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逆光源氏計画観察計画  作者: λμ
ショタの暗黒面
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13/22

ショタの暗黒面

 明らかに陽菜の様子がおかしい。おねぇちゃんとぼく作戦中ならまだしも、観測点に戻ったいま偽装工作を続ける意味はない。たしかにモール内では計画者同然の行動をしていたが、あれは演技だ。カンペキに計画者を演じていたのである。実際、外に出た瞬間から観察部員として動きはじめていたではないか。

 しかし、いまの陽菜は、まるで本物の計画者だ。


「おねぇちゃ――じゃない。ハナちゃん、大丈夫?」

「なに!? おねぇちゃんは怒ってるんだよ!?」

「ストップ! ストップだ、ハナちゃん。おねぇちゃんはさすがにおかしい。冷静になって。俺は、ハナちゃんの先輩。高塚優紀。分からなくなってない?」

「えっ、えぇ、えっと? ご、ごめんなさい……?」


 崩れ落ちるように椅子に腰を下ろした陽菜は、自らの頭をぺしぺし叩き、額を手で押さえた。俯いた顔は青ざめ、瞳が忙しく動いている。無意識下で計画者を演じていたのだろうか。


 その様子を見て、優紀もまた、自身の感覚が変容していることに気づいた。ほとんど意識することなく少年を演じていた。というより、なりきっていたといっていい。

 優紀は研究所で行われた即時変身装置の調整《フィッティング》を思い返した。

 ガラスの間仕切りがあった第四観察室。トースターのような機械につなげられた吸盤つきのコードと、画面でのたうつ二本の曲線――あのとき、研究員は、なにか大事なことを言っていた気がする。


『終わりましたよ。調整完了です』

『結局、これ、何してたんです?』

『だから調整ですよ――』

 脳波の。


 脳波、つまり思考を、制御されているかもしれない?

仮に推測通りだとしたら違和感も納得できる。そして、同じように他者の嗜好に影響を及ぼす装置が躰に組み込まれているのだとしたら。

 優紀は急ぎマニュアルを開き『おねぇさナイザー』と検索をかけた。いくつかのヒットがあり、辿っていく。


『……おねぇさナイザーは素体として組み込まれることになるため、変身時の発言には十分に注意すること。また、記憶改竄を行う場合は従来通りの命令文を使用し、重低音を主軸とした音波振動刺激による……』


 スマホを握る優紀の手が、小刻みに震え出した。

 危険すぎる。

 マニュアルに書かれた文言を要約すれば、優紀が普通に発話するだけでおねぇさんを誘惑する可能性がある、ということである。


 ――俺、いまとんでもなくヤバい状況にないか?


 悪用しようと思えば姉月市にいる限り自由自在だ。言うことを聞いてくれるおねぇさんは山ほどいる。物理的な使用制限がない以上、倫理観だけが頼りになるのだ。


「ハナちゃん、とりあえず、観察の方、お願い。俺はちょっと、上と話すわ」

「わ、わかりました」


 陽菜はやけに素直にゲゼワに張りついた。

 マニュアルを目にしたいま、その行動が自然なものなのか判別できない。陽菜は自らの意志で動いたのか。おねぇさナイザーが絡んだ命令として受け入れたのか。

 優紀は観察部にメッセージを打った。


〝緊急事態。研究開発部から受け取った新型即時変身装置に懸念材料あり。また、不具合により変身解除不能。至急連絡されたし〟


 滲みでる汗で手が滑る。優紀は軽い気持ちで新型の即時変身装置を受け取った。しかし尾行も含めて、なにか恐ろしいことに巻き込まれている気がする。考えてみれば折り返し連絡はいまだ一本もない。


