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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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次の物語の始まり

外伝の様な物です。

 「4週目終了を確認っと。結局4週目も自滅だったか。毎回違った展開になるから面白いんだけど、結末が似たり寄ったりだとワクワクはしないねぇ。」

 井垣は黒で塗りつぶされたディスプレイから目を離すと大きくの背伸びをする。御道家継が倒れた瞬間に俯瞰していた風景は黒に染まってしまった。これが俗にいう終わりで、ここから1週間をかけて新たな世界の始まりを生み出すのだ。

「特に何でこの世界が生まれたかの経緯(いきさつ)ってのわからないんじゃ猶更だよ。音は聞こえ、空から俯瞰できても、建物の内部、書物に書かれている物が読めないんじゃなぁ。趣味でやっている以上は施設投資はしてもらえないし、第一『本』の存在を認めてない上に、御道家継の世界の中にあるだなんて誰も信じて無いからなぁ。まあ、芝緑(しばろく)まりもの存在を放置してるような人たちだからね。」

 一つ大きな欠伸をして立ち上がりコーヒーを入れなおそうとした時だった。

「大変です、井垣指令室長!緊急事態グレードS1です。」

「何!?グレードS1が発生する際には必ず予兆があるはずだろう?」

「それが・・・A1から突然変異したようで・・・山師殿も娘の初任務だからと任せておけと指示したらしく・・・。」

「とんだ奴だな、彼は。まあいい、今すぐ指令室に向かう。先に行っててくれ。」

「はい!」

 男は早々に駆け出して行った。

「S1か・・・最悪世界が一つ滅ぶな。」

 井垣はそう呟くと部屋を後にした。まだ目覚める気配のない御道家継を置いて。


 唸るような猛暑を肌に感じ、汗ばむ体が不快感を催す。どうやら現実世界(こちら)の方が格段に暑いらしい。ゆっくりと起き上がりデジタル時計を確認するときっかり1年半の時が過ぎている。

 ゆっくりとベッドから降り地に足を付けると、足に力が入らずそのまま派手な音を立て倒れこんでしまった。単に動かしていないブランクが一斉に襲ってきたのだろう。向こうの世界で体感した苦痛をまた味わうことになるのは少々辛い。しかも4度目となると痛いと思いつつ慣れている自分がいておかしくなってしまったのかと思ってしまう。

 向こうの世界で魔術を行使したが、僕の体から失われている物は無い。普通の世界と違うなら取られるものも無いということなのか。

 ただ黒橋護という人間の時間が確実に奪われてしまっているのも事実である。僕はもう満足に人として生活していない。

 よろよろと立ち上がろうとしていると、音を聞きつけたのか、勢いよく扉を開ける音が聞こえてきた。

 ドアを開けた人物は老年の紳士を思わせる風貌をした白髪の男性だった。眼鏡を掛けぴしりと皺の無いスーツが男性のまめな性格を示していた。

「ぼっちゃま!今回はお早いお目覚めでしたね。今肩を貸します。」

「ごめんね、マルドー。一声かければよかった。」

「いえいえ。ぼっちゃまを世話するのが私の役目。亡きご家族の意志を無下にする訳にはいきません。」

「いいよ。自分で歩くから。それよりもご飯作ってくれないかな?久しぶりにマルドーのご飯が食べたいや。」

 冷や汗をかきながらも笑顔を作る。今もこうして立ち上がっただけなのに体中が痺れて動けない。

「そうですか。わかりました。私腕によりをかけてぼっちゃまに料理を振舞いましょう!」

「頼むよ。」

 マルドーが出て行った後も僕は這うように進むことしか出来なかった。


 何とかリビングに辿り着きソファに座る。座りやすいようにと生地を柔らかくしたのだが、ここに居る時間が短いからほぼ無意味だと数年前に気が付いた。

 僕も今年で25なるというのに特に目標も無く、親の遺産とマルドーの支えで何とか生きていた。

 親の遺産と聞こえはいいが、要は魔術師としての血とマルドーくらいなもので。寝たきりの僕を飽きもせず8年世話をし続けている。ここまで世話を任せきりにして非常に申し訳なるのだが、マルドーはいつも、「御両親様に受けた恩に比べたら些細なものです。」

