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5.取調室に入ると

コンニチワ!朝霧 鋼です。

異世界に来て約1年と2週間。

僕は初めて人間の街にやって来ました!

そこで街への入場者の列へとキチンと並び、案内に従って大人しく審査を受けて、ちゃんと入場料を払いました!

するとどうでしょう! たくさんの鎧を着た衛兵さん達が丁寧に街の中にある詰め所の取調室的なところへ案内してくれたのです!

そして今はそこでテーブルを挟んで正面に座る厳ついマッチョな隊長さんとお話してマース!




・・・なんでやねん。



「・・・で? お前さん、この金貨どこで手に入れたんだ?」


「・・・どこって、友達に貰ったんだが?」


「この金貨を貰ったぁ? おいおい、こんなスゲーもんくれるヤツが居るってのか?」


「確かに金貨は高いだろうけど、いっぱいあんだろ?」


「いやいや、確かに金貨自体はたくさん流通してるがな・・・しかし」


「しかし?」


「これは古代帝国の金貨がじゃねーかっ!! 現代の金貨にしたら100枚以上の価値があるんだぞ!?

 そんなモンを友達に貰っただぁ?」


「は?」



古代帝国ってなんぞ?



「古代帝国ってなんぞ?」


「あ?」


「・・・ちょっと待て」


「ああん?」




幸い荷物の没収まではまだされていないので、丁度腰にぶら下げていた金を小分けにした皮袋をテーブルの上に出す。

そしてその中身の金貨50枚をジャラジャラっとテーブルの上にぶちまけた。



「もしかして、コレ全部その古代帝国の金貨ってヤツなのか・・・?」


「おま・・・っ!? こんな・・・!?  か、確認させて貰うぜ・・・」



と、驚きつつも金貨を1枚1枚拾っては検分してを繰り返す隊長さん。



「いやこれおま・・・、もっとスゲーのも混ざってんじゃねぇか!? あ!?これ神王国のじゃないのか!? それにこっちはバグラルセエット朝の・・・! こいつは・・・」




更になんかあるのか。

この隊長、この見た目でインテリなのか。 なんか詳しいな。 金貨オタクなのか?

にしてもコレは予想外の展開だな。

なんかさっきから知らん国やら王朝やらの名前がいっぱいだ。

もはや俺、デトから貰った金で一生遊んで暮らせんじゃねーの?




「はぁ・・・こんなに持ってるとはな」


「あ、終わった?」


「ああ、1枚や2枚ならまだしも、皮袋一杯のを見せられるとは思わなかったぜ」


「どうせならもっと見るか? まだ何袋かあるぞ?」


「どんだけ持ってんだよ!?」


「あー・・・あと8袋分くらい?」


「マジかよおい・・・いや、結構だ」


「あ、そう」


「こんだけ堂々と見せ付けられると、盗んだとは思いづらくなるな・・・」


「いやだから盗んでないから。 友達に貰ったんだって」


「はぁ・・・、仮にだ。 お前さんの話を信じるとして、こんだけのモノをくれるお友達ってのは何者だよ?」



あー・・・、まぁ訊かれるよな。 言っていいのかな?

