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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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謎の生物現る!

4話です。何とか週1ほどで上げられているのが幸いです。伏線ばら撒くだけばら撒いて後で拾えるか不安ですが、がんばります・・・。

 御道は魂喰らいに向かって走って行く。その姿は嬉々としていて、普段の彼の落ち着き振りからは想像も出来ない速さであった。刀で打ち合いを始めるが鈴女では弾くので精一杯だった攻撃も、御道は押し返し、さらに斬撃を加えている。決して深くないように見える一撃も確実に間接部を狙い動きを鈍らせている。最初は叫びながら攻撃していた魂喰らいも徐々にうめき声へと変わっていく。数分後にはもう腕は上がらないほどに斬撃を浴びていた。

「何よあいつ・・・。」鈴女が呟く。今まで自分が倒そうとしていた相手は、自分では歯が立たなかった怪物をいとも簡単にあしらっている。蹴りを止められた時から感じていた妙な違和感の答えを得られたのに納得がいかない。助けてもらえたことには感謝している。ただあまりにも遠すぎる。ありがとうを言うには遠すぎる。今はただ終わるまで見ているしかない。そうこうしているうちに止めをさそうとしているようだ。

地面隆起(ランドエレベイト)!」御道が呪文を叫び右足を強く踏むと、魂喰らいのいる地面が勢いよく跳ね上がり、魂喰らいは5mほど跳躍する。急なことなので対応できなかったのか、受身も取れずに落下しようとしている。そして御道は納刀しもう一度刀を引き抜くと同時に、

抜刀魔力付与(エンチャントドロウ)(フリーズ)!」刀身が青く煌き、冷気で刀身が凍る。

「冷てえ!炎も大概だけどこっちはこっちで季節を選ぶな・・・。」5月に入る前の気温では手先が凍えてしまうのが、氷の弱点だ。基本的に魔力付与(エンチャント)は魔力そのものを付与させたほうが使用者の負担が少ないのだが、短期決戦を好む御道はこうして属性付与(アッドアトリビュート)を好んで使用する。

「さあ!最後の一撃受けてもらうぜ!」落下してくるのを今か今かと待ち受けていると、魂喰らいを一つの影が横切る。そして先ほどまでいたはずの魂喰らいがそこにいない。

「は?」

唐突に何かが起こった。慌てて影の方へ目をやると魂喰らいとはまた違う異形が魂喰らいを捕食している。パキャパキャと骨の音をさせながら断末魔と共に消えていく魂喰らいを目にしてこの場にいる人間は状況を飲み込めないでいる。背丈にして2m程全体的に肉が盛り上がっており表面がヌメヌメしているようで何体もの生物と一体化したような見た目をしている。そして二足歩行。そして数十秒にして魂喰らいを捕食してしまった、謎の生物は御道や鈴女を視覚に捕らえる。まずいな。俺一人でなら逃げながら戦えばいいが、今回はこいつらもいる。しかも俺でもあんなものは見たことはない。そもそも魂を喰らう側の奴が目の前で食べられてるんだぞ。ひとまず追い払うことは出来ないか。ゆっくりゆっくりと近づいてくる謎の生物にあれこれ思考を張り巡らせていると、後ろから声が聞こえる。

「御道君!姉さん!伏せて!」普段はおとなしい麗虎からは聞くことが出来ないであろうその叫び。驚いてていると鈴女に無理やり伏せられる。顔を上げると後ろから棒状の円筒が飛んできて、謎の生物に深々と突き刺さる。まさかあの距離から鉄パイプを投げてたのか・・・どんな肩してるんだ。続けざまにもう一本。さらにもう一本投げようとする頃にはもう謎の生物は逃げ出していた。一体何だったんだ?考えている内に黒橋と麗子がやって来た。

「二人とも大丈夫?それに、あの変な奴は何?」矢継ぎ早に黒橋が聞いてくる。

「最初にいた奴が魂喰らいって言って最近起きている猟奇殺人事件の犯人ってところだ。で、あいつらを夜な夜な駆除しているのが俺の仕事だったんだが、今日はこんな感じで珍妙なことが色々起きてしまった。後から来た奴に関しては知らん。俺も初めて見るからな。」御道は、声の調子を変えず淡々と話す。

「え?ちょっと待って?その口ぶりからすると毎日あの変な奴と戦ってるわけ?」鈴女が恐る恐る聞いてみる。

「週6ってところだな。日曜日はなぜか出てこないが。」

「そのー・・・いつから?」

「高校に入学してから。」

「・・・入学式の日も?」

「もちろんだとも。」

「あ・・・えっと・・・その・・・ごめんなさい。こんなことがあるのに毎日のようにしつこく追いかけ回して。」申し訳なさそうに俯く。

「気にするなって。それよりも、初めて見る割には逃げずに戦おうとするのな。大好きな妹と囮役君には恥ずかしいところ見せられないってところか?」御道はニヤニヤしながら聞き返す。