 懸念は他にもある。

 もし優紀の発話すべてがおねぇさナイザーとなるのなら、モールから観測点までの間それを受け続けた陽菜の体調はどうなる。

 おねぇさナイザーは脳に影響を及ぼす装置である。陽菜の脳に深刻なダメージを与えている可能性もないとは言い切れない。

 妙なタイミングでできた後輩だが、かわいい後輩には違いないのだ。


「う、うわ、あれ、いいのかな」


 祈るような気持ちで返信を待っていた優紀は、陽菜の声で我に返った。

 ほとんど独白するかのような物言い。頬がみるみる紅潮していく。耳まで赤くなり、頭から湯気でもでそうだ。


「どうした? 渋沢瞳になんか動きがあったのか?」

「えと、その、ええと……ふ、ふわぁぁ」


 全く要領をえない。できればこれ以上おねぇさナイザーの影響下におきたくはないのだが、状況確認のためでは仕方がない。

 優紀は咳ばらいをして、できるだけ声のトーンを抑えた。


「ハナちゃん。どうしたの? なにが見えるの?」

 

 どうしても少年らしいボーイソプラノになってしまう。

 そして、どうやらおねぇさナイザーも効力を発揮しているらしい。

 陽菜は浅い興奮状態のまま、小さく口を開いた。


「渋沢瞳が、あ、晶くんを、ふわぁぁぁ……」

「ちょっと、変わってくれる?」


 あえて下手に出る。そうすれば自ずと、


「いいよ、こっちおいで?」


 言うことを聞く。

 少し楽しい――いや、恐怖も感じる。予想は的中し、会話を繰り返すほどに陽菜はおねぇさんに、そして優紀自身は少年に近づいているのかもしれない。

 優紀はためらいつつも膝の上に座り、ゲゼワを覗きこんだ。


 ――これは、どうなんだ?


 ゲゼワの向こうでは、渋沢瞳が晶くん(十一歳)にイタズラしていた。

 いまの優紀と陽菜がしている体勢と同じだ。渋沢瞳は晶くんを抱きかかえ、下半身に手を伸ばしている。頬は上気し、瞳は一時の感情に流され濁っている。

 

 しかし。

 斉藤晶の様子がおかしい。

 ごく普通の青少年なら、いまの優紀と同じように、そこはかとない恥ずかしさを感じているはず。だが斉藤晶にその兆候はない。


 怪しい。彼はまだ十一歳のはずだ。なぜ腰をくねらせ、大して抵抗もせず恍惚としているのか。普通なら優紀と同じように身もだえを――。


「ハナちゃん。ちょっと、やめてくれる?」

「えっ、あっ、ご、ごめんね? 怖かった?」

 ――ちげぇよ。


 観察機器に触れたことで、優紀の頭は冷静さを取り戻しつつあった。


「ハナちゃん。いや陽菜。落ち着け。流されるな。いま、不自然なことになってる」

「うぅん……? ユウくんはあったかいねぇ」


 躰にからみつく陽菜の腕が、力を強めた。その柔らかい感触に優紀は身震いした。


 ――あっ、脳がとろけ、バカヤロウ。


 一瞬流されそうになった思考を、ゲゼワの冷たさが引き留めた。


「ハナちゃん。一回、俺のこと離して、深呼吸しよう」

「はぁい。わかりました、っと」


 陽菜が優紀の頭に鼻をくっつけ、深呼吸をした。


「そうじゃなくて。落ち着いて?」

「すごく落ち着いてるよ?」

「陽菜、怒るぞ? ちょっと離れて深呼吸して」

「いやでーす」


 優紀は舌打ちしたくなるのをこらえ、おねぇさナイザーの行使を決めた。

 できる限り陽菜のおねぇさん成分を刺激しつつ離れてもらうためには、


「離れてくれないと、もう抱っこさせてあげない」


 恥ずかしさに耐える覚悟も必要である。

 まさか自分が少年擬態者のような言動を操るなんて、と思う。

 しかし、覚悟を決めた甲斐はあった。


「えぇ!? むぅ、ユウくんのいじわる」

 