取り敢えずそれとなく探りながら言ってみるか。



「すげー長生きなヤツなんだよ」


「長命種か・・・にしても気前良すぎだろうよ」


「そいつの家にはそんな金貨が文字通り山ほどあったからな」


「こ、これが山ほど!?」


「ああ」


「それだけ溜め込んでるんなら、さぞ名の通った富豪なんだろうな・・・大貴族かなんかか?」


「貴族ではないな」


「商人か?」


「いや、商人でもないな」


「ならなんだよ? まさか王族なんて言わないだろうな・・・」



それも違う。 ついでに言えば人型でもないよ。



「・・・ドラゴン」


「は?」


「だからドラゴン」


「ドラ・・・ゴン?」


「そう、ドラゴン」


「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」


「どうした? イカれたか?」


「ちげーよ! いや、ドラゴンってお前な・・・」


「なんだよ?」


「ドラゴンが友達とかあり得ないだろ。 ドラゴンだぞ?」


「ドラゴンだが? 友達になれるし、一緒にも暮らせるぞ?」


「一緒に暮らす!?」


「ああ、俺の友人は見た目厳ついが、優しいし面倒見のいいドラゴンなんだ」


「面倒見のいいドラゴン・・・」


「なんだよ?」


「・・・お前、受付所で“水晶検査”は受けたか?」


「なんだそれ?」


「はぁ・・・、すまない。 こちらの手落ちだな」


「なにが?」


「街の入場者にはな、受付所にある“審判の水晶”に触れてもらい、犯罪の有無や簡易の経歴調査をさせてもらうことになってるんだ」



ああ、そういうのどっかで読んだか視たか、したことあるな。

アニメだったか、ラノベだったか・・・。



「初耳なんだが?」


「それがこちらの手落ちだ。 お前さんの出した金貨に気を取られて、すっぽ抜けたんだろ」


「・・・そんなんで街の警備大丈夫なのか?」


「ぐ・・・そんだけ衝撃的だったんだよ! 古代帝国の金貨出して釣りくれとか!」


「ちなみにソレ受けてたら、俺はココに来なくても良かったなんてオチは無い・・・よな?」



そう尋ねると気まずそうに、そっと目を逸らされた。



「おい!?目を逸らすな!」


「いや、本当に申し訳ない」


「はぁ、んで? どうすんだよ?」


「今水晶を持って来させる・・・おい!トビー!“審判の水晶”を持ってきてくれ!!」



隊長が扉に向けてそう声を掛けると「ハイ!」という元気な返事と共に遠ざかる足音が扉の外から聴こえてきた。

それから少しの間、無言の時間が続くと先程とは逆にこちらに走ってくる足音が聴こえ、続けて外側から扉がノックされた。

ノックに対して隊長が応じる。



「入れ」


「失礼します! “審判の水晶”をお持ちしました!」



そう言いながら入ってきた衛兵の腕には一抱えほどの太さで、高さは30cm程の六角柱?型の半透明の水晶体と、

ソレの先を差して立てるのであろう10cm程度の高さ台座があった。

台座の側面には謎のスリットがある。



「テーブルの上にセットしてくれ」


「かしこまりました!」



キビキビと動く衛兵の様子を見るに、どうやら台座を置いて、台座の穴に水晶を嵌め込むだけでよいらしい。



「さて、待たせたな」


「ああ。 これが“審判の水晶”ってやつか」


「そうだ。 早速だが、コイツに触れてくれ」



と、水晶を示されたので右手を水晶の上から被せる様に触れてみる。

すると水晶が一瞬強く発光し、光が収まると水晶の色が白く染まっていた。



「・・・なるほど。 犯罪歴は無いようだな」



どうやら水晶が白く染まれば、色の通り真っ白らしい。



「だから言ったじゃねーか」


「うっ。さ、さて次は経歴か」



そう呟きながら台座の側面のスリットから1枚の紙が出てきた。

そしてその紙を手に取り、隊長が目を走らせる。



「ふむ・・・出身がニホン? 聞いたことの無い地名だな。 ここに来る前は・・・・・・なんだこれ?」


「どうした? ああ、ちなみにニホンってのはド田舎マイナーな小さな島だよ」



おお、日本とか出るのか。

まさか出ると思わなかったのでテキトーに言っておく。

つか、どうやって印字されたんだろうな、あの紙。



「・・・この、“終の森”に居たってなんだ? あそこはスゲー強い魔物の住処で、人なんか直ぐ食い殺されるような場所だぞ? 住める場所じゃないだろ・・・」


「“終の森”って何処よ?」


「お前がいた場所だろ?」


「そうなのか?」


「そうなんだよ!」


「そう言われてもな・・・俺、この辺の地名とか知らんし。  あ、ここから馬車で7日くらいのとこにある森になら居たぞ」


「そこだよ!!」


「ああ、なるほど。 あそこはそんな名前だったのか」



知らんかったわ。

随分と仰々しい名前だこと。

そんで俺、そんなとこで狩りを教わってたのか・・・。



「その森の手前まで友達に送ってもらったんだよ」


「・・・ドラゴンの、か?」


「ああ、ドラゴンのな。 背中に乗せてもらってな。 ドラゴンが街に近付くのはよろしくないってことでそこまでだったんだよ」


「確かにドラゴンに乗ったまま街に来られた日には大パニックになってたろうな・・・いい判断だ」


「そうかい」


「で、その後は・・・立ち寄った場所はなし、と」



盗賊の件が出て来るかと思ったが、出なくてホッとした。

しかし、どういう内容が書かれているんだろうな?



