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3.この草原を進むと②

2話よりも短めです。

1話目が長過ぎた・・・。



走る。 走る。 朝霧 鋼(33)人生最速で草原を走ってます。

目的の場所まであと100mくらい。

走りながら左腕に魔法をまとわせる。

今回使用するのは《ドラグ・ブロウ》って魔法。

名が示す通りにデト直伝の魔法である。

発動しっぱなしの《ドラゴンズ・センス》と併せて使用するやや面倒な魔法である。

《ドラゴンズ・センス》で行う強化・機能拡張を腕に行う。

そうすることでドラゴンの腕が如き力や能力(アホみたいな丈夫さや爪でモノを斬る等が出来るようになる)を得るのだが、そのままでは人間サイズのままのドラゴンの腕ってことになる。

が、この《ドラグ・ブロウ》を使用することで、己の腕を媒介に魔力で擬似的にドラゴンの腕を再現し、それを振るうことが出来る。 狩りの時の俺のメイン攻撃方法でもある。

再現する腕のサイズによって消費する魔力も違うが、ここは太さ3m、長さ10mを想定して肘から先の腕を作る。

参考にするのは無論、デトの腕である。

そんな感じで脳裏で魔法を発動直前まで持って行き待機させる。 左腕の周りが集めた魔力のせいで陽炎の様に歪んで見えるが無視。

そしてそのまま走り寄る。



「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



俺の声と走る音に反応した全員が一斉にこっちを向いた。

位置的には丁度、右手に怪我した鎧男とその横でふらついてるフード。 その後ろにいる商人集団。

そして左手にはそんな連中に迫る賊の頭を先頭にした賊の集団を見つつ両集団の真ん中を突っ切るコースで走ってる。



「なんだ手前ぇ!? どこから出てきやがった!?」



残り30m切った位で俺を見た賊の頭が声を掛けてくるが無視。

連中に接触するまであと10m。


残り3m、2m、1m・・・



「おい!!止まれ手め」



・・・0!!



「どっせい!!!」


「ぇぶっ!?」

「ぎゃぁ!!!」

「いがっ!!」



俺は掛け声と共に待機させていた《ドラグ・ブロウ》の魔法を発動させ、走りながら左腕を内から外に向けて全力で凪いだ。

一瞬で顕れた魔力で形成された巨大な黒い竜の腕。

それに吹き飛ばされる賊共。

腕を振り切ったら、反動で丁度賊共を視界の正面に捉えるかたち足を止めることとなった。

が、自分でやったことだが、結果を怖くて確認できないので正面を向けない。

だが物音も気配もしなくなったのは分かる。 このままの体勢で10秒経つが呻き声1つしない。

恐らく全滅したのだろう。 きっと。 メイビー。

しかしずっとこのまま立ち尽くしている訳にもいかないので、ちらっと背後を確認すると驚愕の表情のまま呆けている生存者一同が見えた。 死んでしまった剣士君以外、怪我した鎧男も含めて皆生きているようだ。

だが視線が微妙に変だ。 俺より左を見て微妙に震えてる。

・・・左? 視線の先は《ドラグ・ブロウ》で作り出した俺の左腕の肘から先にある竜の腕だった。

ちょっと振ってみる。


すると全員がビクッ!!としたので、怖がらせてごめんの変わりに竜の腕で横転した馬車を起こしてやった。

そしてそのまま魔法を解除すると竜の腕は跡形も無く消えた。

俺は体の向きを変えるとそのまま連中に


















声も掛けず、全力で走り去った。




だっていきなり突っ込んでってしでかした内容の処理が俺の脳内で出来てないし、

そもそも何か聞かれても何も説明できないし、俺、異世界人とか言ったら不審者扱いされそうじゃん。

それに人を殺したって実感がわいて来たら取り乱す自信しかない。

魔力で作った腕だから感触が無かったのが不幸中の幸いだが、こんなこと人を殺しといて考えてもいいのかも疑問である。

あー・・・異世界の人間とのファーストコンタクトで、まさか人殺しをする羽目になるとは。

ああいう盗賊ってどこでも普通に出るのかな? もしかして治安悪い世界?

これからもああして殺し合いしなきゃならんのかね?