 拗ねたように頬を膨らませた陽菜は、そっと離れた。

 背中から消えた他者の体温に、優紀は名残惜しさを感じてしまった。しかし、いまは非常事態である。その一点が感情を振り払う。


 優紀は再びゼゲワを覗きこんだ。

 その時だった。

 無機質な対物レンズの向こうで、斉藤晶が、こちらを一瞥した。


 ――なんだと。

 

 優紀は顔をしかめ、唇を舌先で湿らせた。

 斉藤晶と思しき少年が薄笑いを浮かべ、渋沢瞳の方に向き直る。いまや躰をまさぐりはじめている。その行為は、ほとんど恋人同士のやりとりだ。

 十一歳の少年が取る行動とは思えない。

 状況からすれば、少年擬態者とみる方が正解である。

 

 これが通常業務の範囲なら、観察を続け、状況を見守るべきである。

 しかし。

 優紀の脳裏に、一昨日前に先輩に言われた言葉が過った。

 別に、おねショタにもショタおねにも興味はない。興味はないが――。

 仕事だ。


 観察部からの指示はない。これまで判断を仰いできた先輩も今は病院である。決断は優紀の手にゆだねられている。待っていれば渋沢瞳が少年擬態者の魔の手にかかり、逆紫の上計画(ショタおね)の対象者となるかもしれない。


 優紀は肩越しに陽菜を見た。彼女は戦闘を行うことはできない。また優紀自身、新型使用下の戦闘は初めてのことだ。むやみに保護対象を増やすのは得策とは言えないだろう。ならば観測点に置いていくしかない。

 優紀は陽菜に叫んだ。


「ハナちゃんはここで待機! 観察部に発報! 俺は少年擬態者に対処する!」

「えっ!? あ、はい! 分かりました!」


 陽菜の返答を背中に受けて、優紀は観測点の部屋の窓から飛びだしていた。

 空中で、叫ぶ。


「強化位相《リィンフォースド・フェーズ》!」


 頭の中で、研究開発部部長・春風七海の楽し気な声が響いた。

 優紀は舌打ちして、地上七階二十四メートル下のアスファルトを睨みつけた。

 全身に風がぶつかる。だぼだぼのネルシャツがはためく。迫る地面。分厚いゴム底スニーカーの感触だけが、優紀に不思議な安心感を与えていた。


 着地時に膝を折り衝撃を吸収する必要もなかった。新開発のスニーカー風耐衝撃ブーツが全てを受け止め、ぶかぶかデニム風強化外骨格が躰を支える。

 次の瞬間にはアスファルトを削って走りだしていた。


 優紀は渋沢瞳のマンションを囲う塀の前で跳ねた。浮かび上がったところで淵に足かけ、さらに跳躍する。

 暴力的なまでの加速度を得た優紀の小さな躰は、弾丸のように宙を舞った。

 そして、三階ベランダの手すりにふわりと降り立つ。

 目指すは五階、渋沢瞳の部屋の窓だ。


 優紀は力を込めて手すりを蹴りつけた。衝撃で手すりが足形に歪む。上昇エネルギーの一部が手すりの破壊に使われ減算されている。高さが足りない。

 手を伸ばし四階ベランダの端に手をかけ、全力で躰を引っ張りあげる。加算された速度は、優紀の想像を凌駕していた。

 コントロールが難しい加速度の最中、一瞬目に入ったベランダの鉄柵に反応し、足を前に振って靴先を引っ掛けた。


 優紀のスニーカー様耐衝撃ブーツを支点として、上へと向かう力は横に転換される。次の瞬間には、制御不能な小さな躰は、窓ガラスを突き破っていた。

 硝子の欠片と共に部屋に転がり込んだ優紀は、強化外骨格の命令文を叫んだ。


「戦闘位相《バトルフェーズ》!」


 脳内に春風七海の『ばとるふぇーず』という妙に抑えたハスキーボイスが響く。

 優紀の躰が猛烈な勢いでフローリングの上を転がっていく。痛みは一切ない。全身を包む強化外骨格の圧迫感が、さらに強まる。

 

