13.手掛かり④
「どうしたのかな?」
ミハルが外の様子をよく見ようと、ドアを開けた時だった。
外の冷たい空気と共に、ドアの隙間からするん、と猫が一匹入ってきた。
茶トラの子だ。
「にゃっ」
室内に入ってきた茶トラは、元気よく挨拶すると、クロード、ミハルと顔を見て、最後にシオを見た。
目が合った瞬間、
「ぐはっ」
胸に突き刺さった。
大きな丸い顔に小さな耳、もっちりとしたお腹に太い尻尾。思わず抱きしめたくなるフォルム。短い手足は、さらに愛らしさを増長している。
「か、かわいい……」
シオは吸い寄せられるように手を伸ばすが、
「にゃーんっ!」
指先が触れる寸前でかわされてしまった。そしてドアからまた庭へと戻ってしまう。
「拒否されましたね」
「避けられちゃったねぇ」
冷ややかなクロードと苦笑気味のミハルに言われ、シオは肩を落とす。
(テトもだけど、なんで私はあまり触らせてもらえないんだ?)
がっかりしていると、
「なーん」
テトからも呆れたような声が上がる。
すると、
「にゃん」
茶トラの子が戻ってきた。
再びドアから室内に入り、シオの手が触れられそうなほど近くまで歩み寄ると、
「にゃんにゃー」
と、上目遣いでこちらを見てくる。
(なでなでしても良いということ?)
再度手を伸ばすが、やはり触る寸前で避けられ、またドアから外へと出てしまう。
「な、なぜ!?」
シオは膝から床に崩れ落ちた。
それをクロードは白い目で見ている。
「遊ばれてますね」
ミハルは慰めるように、沈むシオの肩を叩いた。
「残念だったね」
シオが名残惜しげに茶トラの後ろ姿を見つめていると、茶トラは数歩行ったところで止まってこちらを振り向いた。
「にゃんにゃー」
と、もう一度鳴く。
触ろうと手を伸ばせば距離を空け、触らないと分かると距離を詰める。
「君はツンデレさんなの?」
かわいすぎる、とシオの目尻が下がる。
「あはは、小悪魔さんだねぇ」
ミハルも茶トラの行動を微笑ましそうに眺めている。
そんな二人と違い、クロードは何やら考え込むように顎に手をやり、鋭い目つきで茶トラを見ている。
「もしかして、何かを訴えているのでは?」
シオと茶トラの攻防を見ていたクロードは、腕を組み、ぼそり、とつぶやいた。
「え、もしかして、自分に着いて来い、的なことですか?」
ミハルの考えにシオは驚いたように茶トラを見る。確かに誘い出すような動きに見えなくもない。
「え?そうなの?」
茶トラに尋ねると、茶トラは元気よく返事をした。
「にゃんっ!」
三人は顔を見合わせ、慌てて各々上着を持って来た。これは何やらありそうだ。
「ついて行ってみよう」
上着を羽織ると、三人は茶トラを先導に外へと出て行った。
●
「なーんー」
残されたテトは、三人を見送ると、やれやれと言うように息をついた。
友だちの猫3匹は、そんなテトを労うようにおでこを擦り付ける。
テトは少し疲れたように
「なーん」
と鳴くが、労って欲しい三人にこの声が届くことはなかった。
「13.手掛かり④」で手掛かりシリーズは終了です!