と笑顔で返してくれる。

「ぼっちゃま。お食事の用意ができました。」

「ありがとう。こっちのテーブルまで持って来てくれないかな?」

「わかりました。すぐに持っていきます。」

 ボーっと部屋を見渡す。ここにずっと住んでいるはずなのに、自分の家のはずなのに懐かしさも何も感じない。思い出になるようなことも何もなかったからかもしれない。ただ日々を過ごすために時間を潰し、寝るための場所だとあの頃は思っていた。

「ぼっちゃまの好物の茄子の辛味噌炒めです。冷めないうちにどうぞ。」

「ありがとう、いただきます。」

 一口食べるだけで伝わる辛さが僕の味覚を覚醒させる。いつ食べても変わらない美味しさに僕は自然と涙を流していた。

「どうかなさいましたか?」

「いや、何でもない。マルドーには感謝しか無いよ。」

「ぼっちゃまの幸せが私の幸せです。どうかお気になさらず。」


 一通り食事を終え、暫く体を動かす練習をしていた。怠けてた体を動かすのは多少苦労したし、体は疲労で限界だった。

「ぼっちゃま。今回は運動の頻度が多いようですが、今後は如何なさるのですか?」

「普天に行く。」

「何と!行く当てがあるのですか?」

「無いからこれから探すしかないよ。」

「普天に行く一般的な方法は2つ。魔術を行使して強制的に道を開くこと、もう一つは普天に通ずる者に直接連れて行ってもらうこと。どちらにせよ現実的な方法ではありません。」

「探すさ。普天に通ずる者を。何年かけてもね。」

「わかりました。長い旅になると思います。どうかお体に気を付けて・・・。」


 ある日の明朝。結局不自由なく動けるようになるまで僕は1か月を費やした。マルドーに見送られて僕は長い旅路に赴くこととなった。

「じゃあ行くね。もしかしたらもう帰ってこられないかもしれないけど。」

「私はぼっちゃまの帰りをずっと待っております。ぼっちゃまの悲願が達成できることを祈っております。」

「ありがとう。マルドーには世話をかけっぱなしだったね。」

「いいのです。ぼっちゃまの成長を見られたことが私の幸せです。さあ、こんなおいぼれの事は気にせず行ってください。ぼっちゃまには輝かしい未来がありますよ。」

「うん、行ってきます。いつか必ず帰ってくるから。」


 僕は杖に乗り空を飛んだ。こうやって空を飛ぶのはいつ以来だろう。当ても無く彷徨う旅が始まる不安もあるが、かつて初めて空を飛んだ時や、後ろに彼を乗せて飛んだ時を思い出し、僕の心はワクワクしていた。

 これは僕の人生最大の罪。大きな過ち。罪は償わなくてはならない。どんな手を使っても、どんなに無慈悲になろうとも、僕は彼を救わねばならない。

「オイオイオイ、中途半端なところで終わってるわ。」と、思われるのを承知でこの様な終わりにしました。

まほきたを数か月に渡り書いてきた結果、色々な方向への派生が思い付き、まほきたを私の書いた小説の序章として世界観を広げていくことにしようと思い、このような形になりました。

語られていない設定や、拾い切れていない伏線は後々上げる予定の作品で回収出来たらなーっと思っておりますが。

まほきたを書いた感想ですが、小説書くって難しい!

考えなしに文書いてると思わぬところで詰まったりインプット無かったら詰まるし、後から見返してどうしてこうなったんだろう・・・みたいなこと山ほどありましたよ。しかも頭の中で話を組み立ててるので、寝る前とかに思い付いたシーン起きたら忘れてるし、仕事中設定や構成が頭にちらついて集中できないなんてこともありました。

けど、書いてて楽しい。書いててグダグダでも一応前に進んでいるというか、何というか。(ボキャ貧)時にはこれでよいのかと悩む時期もありましたが、自分で話を考えてそれを形にしていくのがこんなに楽しいとは思いませんでした。

広げた風呂敷畳まないといけないのでまだまだがんばりますよ。

ひとまず、ここまでまほきたを読んで頂きありがとうございました!

これからの物語の展開にどうぞご期待ください。




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