 優紀は回転を止めようと足をついた。しかし、足元には散乱する衣類や雑誌があった。躰が滑りだす――、

 が、靴底のゴムスパイクからタングステンピンが飛び出し、床に噛みついた。

 ぎゃりぎゃり、とフローリングを切り裂き、なお滑る。


 優紀の左肩がソファーにぶつかり、止まった。

 目の前には、渋沢瞳の服を引き裂く斉藤晶――少年擬態者の姿があった。

 優紀は、興奮状態を抑え込み、呟いた。


「そこまでだ。少年擬態者《クソガキ》」


 キマった、と思った。

 だがしかし。


「ようこそ。同志よ」


 少年擬態者はそう呟き、驚いた様子もなく振り向いた。


「お前も堕とされたようだな。少年《ショタ》の暗黒面《ダークサイド》に」

「少年の暗黒面? なんだ? そいつは。何を言っている?」

「それはこっちの台詞だ。混ざりにきたんじゃないのか?」


 優紀は困惑した。

 混ざりにきた(、、、、、、)?

 斉藤晶に擬態した少年擬態者の言葉の意味が、分からなかった。

 

「な、なに? どうなってるの? あっくん? どういうことなの!?」


 渋沢瞳が唇を震わせていた。優紀と少年擬態者を交互に見る目は泳ぎ、完全に怯え切っている。

 少年擬態者が苛立たしげに渋沢瞳を睨みつけた。


「黙っててくれ。いま俺は、同志と話してるんだ」


 少年擬態者は渋沢瞳に顔を向け、口端を不気味に引きあげ叫んだ。


「おねぇさナイザー!」

「えっ、あ、あぁぁ」


 渋沢瞳の瞳が縦横にぐるぐる動き回り焦点を失う。すぐに鼻血を流し昏倒した。


 ――どういうことだ?


 おねぇさナイザーはおねショ研の専売特許のはず。なぜ少年擬態者が使えるのか。

 もしや、少年擬態者と呼称されているのは――。

 優紀の思考は、立ちあがった少年擬態者によって遮られた。


「待たせたな、高塚優紀。いや、同志よ!」

「なにを訳のわからないことを言ってやがる。渋沢瞳を離せ! クソガキ!」

「ああ、離すさ。同志の言うことは聞かないとな」


 少年擬態者は渋沢瞳から距離をとり、優紀を見据えた。

 同志。少年の暗黒面。

 聞きたいことが、山ほどできていた。


「同志ってのは、どういうことだ? 何を言ってるんだ、てめぇは」

「そのまんまの意味さ。同志よ。楽しんでたんだろう? ショタを!」

「お前らと一緒にするんじゃねぇよ。俺は迷惑してるんだ」


 少年擬態者の眉間に皺が寄った。


「……迷惑? 貴様まさか、おねショ研の――!?」

「だったらどうした!」


 叫ぶ優紀を前に、少年擬態者は、静かに拳を握った。

 上体がやや前のめりになった。

 くるか。


「殺してやるさ!」


 言い切ると同時に、少年擬態者が駆けだした。爆発的な加速度を左の拳に乗せて、優紀に突きだす。

 戦闘位相に入った優紀の目は、その動きを緩慢なものとして捉えていた。しかし旧型の変身と異なり自身の躰も少年サイズである。間合いの有利は無い。それどころか体格はやや劣る。


 優紀は余裕をもって半歩分スウェイし、拳をさばいた。

 その刹那、左方から少年擬態者の蹴りが飛んできた。左腕を立てて受け止め、膝の力を抜く。


 ――全力で打ち込めば粉砕しちまうか?