「なぁ、それ、どんな仕組みで何が書かれてるんだ?」


「ん?ああ、この水晶はな、触れた人間の魔力を読み取ってその人間の軌跡を大まかにだが辿ることが出来るんだ。 そして、その内容を台座の中にある魔法紙に転写するのさ。」


「ほうほう。 犯罪歴の有無の判断はどうやって?」


「ああ、触れた人間が殺人やら強盗強姦とか大きな犯罪を犯している場合に水晶は黒く濁るんだ。」


「・・・なんで?」


「コイツは秘宝だからな。 俺にも詳しくは分からんが、犯罪者の魔力ってのは濁ってるんだと。 それに反応するらしい」



犯罪者の魔力が濁るってのはなんでだろうな?

秘宝ってのは確か、ダンジョンから発掘される旧時代の魔道具の中でも特別なもののことだったか。

・・・そして俺、盗賊を殺しちまってる筈なんだけどな。 ああ、思い出すと気が重くなる。



「何で犯罪者の魔力は濁るんだ? あと、盗賊とか殺しても犯罪になるのか?」


「さぁ? 女神様がそうこの世界を創られたからだとは言われてるが・・・。 盗賊は殺しても罪にはならない。 言ってみりゃ害虫駆除みてーなもんだからな」


「害虫駆除・・・」


「ああ、あんなもん百害あって一利なしの連中だからな。 にしてもお前、ホントに何も知らないんだな・・・」


「これまでずっと田舎の島に居たからな。 ここが初めて来るの外の街だよ」


「そうかい。 なら色々と違いに戸惑うこともあるだろうが、楽しんでいってくれ」


「お? ってことはもう解放されるのか?」


「そうなる。 足止めして悪かったな」


「ホントにな?」


「ぐ・・・っ。 悪かったよ! 詫びに入街の金は俺が自腹で払っておく!」


「お、そいつはすまんね」


「はぁ、廊下に出て右に進んだ先の扉が出口だ。 そこまで送ろう」


「おう、頼んだ」



そういいつつテーブルに広げた金貨を回収しておく。

1、2、3・・・27・・・50!全部あった。

荷物の確認を終え、隊長と共に取調室を出て詰め所の出口へと向かう。

そして扉の前で立ち止まった。

隊長が押し戸を開くと、賑やかな通りの様子が見えた。



「おお・・・!」



道は灰色の石畳で、通りの両脇には建物もあれば露店も出ている。

商人や通行人を含め、結構な人数が通りを埋めていた。

無論種族も色んな人種がいる。 

すげぇ、異世界に来たって実感を強く感じる。

感嘆して通りの様子に見入ってる俺に、横にいた隊長が自慢気にニヤリと笑って声を掛けてきた。



「ようこそ、マルレットの街へ!」


「おう!」



そう応えて、俺は扉を出て街への一歩を踏み出した。

すると隊長は



「じゃ、俺はこれで。 お前さんはこの街を満喫してくれ」



そう言い残し立ち去ろうとした。

おっと、別れる前に訊いておかなきゃならんことがあった。



「なぁ、冒険者ギルドはどこにある? あと、この金貨を買い取ってくれそうな店も」


「ああ、冒険者ギルドなら、この通りを真っ直ぐ進んで、右に折れたらデカい青い屋根をした3階建ての建物が見える。 それが冒険者ギルドだ。 

その金貨もダンジョンなんかから発見される場合があるからな。 冒険者ギルドで買い取りもしてくれるぜ」


「おお、便利だな冒険者ギルド!」


「じゃ、世話をかけたな」



そう言って出てきた扉の中に戻っていく隊長の背に一言だけ



「おう、全くだ。 元気でな!」



そう声を掛け、俺は今しがた場所を聞いた冒険者ギルドへと向かった。


お読みいただき、ありがとうございました。

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