「う・・・うるさいわね!いいじゃない・・・普段あんまりいいところ無いんだし。」

「そんなこと無いぞ。俺を追い掛け回したあのしつこ・・・粘り強さや人に対する思いやりとかちょっと自分を安売りするところとか声がでかかったりとかすぐに顔が赤くなったりとか」

「所々愚痴が混じってたんだけど・・・。あんたって案外人のこと見てるのね。」

「そりゃ毎日のように追い掛け回されたらどんな奴かぐらい分析するわ。っともうこんな時間か。皆取り敢えず送って帰るから、このことは内緒にしておいてくれよ。」腕時計は二時を指そうとしていた。先に白鳥姉妹を家に送ったが、いかにも武家屋敷といったサイズの豪邸で、帰って来る前から数人のお手伝いさんが門で待っていた時は驚いて声も出なかった。相当甘やかされてんなあいつら・・・。

 黒橋を家に送ってやった。家に着くまではあまり喋らなかった黒橋が突然質問をしてきた。

「ねえ・・・。あんなのと毎日のように戦ってるって言っていたけど。怖くないの?」

「怖い怖くないじゃなくて、これが俺の仕事だし生きる意味なんだよ。俺がおびえて逃げれば誰かが喰われて死ぬ。魂喰らいの事実を知っていて何もしないのは俺が人殺しに加担しているのと同じだ。」自分に言い聞かせるようにそう話す。

「けど、辛くはないの?明日には死ぬかもしれないんだよ。」理解してもらうには言葉の重みが足りない。御道には死という言葉は脅しにならないのだ。

「死ってのが怖いって思うのは当然だと思う。けど、俺には生きることの方が怖い。俺の人生は半ば確立されているもんで、ただある選択肢は父さんの家を継ぐか母さんの方の家を継ぐかなんだ。他に道はない。あたっとしても、そこを目指そうとしても、今まで積み重ねてきた日々からすると全てが霞んで見える。家を継がなかったしても俺の名前が俺の生涯を縛るだろう。生まれたときからやることが決まってるってのは案外味気ないものだぜ。」笑顔を見せているものの心の奥では思い悩んでいるのだろう。

「自由っていいよな黒橋。俺はちょっぴりお前がうらやましいよ。じゃあな。」御道は自分の家の方角へ歩いていった。

「自由だなんて・・・僕だって何をしたらいいかわからないし、何もできない。自由なんてあってないようなもんだよ、御道君。」雲一つ無い夜の空に向かって黒橋は呟いた。

 数日後。世間ではGWに入った。道行く人々は笑顔に満ちており、子供達の楽しそうな声が聞こえる。阿原町レジャー施設が集中している区域があり、他県からも人が多く来る。そのためこの時期から徐々に町人口が増え始め夏休み中には2倍に膨れ上がり、そして年末に向けて徐々に人口が減っていくという面白い町だ。そして御道も・・・。

「ただいま、じいちゃん。」阿原町の隣町である網目(あみめ)町のおじいさんの家を訪ねていた。家と言っても事務室のように小型のビル一つがおじいさんの家となっている。2階入口のインターホンを鳴らすとおじいさんが現れた。

「おう!家継じゃないか!元気にしておったか?」拳を突き出して快く家継を迎え入れる。

「あったりまえだろ?じゃないとこんな辛気臭いところには来ねーよ!」楽しそうに家継も拳を突き帰しておじいさんの拳に宛がう。

「そーじゃそーじゃ!あのバカ(つぐ)の代わりにこうして会いにくれとるんじゃ!立ち話も何じゃ。ささ、中に入りなされ!その様子じゃと挨拶の他にも用事があるんじゃろ?」応接室に通される。

「今日のお土産は「華菓子屋」のイチゴ大福と水羊羹だぜ!」机に置かれた袋の中には3つずつの和菓子が入っていた。

「おお!さすがは、我が孫!わしの今食べたい物を直感的に把握し、しかも天木(あまたぎ)君の分まで買ってきておるとは本当に出来た孫じゃ!大好き!おーい天木君!お茶を入れてくれんか?わしの出来すぎた孫が和菓子を買ってきてくれたぞ!」奥の給湯室から「ただいまお持ちまします。」と淡々とした声が聞こえる。少しするとスーツを着たいかにも秘書らしき女性がお茶が乗った盆を持って出てきた。

「お待たせしました・・・って「華菓子屋」のイチゴ大福じゃないですか!もー家継君大好き!」すばやくお茶を並べ、テレビを付けて颯爽とイチゴ大福に噛り付く。容姿端麗なので黙っていればすごく美人