魔法での戦闘は、自分が魔法を使える今でも微妙に現実離れしてる感じがして、そこまで衝撃酷くなかったが、剣やら斧での殺し合いは無理だ。 

地球にも存在してた物での殺し合いとかエグ過ぎる。

あの剣士君の最期を思い出すと身体が震えて来るんだが・・・。

と、さっきから脳内に色んなことがグルグルしてるし、気持ちの整理も全く出来ていないので、早いとこ一人になりたかった。


この後、丸1日走り続けて、また街道脇の森で野営。 

もう狩りをする気力も無かったし、今はしたくも無いからつまみと酒をかっ食らった。

つまみは肉も食べたくなかったからチータラを少々。

そんだけでも吐きそうになったから酒で全部飲み込んだ。


それから更に1日、動く気力も湧かずに飲んだくれて過ごした。














鋼が去った後、放心状態から復帰した面々は事後処理をしていた。



「・・・さっきの人はなんだったのかしら?」



そう呟くのは鎧男の傷の手当をしている魔法を使っていたフードの女。



「さぁな・・・。 命を救われたのは確かだが、訳が分からなさ過ぎる。」



応えるのは手当てを受けいてる鎧男である。

この世界での魔法の効果なのか、薬の効果なのか、盾ごと斬られた腕もくっ付いた様である。



「そう、ね。 それにしてもあの連中を腕の一振りでとは・・・」


「ああ、あの盗賊共の頭はA級の賞金首“豪斧のイワン”だったし、魔道具の斧を持っていたのに、だ。

 それに何だったんだあの巨大な腕は? 人間の腕じゃなかっただろ」


「ええ、竜の腕の様にも見えたけど、まさかね・・・。

 私、あの腕が振るわれる時にイワンが斧で斬ろうとしていたのを見たわ」


「俺も見てた。 が・・・」


「・・・斧が一瞬と保たずに砕け散っていたわね」


「ああ、あれでも一応、イワンの賞金首と同じくA級の魔道具だった筈なんだがな・・・」


「ええ、それに考えすぎだとは思うのだけれど、あの人が走ってきた方角に街も村も無かったわよね?」


「ん? ああ・・・確かにそうだな。 あの方角にあるのは・・・」


「“破竜の山”と“終の森”・・・よね?」


「ああ。 あの辺には何かの部族が居るとも聞いたことも無い」


「私もよ。 あの辺に居るのは、それこそ魔物か、彼の“破の守護竜”ぐらいなものだと思ったのだけれど・・・」


「あの竜の腕・・・まさかな?」


「ええ、それこそまさかよ」


「まぁ、多分、遠征帰りの高ランク冒険者かなんかじゃないか?」


「その辺りが妥当でしょうね。 Aランク以上かしら?」


「そんくらいじゃなきゃ、あんな簡単に片付けられるかよ。

 俺達CランクじゃA級賞金首には勝てなかった」


「そうね、だからイスタも・・・」


「そう、だな。 イスタ・・・連れ帰ってやらないとな」


「ええ・・・。」



鎧男の横には、布で包まれた死んだ剣士の遺体があった。

2人はそちらへ視線を遣り、そう話を締め括った。

訳の分からない男の話よりも、今目の前のこと、そしてこれからのことを考えねばならない。


その2人と離れた場所で商会の面々も動いていた。



「うむ、荷物は殆んどが無事で、馬車は横転した弾みで後輪の軸が少し歪んでいるだけか・・・」



支店長と呼ばれていた男が馬車の側面にしゃがみ込み状態を確認していると、連れの少女達がが寄ってきた。



「支店長ー、マルレットの本店に救助要請送っときましたー」


「おお、ご苦労さん。 やっぱり、旅には伝達魔法の使い手が要ると助かるなぁ」


「馬車を押して帰る訳にも行きませんからねー。 あ、支店長押してきます? あの時盗賊を挑発した罰で!」


「あ、そうねぇ。 あの時は本当に焦りましたよぉ」


「いやいや、確かに私も冷静では無かったし申し訳ないとは思ってるけど、そんなことしたら死んじゃうからね?」


「えー、支店長使えなーい。 ピンチを煽るだけして何もしてくれない!」


「本当にねぇ。 そう言えば、さっき助けてくれた人、なんだったのかしらねぇ」


「あー、あの人! 何か大きな腕生やしてすごかったねー、ブンッて!」


「君達、私の部下だよな? な? しかしまぁ、あれは竜の腕にも見えたが、凄い力だったな・・・。 馬車も軽々と持ち上げていたしな」



そんな会話をしていると、馬車の反対側にいた熟女から声がかかる。


「みなさーん、食事の用意が出来ましたよー!」


「はーい、直ぐに行きますー!」


「支店長、取り敢えず食事にしましょぉ?」


「うむ、そうだな。 救援が馬を連れてくるまで此処から動けないしな」


「あ、私、冒険者さんたちにも声掛けて来ますねー」


「ああ、頼んだよ」


「冒険者といえば・・・剣士のイスタさん、残念でしたねぇ」


「そう、だな。 しかしこう言っちゃアレだが、相手が悪かった。 まさか“豪斧のイワン”がこんな場所に出るとは・・・」


「近道、しなきゃ良かったですねぇ」


「本当にな・・・」


「さ、ご飯を食べて、救助を待ってぇ、マルレットに戻ったら支店長は始末書頑張ってくださいねぇ」


「はぁー・・・、そうしよう。 そして、あの冒険者たちにも危険手当を出すことにしよう」


「それが良いですねぇ」




この会話の2日後、彼等はマルレットの街からやって来た救援に助けられて街への帰途につけることとなる。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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