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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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独尊と唯我独尊

あけましておめでとうございますー。今年も皆さんにとって良い年でありますように。

 少年は跳躍し起き上がろうとしている混合獣に向かって、白く輝き2m近くある棒を振りかぶった。ブン!と豪快な音から繰り出される一撃はまさに快感とも呼べる一撃だった。混合獣も何とか両腕でガードしたものの、明らかに防げている様子ではない。さらに、攻撃が当たった腕が少し経つと、ジュワジュワと肉が焼けるような音と共にドロドロと溶けていく。さすがの混合獣もこれは予想外だったらしく、完全にパニックになっている。腕の肉がボロボロになりボトボトと地面に落ちていく。

「っかしいなあ。普段相手にしてる奴はこんなに脆くは無いのに。まあ早く済むに越したことは無えよなあ。」棒をブンブンと自分の周りで回している。原理は不明だが、白く光る棒と少年が振る速さが合わさってとても美しく見える。

「なあ。もうコイツ倒していいよな?こんなのに町うろつかれるとかたまったもんじゃないんだけど。」つまらなさそうに少年は聞く。

「べ、別にいいと思うよ。あと出来るなら倒して・・・。」今の僕の脳内は生きて家に帰ることに支配されていたので、倒せるかとかは至極どうでも良かった。何ならこのまま逃げ出して家に帰ってもよかったが場の空気的に帰るわけにはいかなかった。

「わかった。じゃあこの俺が始末して・・・ってあれ?あの変な奴は?」慌てて辺りを見回すが、あの怪生物の姿はもう何処にも無い。

「あー逃がしたな。まあいいか。ところでお前、怪我は無いのか?」杖を突きながら少年が歩いてくる。

「掴まれた腕が痛いだけだよ。すごいね・・・。あんな化け物に物怖じせずに突っ込んで行ったのは僕が知る中では3人目だよ。」気の抜けた声で僕は話す。

「ほーん。ってことは俺以外にもあいつらと戦う奴がいるってことか?」

「そうだね。今日はお休みだったけど。僕の友達が一人。」

「今日はってことはもしかして日曜日以外にもあいつらっているのか?」

「僕が聞いた話だと週6で戦ってるらしいよ。日曜日はいないって聞いてたけど、もしかして君が倒してるの?」

「日曜日に関しては俺だが。週6であいつらの相手してる奴がいるのか・・・。お前のダチってことは同じ高校生だろうな。すごい高校生がいたもんだなあ。俺なんか倒してるだけで満足して帰っちまうのに。毎日とか体持たねえよ。」

「まあその子授業中はほぼ寝てるんだけどね。僕と同じ6組なんだけど・・・。そういえば名前を聞いてなかったね。僕は黒橋なんだけど君は?」

「俺か?俺は九道独尊(くどうどくそん)。阿原町の東にある極業寺(ごくごうじ)ってとこの坊さんの息子だ。将来的に俺も継ぐことになってるんだけど、如何せん学校を卒業するまでの間はすることが無くてな。こうして日曜の夜だけ出歩いていたんだが、高校に入ったあるときから人型のそのー・・・なんだ?よくわからん奴が人食ってる所を見たから親父に相談したらそいつは悪霊だから倒して来いって言われて倒してたら今日お前に会った。」本人は真面目に話してくれているのだが、相変わらず僕と話をする人物は次元が1つ違うようだ。

「そうだったのか。高校ってことは南隆盛高校通ってるの?」

「6組の一番前の席にいるんだけど後ろなんてほぼ見ないし。俺学校で何て呼ばれてるのか知ってるのか?極道だぜ?ひでえ話だ。」不満たっぷりといった顔で棒で地面を突く。少しコンクリートがへこんだのは見なかったことにしておこう。見た目からしてかなり強面だし、体格もいいので極道と呼ばれても仕方ないのでは?と内心思う。

「ひとまず話があるなら学校で。俺はいつもの奴を倒してから帰るから、お前もあんまり出歩かずに真っ直ぐ家に帰れよ。」

「ああその事なんだけどね。僕の友達は魂喰らいって呼んでたよ。」

「魂喰らいか。悪霊っていうよりはゾンビに近かったしそっちの方が呼びやすい。よしそれ貰った。じゃあな。」九道君はふらりとどこかへ行ってしまった。僕も夜の町から逃げるように家に帰った。