なのだが、甘いものに目が無いのと、実はお喋りなのが何とも言えない残念な感じを醸し出している。

テレビでは猟奇殺人事件の犯人捜索を警察が断念したことや、GWのオススメスポットの特集などが流れていた。

「で?話があるんじゃろ?例えば・・・魂喰らい(ソウルイーター) の話とかか?」おじいさんの声のトーンが低くなる。

「いや。先週の事だったんだけど、魂喰らいを喰らう奴が現れた。あの感じからすると優先順位的には魂喰らいを食べてから俺たちを襲うみたいだった。俺の友達が追い返したけどあれから消息が掴めてないだ。じいちゃん何か知ってる?」お茶を啜りながら家継は尋ねる。

「魂喰らいを喰らう生物?ふむ・・・心当たりが無いわけではないが。数は少ない。外見の特徴を教えておくれ。」おじいさんは訝しげに聞く。

「特徴としては、人型に近く、全長は2m程。全体的に肉が盛り上がっていて、カエルのように表面がヌメヌメしてそうだった。けど、俺の友達が投げた鉄パイプは刺さってたしそこまですごいものではなさそうだったな。」あくまで家継は真面目に話している。

「お前の友達はボディビルダーか何かか?それは置いとくとして。何故魂喰らいを食べるかについて考えなければまだまだ半人前じゃぞ。わしが答えを出すとしたら魂喰らいは普通の人間より多く魔力を保有しているからじゃろうな。」じいちゃんは魔法使いではなく魔術師だ。魔術師とは、各家系で定められた試練を乗り越え、儀式を行うことで魔術師として認められる。じいちゃんは分類に分けると、死霊魔術師に分類される。死霊魔術師と言っても魂喰らいなどを生み出しているのではなく、死体を状態の良いまま保存したり、生物標本を作ったりするのが主だそうだ。じいちゃん曰く「人間の死体は管理が面倒だから嫌い。」だそうだい。ちなみにバカ次こと俺の父さんの御道高次(みどうたかつぐ)伍要素魔術師(エレメンタリスト)に分類されている。俺も伍要素魔術師になるために育てられた。近いうちに俺も試練を受けるだろうと父さんが言っていた。

「けどさあ、魂喰らいを勝手に食ってくれるんだったら別に放っておいてもいいんじゃないの?俺としても処理する必要が無いわけだし。」家継はけだるげに話す。

「そういうわけにはいかん!魂を肉体に二つ以上取り込むことで身体能力の向上。および進化の可能性の上昇が起きる。一つの肉体で大きく進化し、人を超越するのは、倫理に反しておる。それは未だ人類に許されていない冒涜なのじゃ。それは魂喰らいでも然り。話を聞いておる限るじゃと混合獣のベースは人。きっと魔術師による作られたものだろうから、家継にはそいつを見つけたら優先的に排除して欲しい。」気がつけば半ば日が落ちかけていて住居に明かりが灯り始めた。真剣な話になっていたため、天木さんはすでにおらずイチゴ大福だけが無くなっている。

「わかった。じゃあ俺はこの辺で帰るよ。やっぱじいちゃんはすげえよ。父さんだと自分で考えろつって何にも教えてくれないからな。」呆れたように愚痴をこぼす。

「まあバカ次は、魔術バカだから魔術以外のことは基本教えられんしなあ。今のところ魔導書の魔法を解読したものしか使えんのじゃろ?魔術は一日では覚えられんからわしが教えることもできん。」

「いいんだよじいちゃん。俺は優しいじいちゃんに会うためにここに来るんだ。俺もじいちゃんみたいに優しい人間になるよ。じゃあな。」家継は扉を開け出て行いこうとする。すると天木さんが、

「家継君!今度来るときもお土産よろしくね!出来ればまた華菓子屋で!」笑顔でぶんぶん手を振りながら家継を見送る。

「わかりました。あとじいちゃん鉄パイプを投げた奴は女の子だよ。」そう言い残して家継は家に帰っていった。

「世の中わからんもんじゃのう。あ!天木さん!わしのいちご大福食べたじゃろ!わしも大好きなのに!」

「はい。頂きました。非常に美味でしたよ。」天木さんは秘書風に答えるが内容が伴ってない。

「まあよいわ。家継も中々苦労しとるみたいじゃし。高次も労いの言葉くらいかければ良いものを」

「まああなたが育てたお子様ですし、まともな人とは思えませんね。むしろ家継君が出来すぎなくらいです。」

「わしのような優しい人間か・・・わしはそう優しくは無いんじゃがなあ。」

「人というのは案外表面的な事しか知りませんからね。心の深くに入ることを拒んで自分に都合のいい事だけを信じ続けるおろかな生物です。」人を公平に審議しているのかそれとも・・・

「使い魔として人に下っておるのにその態度は見過ごせんなあ。まあよいこれからの家継の行動に期待じゃな。」不敵な笑みを浮かべながら、御道詠斎(みどうえいさい)は一切光すら吸い込む闇の部屋へと入っていくのだった。その奥にあるものは一体何か。続く

4話を読んで頂きありがとうございました!書いている側にも先の展開が読めません!というかこれ何羽くらいまで続くんでしょうね・・・。

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