだろう? ううん、あの態度はどっちかっていうと、遠ざけたい……?)

 

 なぜ、そんな態度を取るのか。

 

 シオは、自分を見上げるつぶらな瞳を見ながら思いを巡らせた。

「19.リリーの部屋②」おわり。「20.リリーの部屋③」へつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