ドウイウコトダ。頭の中がグチャグチャに掻き回されているような感覚。久しぶりに飯にありつけつると思っていたらあのザマだ。腕の肉は溶け絶えず痛みが走る。あの小僧は何者なんだ。この前の少女といいこの町の少年少女はどこかおかしい。何か特別な物を持ったものしかこの町にはいないのか?俺が食べようとしていたあいつだって・・・。またしても下水道に逃げてきた。ここなら誰にも見つからないだろうしカエルのお気に入りの場所だから、交代した後も動きやすいだろう。ゴリラはどうか知らんが。眠くなってきた。おかしい。まだ動き始めて4時間しか経っていないのに。肉体の方が俺を強制的に俺を眠らせようとしているのか。何故だ。これは俺の肉体(からだ)だ。元はと言えばあいつらが入ってきたのに使えない俺の精神を無理やり封じ込めようとする。肉体は強い。けど肝心の肉体を操作するものが弱い。だから俺はいらないのか。クソッタレ。俺には強い信念や想いがないから抵抗することも必要も無い。もう疲れた。あとはカエルやゴリラの思う通りにさせてやろう。これ以上考える必要も無い。俺は生まれてくるべきでは無かったのだろう。目の前が真っ暗になった。


 いや~楽なもんだ。ちょーと魔が差して白鳥姉妹に魂喰らいの相手をさせてみようと思い、こうして戦わせて見るとあら簡単。俺の仕事は後方支援だけになってしまった。鈴女は勝手に突っ込んで行くし、麗虎は色々投げて魂喰らいの退路を塞いだり、ダメージを与えたり。違法駐車してあったバイクや俺の自転車を投げようとした時はさすがに止めたけど。まじでこいつらいるなら俺いらないんじゃなかなって思う程だ。今もこうして魂喰らいに止めをさそうと麗虎が跳躍して、持ってきた槍を真上から魂喰らいに投擲した。放たれた槍は稲妻が如く魂喰らいの脳天から股下を貫き、ズドンという大きな音と地響きと共に魂喰らいは消滅した。槍は地面にブッ刺さったまま、不動であり、倒れることは無さそうだ。ん?ブッ刺さったまま?

「終わったよ。御道君。」照れながら麗虎が小走りで近寄ってくる。まるで初めてホームランを打った小学生のような爽快感の混じった顔をしている。

「あ、うん。終わったのはわかったんだけどさ。あの地面に刺さった槍はどうするんだ?」恐る恐る聞いてみた。麗虎は振り返る。槍は槍先まで完璧に埋まっていて地面には大きな亀裂が走っている。青ざめた顔でこちらに向き直る。何も言わずに槍を引き抜こうとする。抜けない。鈴女が慌てて手伝う。抜けない。

「あの御道君・・・。」いつものか細い声で俺を呼ぶ。

「手伝って欲しいのか?」なるべく平静でいるつもりだが多分顔が引きつっている。

「予想以上に硬くて・・・。」

「だろうな。すごい勢いで槍を投げてたもんな。どれどれ。」槍を持ちカブを引き抜くように力を入れる。

「うおおおおおおお!」全身の力という力を収束し、ただ槍を抜くことに集中する。それでも槍は抜けません。

「駄目だ。全然抜けない。残念だが俺の力でも無理となるとどうしようもないな。」いつもの数倍は疲れたかもしれない。筋力を上げる魔法は幾らでもあるが基本的に自分を対象に出来ないのが難点だ。基本的に対象の筋力を2倍、3倍と上げていくもので倍率を上げれば上げるほど詠唱者の負担も大きい。ぶっちゃけ鈴女か麗虎にやらせてもいいが、明日の作戦に響いてしまうのもよくない。

「誰か呼んでくるべきかしら?」鈴女は能天気に聞く。

「今は草木も眠る丑三つ時だし、そもそも人目に付かないようにしてるのに人呼んじゃ本末転倒だろ。こんなの見つかったら絶対大騒ぎになるぞ・・・。」自分の浅はかな考えから生まれた致命的なミスに頭を抱える。

