新しい制服
「やだ……凛ねえちゃん、春馬のやつ、私よりウエストが細いよ! こんなに紐が縛れるなんて!」
二番目の姉、七々夏は俺の後ろでリボンを縛りながら叫んだ。
痛い! 細く縛りすぎだ。
俺が痩せてるワケじゃなくて、七々夏が夜な夜なお菓子食べてるのが問題なのでは……。
俺がじとーっとした目で机の上の積まれたお菓子を見ているのに七々夏が気が付いて
「あ、そのポッキーは七々夏のだからね。今日仕事終わったら食べるんだからね。絶対ダメ」
と牽制した。いや、俺はイチゴつぶつぶポッキーとか食べないから……。
「うん、新しい制服いいわね。オーダーして正解。生地にもこだわったの。良いフレアが出てる」
四月から店の店長になった一番上の姉、凛ねえは薄く微笑んで言った。
私が店長になるなら、制服新しくするわよ。こんな古臭いフリフリ嫌だわ、とデザイナーさんと一か月みっちり打ち合わせして作ったメイド服は、前よりクラッシックでフリルも少なく、生地も重くて良い物を使っているようで、上質な服になった。
それは良いと思うんだけど、相変わらずスカートだ。
ロングフレアスカートだから、少ししか足が見えないからといって、やはり抵抗がある。
他の子はみんなストッキングだけど、俺は黒タイツが許された。
それにしても……俺はスカートを少し持ち上げて足を出した。
「どっからどう見ても、男の足なんだけど」
俺は不満を漏らす。
別にパンツ型のメイド服でも良くないか?
凛姉ちゃんはチラリと一瞥して
「足首しか見えないわよ。ていうか、本当に足細いわね、というか貧弱。男とか言うならもうちょっと筋肉付けてよ」
凛ねえは一瞥して吐き捨てた。
「そうだよ、七々夏より細くてキレイ、ズルい!」
だから七々夏は自分の責任では……?
凛ねえは、自分の髪の毛をグッと縛りなおして、立ち上がった。
「さ、今日もがんばって行きましょう。春馬のメイクもよろしく」
七々夏は「おっけー、まかせて」と机の下から巨大なメイクボックスを取り出した。箱の上にはウイッグも乗っている。
「よろしくおねがいします……」
七々夏があまりにも楽しそうで俺は苦笑する。
実家の喫茶店で女装して働き始めて四か月。
俺は女装してバイトする状況に少しずつ慣れてきた。