 優紀は殺人事件の加害者となることを恐れて、力を加減して前蹴りを放った。

 蹴りが少年擬態者の腹に突き刺さる――、

 鈍い打音。

 

 少年擬態者は腕を交差し、蹴りを受け止めていた。

 衝撃で弾き飛ばされた少年擬態者はフローリングを剥しながら滑走し、壁に手をつき勢いを殺した。ダメージを受けたようには見えない。力を抜きすぎたらしい。

 すでに少年擬態者は握った拳を開き、振って、構えを取りなおしていた。

 優紀は構えを見て、短く息を吐き出した。 


 ――サウスポーか。


 旧来、少年擬態者と観察部員との戦闘能力の差は、間合いの差が大きなウェイトを占めていた。それは強化された身体能力に大きな差はなく、対して成人男性と少年擬態者では約一.五倍の体格差があったからだ。

 言い換えれば、間合いの差すらなくなってしまえば、両者の間に残る戦闘能力の差は、純粋に戦闘経験の多寡だけとなる。

 

 優紀は両肩を回し、右半身に構える少年擬態者に対し、敢えて逆半身で構えた。

 乾いた唇を舌先で湿らせ、腰を落とす。

 少年擬態者は距離を保ったまま、じりじりと、右に右にと、足を滑らせていく。渋沢瞳が横たわるソファーを挟み、向かい合う形となった。


 ――来る!


 優紀は右肩が下がった一瞬を見逃さなかった。

 あまり優秀な観察部員ではない。しかし、それゆえに実戦経験だけは他の追従を許さない。この二年の間に重ねてきた戦闘経験は、優紀の動きを反射レベルにまで高めていたのであった。


 少年擬態者の蹴りがソファーを切り裂き優紀に迫る。

 一回の実戦は十回の訓練に勝る。

 優紀は木フレームの破片と飛び交う綿の中に、はっきりと蹴り足を捉えていた。

 好機。


 迫る足を肘で流し、拳を突きだす。渾身の一撃は少年擬態者の胸骨を打ち抜いた。右手が骨の折れる生々しい感触を記憶する。

 少年擬態者の躰は床に触れることすらなく、壁まで吹き飛んでいた。

 非利き手、非利き足による攻撃ではあった。しかし、ぶかぶかネルシャツ&ジーンズ風強化外骨格の補助によって、その一撃は必殺の拳となっていた。


 なおも優紀は追撃をかける。

 一足にソファーを跳び越え、床に伏した少年擬態者の顔に、サッカーボールキックを追加した。少年擬態者の口鼻から鮮血が噴き出す。浮き上がった躰はそのまま壁にぶつかり、膝から崩れ落ちた。


 優紀はさらに一歩踏み込み、下から抉るように拳を振った。右の拳は少年擬態者の鼻面にぶつかり鼻骨を破砕、上あごの歯をへし折った。

 衝撃で跳ねあがった頭が壁にぶつかり、穴を穿つ。

 ぐらり、と少年擬態者の躰が前に傾いだ。

 床に伏す前に、優紀が少年擬態者の襟首をつかんでいた。


「まだ寝るなよ? クソガキ。こいつはチャンスなんだ。せっかくだから、お前らの話を聞かせてもらおうか?」


 床に少年擬態者の折れた歯がこぼれ落ち、乾いた音を立てた。


「はにほひへっへんは? (なにを言えってんだ?)」

「てめぇらのことだよ。斉藤晶は、どこにやった? なんでてめぇらが、おねぇさナイザーを使える? てめぇの柄、本部まで連れてって、全部教えてもらうからな」


 少年擬態者は鼻で嗤った。吹き出した血が、優紀の手首を赤く染める。


「はっへひほ(やってみろ)。へひるほんははは(できるもんならな)」


 少年擬態者がそう言うと同時に、インターフォンの呼び鈴が鳴った。

 優紀は弾かれたように首を振った。

 渋沢瞳の部屋に誰かが訪ねてきたらしい。

 いったい誰が。


 まさか――陽菜か?

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