「あのーこの珍妙な光景は何?」法衣を身に纏った同い年くらいの少年が近寄ってきた。

「説明したいのは山々なんだけど取り敢えずこれ引き抜くの手伝ってもらえない?」

「いいよ。俺はこっち持つわ。」息を合わせて槍を引き抜こうとする。

「「せーの!いよっ!」」二人の力が合わさり何とか槍は抜けました。

「あんた達息ぴったりね。話しぶりからして知り合いみたいだけど。」

「いや、今日初めて会ったぞ。ところでお前誰?」俺はやって来た少年に聞く。

「俺は九道だ。普段極道とか呼ばれてるけどまあ好きに呼んでくれや。」九道は投げやりに自己紹介をする。

「何でだよ。お前には九道って名前があるんだったら九道でいいじゃねえか。ちなみに俺は御道。そこにいるのは白鳥姉妹だ。」俯く二人の少女を指差す。

「麗虎です。」「鈴女よ。」ほぼ同時に答えた。

「んで?何でこんなところに槍が刺さってたんだ?」九道が尋ねる。

「ここに槍が刺さっていたのはな。悪い奴と戦っていたんだ。もう倒したけど。」少しぼかして俺は答える。

「それって魂喰らいだろ?濁さなくても俺は知ってるし。何なら俺倒してるし。」胸を張って九道が答える。

「倒してるってことは・・・鈴女今日は何曜日だ?」

「今日は日曜日よ。ということは毎週日曜日に魂喰らいを倒してるのって九道ってこと?」

「おうよ!じゃあお前が週6で町守ってる噂の超人高校生か?」

「そうだけど・・・じゃあお前が日曜日の守護神様か。お前のおかげで俺は月曜日から戦おうという気になれるんだ。ありがとう!」俺は嬉しくて九道の肩を抱こうとするが175cmあるはずの俺よりあいつの方がでかい。

「おいおい。俺の家は寺だぜ?神様じゃなくてそこは仏様だろ?」

「突っ込みどころそこかよ。あと一つ聞いていいか?魂喰らい以外で変な奴って見たか?」

「見たには見たな。両腕潰したら逃げたけど倒したほうが良かったのか?」

「充分だ。明日討伐する予定なんだけどお前もどうだ?一人でも戦える奴が多いほうがいいんだけど。」

「いいぞ。どうせ暇だし、超人高校生君の戦いぶりを是非拝見したいものだ。槍ブッ刺したのもお前だろ?」

「それはあそこにいる麗虎がやった。物を投げることに特化した現代社会に生きる忍者だそうだ。実力は俺も痛いほど思い知った。」麗虎の方をさりげなく見たが、顔を赤らめ目を逸らしている。

「ちょっと!麗虎ちゃん頑張ってたでしょ!?私の妹を責めるなら容赦はしないわよ!」猛犬のようにこちらを睨みつけてうなっている。

「そもそもこの場呼んだのは俺だし、力加減に関しては何も言っていないから別に責めてないぞ。」

「そ、そうなのね。明日もあるし今日は切り上げましょ。明日も今日と同じ時間でいいのかしら?」

「そうだな。九道も明日の23時に公園に集合してくれ。」

「あいよ。じゃあ俺はこの辺で失礼するわ。最後に女の子には優しくしろよゴミ道。」

「な!俺が九道って呼んでるのにお前は俺ごを付けてご丁寧にゴミ道ってか!?おいこら!逃げんな!」九道は走って逃げたが、到底追いつけそうなスピードではない。

「ゴミ道か・・・案外お似合いね。じゃあねゴミ道。」白鳥姉妹も帰ってしまった。

「俺何かひどいことしたかね・・・?まあいいや帰って寝よ。今日は普段の数倍疲れた。」俺も愛用の自転車に跨り家に帰った。


 目を覚ました。何故か腕が元に戻っていて、今日は山奥の洞窟の中にいた。腹が重い。ゴリラの奴何か食ってきたな。多分人だろうけど、二人は食っているのだろう、かなりの満腹感と食後のぼんやりとした眠気のような感覚が俺を襲う。

 しかし数分後俺の予想を裏切ることが起こった。脳が急に回り始めた。いつもとは違う感覚が体中を支配する。感覚が冴え渡り、数秒先が見えるかのような気になってしまう。いや、実際に見えている。しずくが落ちると思った数秒後にしずくが落ちたりなど、数秒後の世界が俺には見えている。俺の腕を見た。腕が千切れて数秒後に生えてくる光景が目に浮かんだ。試しに千切ってみた。根元からごっそりと。するとどうだろうかすぐに腕が生えてきたではないか!気がつけは筋肉量も以前と比べて多くなり装甲のようになっている。これが先生が言っていた進化なのか!ここに一人と2匹は人間が観測していない領域まで到達した!圧倒的生命力!圧倒的筋力!そして未来視!もはや俺はこの世の生物の頂点に達したとも言えるだろう。今なら奴らの声も聞こえる。理解も出来る。人間を八つ裂きにしたい!愚かな人間どもに然るべき報いを与え復讐をしたいと!

「理解するってのはいいもんだよなあ・・・相手の気持ちを理解できるってのは自分の最大限を尽くしてそいつをサポート出来るって確信が持てるから理解できるんだ。」進化を終えてから俺たちの意識は一つになった。だからもう意識が入れ替わることはない。俺も復讐がしたい。まず手始めにあのガキ共からだ。夜ならいるだろうし。今日の夜ならあいつらも俺を探すだろうしな。じゃあ俺もおとなしく山篭りをしておきますか。あいつらをグチャグチャにして食べられるなんて想像するだけで笑いが止まらねえよ!アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

続く



なるべく早くに続きを上げたい。けど忙しい

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